黒魔女。白騎士。全ての感情が重すぎる二人の関係性が物語の中心となり、緊張感が繰り返し漂います。そこに拾われた少女リルが癒やしとなり、緩急入り交じったストーリーが展開されてゆく……王国アルダブルの描写は異世界の西洋風文化が見事であり、出てくる物や登場人物の立場などのリアリティは豊かです。
投入されるのが、ハンバーガーを始めとしたファーストフード。身体を動かす騎士は味の濃いものを好むと言った説得力で、世界観に投入されたファーストフードの執拗なまでの描写は、読んだ後の食事の選択肢にハンバーガーその他が組み込まれること間違いなし。
魔女とは、苛烈な戦闘シーン通りの存在であると言えます。しかし、欲望のままに動くヴィランかと思われた彼女の意外な面が見え隠れして、いったい魔女とはなんなのだろう、と思わされるのです。善か、悪か。単純には切り分けられない魔女の在り方が、魅力的です。クローデット率いる騎士団の高潔さ、しがらみに縛られる姿もまた騎士らしいです。
作者の好きな物をバンズに挟んだ、パワーと油と肉汁が感じられる物語だと思います。是非一度「レイヴン・バーガー」を訪ねてみたいものです。