第25話 強制イベント

 次の日、私は馬車に乗せられてしまった。隣国シルフィードにアリスと共に訪ねてほしいと監禁王子に頼まれたからだ。


 すいません、とっても行きたいのですけど、わたしには野菜を刈り取る使命がありまして……、そう言って逃げようとしのたけど、ちょうど良いところにギルドがある、そう言って、アリスの護衛という名目で重要クエスト(王城クエスト)を監禁王子に指名された。


 緊急依頼ということで私が受けている全ての雑用クエストは、ギルドから取り下げられ代理の者をよこす事になったそうだ。私と目が合った受付の女性は、満面の笑みを浮かべていた。


 わ、わたしには学園で勉強が……、というと、すでに私から学園長には話をつけてあると言われた。


 あの……、わたしには拒否権というものがないのでしょうか。


 よし、逃げようとしたら、監禁王子に右肩を掴まれ、左肩にはあら、アリス、こんばんわ、先ほどぶりだね、ってなぜ、あなたが、ここにいるの?


 私はどこかの宇宙人のように捕まって、馬車に乗せられ王城へと向かった。


 そして、お城の豪華な監禁部屋(客間)に明日が来るまで監禁された。扉の前には絶賛警備兵2名がいましたよ。


★★


 監禁王子から、二体目の四天王が討伐されたことと、聖女が誕生したことを報告するためにアリスの付き添いとしてイフリートより西にあるシルフィードへ向かうことになった。そして、護衛兼案内人としてクライブが、付きそう形になった。


 私は光のドレスを着てオジ槍弐式を装備して立っていればいいらしい。


 簡単な依頼で旅費と報酬がもらえる事になったけど、とっても、嫌な予感がするのはどうしてかしら、私は強制イベントを受けることになった。


「本当に申し訳ありません。緊急でしたので」


「うん、アリス、大丈夫だよ」


 地下室監禁イベントや墓場でデートイベントはなそうだし、それに今はクライブがいるから、それらのイベントは起きないだろうし、後は私が煩悩を抑え込めば大丈夫だからね。そうクライブを襲わなければいいだけだから。


 でもシルフィードに行くことになるとは思わなかった。このゲームはイフリートを舞台にしたゲームだからね。すごく気になってしまう。どんな街なんだろう、楽しみでもあった。


 いつか学園を卒業して旅にでることがあるだろうし、何事も経験だよね。ポディシブに行こう。


 馬車の窓から見える景色は素晴らしかった。穀倉地帯が広がって、風が吹き、穂が揺れている、前世では珍しい水車もあった。それを見て子供のようにはしゃいでしまいそうな自分がいた。


 そして、私の前の席に腰かけているクライブが、


「すまない、今回は僕の依頼のようなものだ」


 彼になぜか謝罪されてしまったけど、わたしの方が彼に謝らないといけない。


 馬車に乗る時、足を踏み外した私は、背中から地面に落ちそうになった。危ない所だった。そんな私をクライブは、あの厚い胸板で私を優しく受け止めてくれた。


 ああ、思い出しただけで、わたし、わたし、それに、とってもイイ匂いがして、我慢できなくなって……、さっと、私はクライブの正面に向き直って、目を合わせた。そして……、クライブにおもいっきり抱きついてしまった。ハグハグ、はぁはぁ、クライブ、クライブ、いい匂いって感じで、ニヒヒと、ニヤけた顔をして襲ってしまったから。


 まさか、君は狙ってわざとやったのか、人がいるのに、や、やめるんだぁ、は、はなせ! と言われた。こちらこそ、本当にごめんね。だって、どうしても、身体が言うことを聞かないんだよ、ニヒヒ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る