第6話 鬼畜さにゾクゾクしますね

「コンソール、オープン」


教えてもらったコマンドを唱える。

目の前にパネルが浮かび上がる。

流石アーティファクト。

MRグラスも無しに、ここまでくっきりした疑似ディスプレイを出せるとは……


ディスプレイは、レトロなイメージだ。

半透明の黒い平面に。

緑色の光で文字が書かれている。

勿論、日本語だ。


--------------------------------------------

残マナ:-4,350pt

搭乗可能:1名

倉庫:無し

座席:レベル1

設備:レベル1

燃費:レベル1

速度:レベル1

自己防衛:レベル∞

最大航行可能距離:

 α:999

 β:999

 γ:999

--------------------------------------------


残マナがマイナスって大丈夫なのか?

航行可能距離、3桁なんて絶対死ぬので、十分すぎる。

あと、自己防衛レベル高すぎ。

登場可能は優先的に上げたい。


「倉庫って、荷物を積めるのか?」


『肯定です。採取物を入れられます』


それは便利だな。


「座席のレベルと、登場可能の関係は?」


『座席のレベルは、座席がふかふかになったり、マッサージ機能がついたりですね』


優先度低、と。


「むむ……これが日本語、ですか?見事に読めないですね。というか、文字種が多すぎませんか?」


ミアが困った様に言う。

ちなみに、言葉が通じているのは、翻訳の魔導具のおかげらしい。

勇者が昔使っていたものを、持ち出したとか。


「……翻訳眼鏡の方も持ち出すべきでしたか」


「まあ、おいおい覚えれば良いんじゃないかな」


『表意文字を覚えさせようとする鬼畜さにゾクゾクしますね』


……日本語覚えるのって、難易度高いか?


カスタマイズ、のメニューを押す。

色々なコマンドが、カテゴリ毎にまとまっている。

詳細画面では、消費マナが書かれている。

目ぼしいものは……


登場可能:1,000pt

倉庫:10,000pt

燃費:1,000pt


残りマナがマイナスの状態では、カスタマイズは実行できないようだ。

とにかくマナを稼がないと。


「リア、マナを楽に稼げそうな場所に連れて行ってくれ」


『了解です、マスター』


「異世界船……不思議な存在ですね」


ミアが興味深そうに言う。


ミアの世界では、ダンジョンは魔物の一種。

次元はずれていても、直接入り口が洞窟みたいにあったらしい。

ただ、伝承では異世界船という存在自体はあったとか。


「窮屈だけど、我慢してくれ」


「お構いなく」


ミアが微笑む。


「すぐにマナを稼いで、2人乗れるようにするよ」


「本当にお構いなく、です」


ミアが何故か強硬に遠慮する。

謙虚だなあ。


--


移動した先のダンジョンは、α14、β9、γ33。

これはそこそこ敵が強いのでは?


「リア、敵性生物の存在は?」


『むしろ敵性生物こそ資源だと知るべきです。彼らの体から、コアや魔石を回収すれば、負債なんて一気に消し飛びます』


魔物の体は、そのものが、多くのマナに変換できる。

が。

コアが、そのマナの9割以上を占めている為、コアだけ抜き取ることができれば、アイテムボックスの容量をかなり節約できる。

魔物の種別は同じでも、別個体であれば、コアの場所は異なる。

それゆえ、コアを抜き取るのはかなり手間がかかるのだけど。


「レベルアップして手に入れた新スキル。鑑定のお陰で、価値が高い物が分かりやすいな」


これならなんとかなりそうだ。


詳細な情報ウインドウが出る、という様な便利スキルではないけれど。

マナが多い、価値が高い、強い、そういった強弱が、何となく分かるスキルだ。

地面に落ちている瓦礫でも、マナが多いもの、少ないものが混在している。


「戦闘はミアに任せることになると思う。無理はしないでね」


いざとなったらすぐ逃げれるようにしなければ。


「はい、頑張りますね」


ミアが真剣な面持ちで言う。


自慢じゃないが、僕の戦闘能力は皆無だ。

武器も店売りだし。


「気配察知」


ミアが魔法を行使。

ミアから魔力が広がる。

おそらく索敵魔法だろう。


「行きます。地面が光っている場所は、罠があるので踏まないで下さい」


なんとなく、地面が光って見える。

また、幾つかの光が、壁を透けて見える。

PTへの、識別情報の共有?

便利な魔法だ。


「ありがとう、気をつけるよ」


ミアの魔法のお陰で、罠を踏まずに進める。

そして、敵が曲がり角の先に察知でき。


「光の槍よ!」


ミアが通路に飛び出して魔法を放つ。

3体のゴブリンが、撃ち抜かれ、倒れる。

既にこと切れている。


「凄いな……今のが聖女の魔法か……」


「最初の気配察知が聖魔法の最上位魔法、今撃ったのは、光の下級魔法ですね」


「聖女の魔法ですらないのかな」


「聖女の秘蹟は、使用魔力が大きいので、奥の手ですね」


なるほど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る