7.SMコンビネーション
「さあ! いくぞエリス!」
「はい」
あの日から俺とエリスはひたすらに連携を磨いた。
互いに変なスキルを持っている俺達。セオリー通りの戦闘ではダメだ。
そう考えた結果がこうだ。
「エリス! 俺を殴るんだ‼」
「ハイ‼ 『スパンキング・
ゴファ‼
まず戦闘開始と同時にエリスが杖で俺を殴る。
『
俺のスキルが発動する。
「はあああ‼ 『
俺が剣で魔物を斬る。
闇兎レベルの魔物ならこれで終了だ。
これがプランAだ。そしてプランBはこうだ。
「さあ! いくぞエリス!」
「はい」
「『
まずエリスが俺に手錠を掛ける。
「次です‼ 『
そしてエリスが俺の目隠しをする。
「この豚野郎‼ 『スパンキング・
バシンッ! バシンッ! バシンッ! ゴファ‼
さらにエリスが俺を杖で殴る。
『
俺のスキルが発動する。
「ありがとうございます! エリス様! 『M
魔物を倒す。これがプランB…………
――――――――――――――――
「ってとんだドM野郎じゃないか⁉」
客のいないカーネリアの宿食堂に俺の声が響き渡る。
俺とエリスは話し合うことの大事さを知り、反省会を日課にすることにした。
そこで今までのクエストを振り返ってみたのだが……
改めて振り返ってみると色々酷いな。傍から見れば戦闘中にSMプレイに興じている変態にしか見えない。あとエリスの人格変わってない?
「本当にそうですよね……でも今まで倒せなかった
そうなんだよな……
皮肉なことにエリスと一緒にクエストを受けるようになって
しかも苦戦することなくほぼ一撃で討伐してしまう。
なのに俺はボロボロになってクエストから帰還するため、事情を知らないプルネラさんには毎回心配される。
F級魔領域にしか潜っていないのがあまりに戦闘の激しさ物語る姿で街を歩くため、変態戦士と呼ばれていた俺も歴戦の戦士なんて呼ばれ始めている。違うベクトルで恥ずかしいので止めてほしい。
まあそれとは別に問題が一つあるんだが。
「後は物理の効かないスライムをどうするかだな……」
「そうですね……」
その場合は魔術で対処をするのがセオリーだ。魔術系スキルの冒険者需要が比較的高くなる要因の一つだ。
こういった魔物が存在するためソロで活動できる冒険者は少ない。ソロで高ランクの冒険者はいわば選ばれた人間と言ってもいい。
「魔道具を使ってみようか」
「魔道具ですか?」
魔道具は様々な魔術の力を込められた道具だ。魔術が使えない者でも簡易的ではあるが魔術っぽいことが出来る。
戦闘で便利な役割を果たしてくれるが、あくまで魔術っぽいことが出来るだけであり過信してはいけない。さらに値段はそこそこ高く、使い捨てであることが多い。
お金に余裕のある高ランクの冒険者は持っていて損はないが、お金に余裕がない低ランク冒険者にとっては手を出しにくい。
だが上に行くためには必要だ。魔術系スキルの冒険者を仲間にするという選択肢もあるが変態スキルの俺達にとっては現実的ではない。
「ああ、スライムを倒すための必要出費だ」
「うぅ……これでも私魔術師なのに……使えない魔術ばかりですみません……」
エリスが自分のせいだとばかりに落ち込んでしまう。
少し励ましてあげるか……
「大丈夫だ、エリスには俺を殴るという大切な役目があるだろ!」
「……なんだか本当の変態さんみたいですね」
俺の優しさを返してほしい。
――――――――――――――――
俺達は魔道具を補充してスライムを倒すため無限草原に来ていた。
「それで何の魔道具を買ってきたんですか?」
エリスが首を傾げて聞いてくる。
「これは【火炎瓶】だ」
「火炎瓶ですか?」
俺は小さな瓶を取り出しエリスに見せる。
いつも煙瓶しか買っていないから道具屋にすごく驚かれたな……そんなにお金無いように見られてたのか……
「この火炎瓶は割ると炎を発生させるんだ、まあそんなに強い炎ではないがスライム相手には大丈夫だろ」
「なるほど……この瓶を投げて割れればいいってことですね」
「そうだな、じゃあこれはエリスに投げてもらうか」
持っていた瓶をエリスに渡す。
俺は剣で燃えているスライムを斬らなければならないからな。
スライムに瓶を投げる役目はエリスに任せるか。
そんなやり取りをしていると目的のスライムを発見する。
「よし、スライムがいたぞ」
「はい」
俺は剣を構え、エリスは片手で杖を構え、もう片方の手に火炎瓶を持つ。
「いきます!」
「よし来い!」
「『スパンキング・
ゴファ‼
いつも通りエリスが杖で俺を殴る。
後は手筈通りエリスが火炎瓶をスライムにぶつけ、炎上したスライムを俺が斬る。
完璧だ。
「瓶投げます!」
「OK!」
エリスの合図を受けて俺は強化状態でスライムに向け走る。
その時俺の背中に衝撃が走る。
パリン‼
何かが割れた音がした。
なんだか嫌な予感がする……
ボゥ
嫌な予感は的中し俺の身体が炎に包まれる。
熱い、熱い、熱い~‼
「なぜ俺に瓶を投げるんだ~‼ エリスぅ~‼」
「えぇ~違ったんですか⁉」
エリスが驚きながら声を上げる。
確かに今までは俺に攻撃やら魔術やらを向けてきたが、これは違うだろ⁉
クソ‼ こうなったら自棄だ‼
俺は炎に包まれたままスライムに向かい剣を振るう。
「うおおおおお『
過剰な自傷技でスライムを倒した。
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