舞台からの退場 全力
仲仁へび(旧:離久)
第1話
たくさんの拍手と、歓声でホールが満ちた。
上から幕が下りてくる気配を感じる。
たった今、一生に一度の大舞台が終わった。
人気の役者としてさまざまな舞台に立ってきたけど、今回の舞台は一味違う。
国のお偉いさんが身にくる舞台だった。
だから私は、これまでで一番の演技を見せられるようにがんばった。
今まで手を抜いてきたというわけではないけど、それでも次の舞台のために温存しなければいけなかったから。
全力は出せなかった。
けれど、今は全力だ。
スポットライトの下で、心地の良い汗が流れていくのを感じる。
ああ、この舞台をもう一度やれたら。
なごりおしかった。
そう思うけれど、次がないからこその舞台だったから、全力でできたともいえる。
私はアンコールの声を聞きながら、舞台の幕がおりてくるのを待った。
観客の姿が見えなくなったところで、その場にへたりこむ。
他の人達が慌てて支えてくれた。
期待してくれているお客さんには悪いけれど、もう舞台には立てそうにない。
歓声の声を聞きながら、私は疲労感とともに意識を手放した。
この舞台は人生最後、引退前の舞台でもある。
だから、満足の行く舞台にできて私は幸せだ。
後の事は、他の優秀な役者達がやってくれるだろう。
舞台からの退場 全力 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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