カゼヒメ!
ミチシルベ
第0話
出来ることなら過去に戻ってやり直したい
そう言った願望を誰しも一度は持った事があるんじゃないか?
俺も勿論些細な失敗だったり、それこそ時間が経ってから他にやりようがあったと振り返って、そう願うことも多々あった。
そう言った願望は歳を重ねると、どうしても出て来るもんなのさ。
思えば、あの時から随分歳を重ねたもんだ。今では酒もタバコも嗜める年齢となった。あの夏の出来事以降、成長した俺は、今では地元である神守町を離れて華の大学生を謳歌している。
でも、もしもだ、もしも過去に戻れるとして、全てをやり直せるとしても、俺はその選択肢を放棄するだろう。
だって、全てをやり直すってことは、あの夏の出来事もやり直すと言う事だろう。それは無理だ、だってあれは——
あれは偶然が積み重なって、そう言うならば奇跡が起きて出来上がった結末だ。
例え過去に戻っても、俺はもう一度同じ結末に至る事は決して出来ないだろう。
俺はあの時にした事を微塵も後悔してないし、するつもりもない。多分それは彼女も同じだと思う。
俺はふと腕に巻いた、少しやつれた青色のミサンガを眺める。
あれ以降、この神守町はすっかり風が吹かない町になった。遠方に見える白く巨大な風力発電機も今では、ただの木偶の坊と化してしまっている。
俺は、いや俺達は町の在り方を大きく変えてしまったのかもしれない。……いや、多分そう感じるのは、あの時の真相を知る、俺と彼女の二人だけなんだ。
別に町の人々の暮らしも、ここから見える景色もさしてあの時から変わっちゃいない。
それでも、やはりこの町は変わったんだ。
神に守られる町と書いて、神守町と読むが。今ではそれは名ばかりのものとなってしまった。
えっ? 名ばかりにってことは、じゃあ昔は神様が居たのかって?
居たんだよ、神様は確かにこの町に存在したんだ。
それも遠い昔の話なんかじゃ無い、具体的には7年前のあの日。そう、俺達が神と対峙したあの時までは。
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