あぁいけません、お客様
バブみ道日丿宮組
お題:騙された喜劇 制限時間:15分
コール、コール、コール、コール。
誰か聞こえてたら、返事をして。
コール、コール、コール、コール。
スピーカーから流れ出る声。
その音に反応し、スピーカーに集まるのはゾンビ。
身体が腐食しても、機能まではなくならないらしい。
その証拠に、ゾンビは生きた人間を食してる。食欲の方がスピーカーから聞こえる声よりも優先されるのか、食事をしてるゾンビは多かった。
もっとも食したところで、腐敗して消滅したお腹から肉は転がり落ちる。栄養が必要なのかはわからないが、無意味だった。
コール、コール、コール、コール。
何度目になるかわからない悲痛な声。
ゾンビに知性があれば、すぐに放送室になだれ込むだろう。
声の主はそこまで気が回ってない。
誰かと会いたいーーその感情がすべてを優先させる。
舞台は変化して、食してもいないし、スピーカーに耳をすましてないゾンビに焦点が当てられる。
ベンチに座って、空を見上げ水分補給をしてる。
まるでその姿は暑さを和らげようとする人間のようで、リアルだった。
青年と、少女。
二人は親子なのか、あるいは兄妹なのか。
ナレーターが告げる説明にそれらしいことはない。
舞台はさらに変化をして、ゾンビによるハードなダンスシーンに移行した。
この場面に差し掛かると、もはやミュージカルのような舞台に変化した。
若干の飽きが視聴者に訪れる。
お金を払って入場したこともあり、席を立つということはないが、あくびを必死に我慢してる視聴者は多かった。
そもそもゾンビものを演劇でするというのはどうなのだろうか。
映画としても大きく叩かれる要因だ。
なぜゾンビものになったのか、なぜゾンビが出てくるのか。
理解できないものが多いし、説明もされない。
舞台で起きてるゾンビパニックも特に説明はない。
急に人が人をやめた。
そんなことをナレーターは最初にいってた。
なんとも愚直な作品だろう。
とはいえ、子どもには喜劇のようなもののようで、まっすぐ澄んだ瞳を舞台へと向けてた。
騙されたのは大人だけなのだ。
純粋に作品を楽しむという心がなくなった大人だけが、リアルを求める。
視聴後、大人は低評価を公開し、子どもは高評価をつける。
そのため、作品自体は平均的な点数を保ってる。
それもあって、騙される人が続出するのは、致し方のないことだろう。
あぁいけません、お客様 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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