第2話 イケメン主人公とモブ

『半分は私にチャージして下さい』


船に言われるまま、3,000のマナをチャージする。


『先程のダンジョンであれば、往復で1,000マナ程度の消費です。当然、距離が遠くなればそれだけ多くのマナが必要です』


だよね。


『また、船体修復の為に、かなり機能縮小しましたので。船体のアップグレードもおいおいお願いします』


「それは、マナを消費して可能なのか?」


『はい』


普通の異世界船であれば、パーツを買って取り付けるとかであればともかく、アップグレードなどという事はできない。

流石アーティファクトといったところか。


『ところで、そろそろ名前で呼んで頂きたいのですが』


おっと。


「君の名前はなんて言うんだ?」


『私の名前は、既に役目を終えました。貴方が名前をつけて下さい』


俺の船、か。

なら。


「君は……ルシファーだ」


『嫌です』


断られた。

なんとなく好きなんだけどな、ルシファー。


『こう、ルシファーとか、威張っている癖に小物で、安っぽい感じです。同じ悪魔の名前から取るのであれば、ダンタリアンにして下さい。彼女は知的で美しく、強い』


そうか?

ルシファーは強そうなイメージだけど。


「分かった。君は、ダンタリアンだ」


『普段はリアと呼んで下さいね。長いですから』


指定が細かい。


--


「おい、羽修はね。何だか機嫌が良さそうだな」


親友の龍二が、話しかけてくる。


「まあね。大金が手に入って、生活の目処がたったから」


「マジか。それは良かった。お前とは一緒に卒業したかったからな」


龍二が嬉しそうにする。

……随分心配かけてたなあ……


国立、ダンジョン学園。

そのSクラス。

エリートクラスではあるんだけど……


Sクラスに入れた理由である、僕の職業、キャプテン。

超レア職業ではあったのだけど……あまりに遅いレベルアップ、低すぎる戦闘能力、そして、しょぼすぎるスキル。

目玉のパッシブスキルである時空演算も、異世界船任せの航海では役に立たず。

唯一のアクティブスキルであるアイテムボックスも、珍しいスキルではなく。

結果、奨学金も停止。

資金面、成績面、両方の理由で、退学の崖っぷちであった。


親友の龍二を除いては、嘲笑の対象になっている。


「それに、レベルも2上がったしね」


「まじか!?入学から1年かけて1レベルしか上がらなかったのに……何があったんだ?」


「んー。まあ、龍二だから良いか。実は、じいちゃんの蔵にあった、異世界船、あれが動いたんだ。実はあれ、アーティファクトでさ。で、移動した先のダンジョンでソロをしたら、経験値効率が良かったみたい」


「……俺達、レベルが2桁だからなあ。レベル差で経験値分配がかなり悪くなってるんだよな。かといって、お前がソロをするのは危ないしな……」


龍二が唸る。


「まあ、良ければ俺も連れて行ってくれよ。護衛くらいにはなると思うよ」


龍二は、成績最優秀者の一角だ。

職業は、ガーディアン。

引く手数多の職業だが……俺とPTを組んでくれている。

有り難い。


「新しいスキルも増えたしな。ステータスはほぼ上がらなかったけど……午後の演習が楽しみだ」


「ほう。期待してるぜ、相棒」


龍二が笑った。


--


午前中に軽く座学があり。

午後は演習だ。


武術訓練をする事もあれば、ダンジョンに入って経験値稼ぎをする事もある。

今日は後者だ。

……ちなみに、ダンジョン内で見つかったものは学校の資産とするルール。

ダンジョン資源をアイテムボックスに入れて勝手に売却してお小遣い稼ぎ……とかすると、法律違反で手が後ろに回る。


兎中うなか山里やまざとくんはまだ?」


鋭い目つきの女子。

栗原初音はつね

龍二が好きな女子の1人で、龍二目当てに僕のPTに入る事が多い。


職業はヴァルキリー。

やはり、超人気の職業だ。


「貴方の存在価値は、山里くんとPTを組める事だけです。ちゃんと存在価値をわきまえて下さい」


別の女子が来る。


模合もあい愛理あいり

職業は、賢者。


山里のお陰で、僕のPTは超豪華だ。

実際、PTの総合能力自体は、クラスでもトップ争いをしている。


最後に、主役が来る。

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