転覆計画

思い返せばロクな過去はない

失ってばっかの少年は

いつしか自身の無力さを自身で増大させ

「そんなことない」が口癖だった


そういう彼を誰もが嫌った

いや、ただ一人だけ好いていてくれていた

物好きな彼女だった

彼女は僕なんかよりも何倍も前向きだった


後ろ向きな僕の手を、彼女は何度も引っ張った

その先に明るい未来があるんだと

何を言われても彼女は夢に手を伸ばしていた

僕は終ぞその手を掴むことが出来なかったんだ


それから時間が経った

未だに誰にも好かれはしないけど

あの日が底辺とすれば、大分高い所まで来た

「行けない」と泣いていた所まで来た


少なからず僕は独りではなくなった

未だに友達はいないけど、笑い合う奴は出来た

見えなくなった誰かの背中を追いかけた旅路

夢中で必死に駆け抜けて見えたその背中


そんな日々の先

深夜の片田舎のアパートで悪事を企む

「僕」という国家を転覆させる計画

今日の僕が未来を生きるため


朝方白む空が「やってみろ」と笑ってやがる

「今に見とけ」と笑い返してやった

いつも「上手くいかねえ」と泣いていた

そんな僕が企てた壮大で恥知らずの計画


どうせ腐るなら、やるだけやって腐りたい

嫌われるなら、一瞬だけでも笑っていたい

僕が僕を肯定するためのクーデター

今、再び孤独前線から宣戦布告する

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る