俺氏、プレイしてたギャルゲーのモブに転生したようです〜じゃあ、自分救ってハーレム奪って楽しむかぁ〜

Tommy

第0話 ギャルゲーとは、夢の宝石箱じゃあ!……けど、俺は満足できない。

「うおおおおおおおっ! 届け、雲耀の速さまでェぇぇぇ!」


 俺ーー【鈴木】は喉の限りにそう叫びながら、右手のマウスを連打していた。

 脳内で流れるは、ど〇ちゃんの「連打~!」の声。


 目の前で移り変わってゆくのは、美しい女性(と髪の毛で目が隠れた坊主…あ、お坊さんじゃないよ)が描かれた、何枚ものCG。


 このシーンは嫌い、このシーンはウザいなどのコメントを、叫びの合間を縫って忘れずに付けていく。


 そして、その「作業」を何度も何度も繰り返した後ーー俺は、連打する手を止めた。


「ふぅ……! やっぱり、クリック432回ぴったしで到達だったな。本当、もっとイベントを短くしてほしいよっ・・・・・・と」


 そう言って、俺はディスプレイに顔を近付ける。

 目が悪くなるが、構うもんか。これ以上視力は下がらんよ。


 そこに映っているのは、一組の男女の絵。


 しかし、先程の女性や坊主とは別人だ。


 男の子の方は、決してイケメンではないが、迚も優しそうな顔をした中肉中背の少年で、笑顔を女の子に向けている。

 ……あと、髪で目は隠れていない。これ重要。


 女の子の方は、美しいというよりは「可愛い」、少年と同じ位の身長の少女で、笑いかけた男の子に対して、少し頬を膨らませている。

 そして、それが又一段と可愛らしい。

 天使レベルだな。これは。


 ーーそんな、この世の「幸福」を存分に詰め込んだ様な一枚。


「何度見ても、癒されるな。マジで二人が「デザラヴァ」の主人公だったらいいのに……!!」


 感動と無念の涙を大量に流し、目の前で拳を握りしめる。


「この悔しさを籠めた拳で、世界を制することさえ出来そうだッ!」


 そう言って右を向き、シュッシュッ、と空中にジャブ、三回に一回はストレート。

 気分はすっかり世界王者だ。

 そうやって、何回かストレートとジャブを繰り返し、息がすっかり上がった後。



「ーーはぁ……」


 俺は改めて男の子ーー【井口 新】を見て、大きなため息を吐いた。


 こうやって主人公のイチャイチャシーンを飛ばして新たちのCGを見るのも、何度目だろう。


 まぁ、少なくとも数千回はいっているけども。


(このゲームを買って、もう一か月か)


 このゲームーー「Desire and Lovers」、通称「デザラヴァ」は累計売上

 50万本を超える、超人気ギャルゲーである。


 多くの魅力的なキャラクター、綿密なストーリー、そして感動のラストにより、発売から5年が経った今でも多くの人に愛されている。


 かく言う俺も、その一人。

 高校時代の友人ヲタクに強く推され嫌々購入したのだが、実際にプレイしたところ。


 美しいキャラクター達が織りなすストーリーの数々に、俺は圧倒された。


 中でも最も心に残ったのは、サブキャラ「井口 新」と、

 隠れメインヒロインの女の子、【風間 栞】のストーリー。


 幼馴染の彼女達は付き合い、幸せな日々を送っていたが、から仲違いをするようになり、最終的に風間は主人公【神宮 理久】を好きになり、彼のハーレムメンバーになってしまう……。


 嗚呼、何たる悲劇だろうか。

 喧嘩して別れた想い人が、何人もの女を誑かしている男にとられるのだ。

 井口の味わった悲しみを思うと、迚も辛い。


 画面の中の彼は、相変わらず笑ったままだーーこれから降りかかる悲劇も知らないで。

 隣の想い人の顔が、涙にぬれるのも知らないで。


 ……そう思うと、なんだか悲しくなってきた。


「あぁーー。こいつになりたい……そんで、栞を幸せにしたい……」


 もう、一万回は言ったであろう言葉を言う。

 このCGを見るたびに何度も呟いてきた。


「まぁ、ぜっっったい無理だけど」


 しかし、俺にはどうもできない。


 所詮、これはゲームなのだから。


 この物語を変えることはできないのだからーー。



 ……そう思い、ゲームをセーブする。

 100個近くあったセーブスロットも、既に三周はコンティニューしている。


(これからも俺は、何週もプレイして、新たちの「幸せな一瞬」を見るんだろうな)


 そして、PCを閉じようとした、その時ーー。




「……うおっ! な、なんだ……?!」


 手をかけたディスプレイから、眩い閃光が溢れだす。

 それは、深緋とも、紅桔梗とも見える、美しく煌めく光。


「ま、眩しいっ! ーーまさか、太〇拳かぁ?!」




 そしてその光は益々巨大になり。




「ーー、~~~!!!」




 やがて、俺の身体を包み込んだーー。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢

始まりました!

「デザラヴァ」です!

ヒロインが出るのは、二話目かと思われます。


【Tommyからのお願いです】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、

【評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)】を是非宜しくお願い致します。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る