2.とある変態の日常
また朝がきた。
朝日を浴びて寝心地の悪いいつもの安宿で目が覚める。
何だか凄くダルい……働きたくない……でもなー……
そろそろ手持ちの金も底が尽きそうだからなー
無理矢理起き上がり階段を降りる。
「おーおはようさん」
安宿のマスターが声をかけてくる。
「……おはようございます」
「何だ、まだ目が覚めてないのか」
「ベットの寝心地が悪くて……」
「お前はもう少し人を思いやろうな、宿のマスターの前で言うなよ」
「事実なんで」
「おい」
寝癖を直しながらマスターと軽口を交わす。
「それに思いやりがないのはマスターじゃないですか」
「なにぃ~」
「思いやりがあれば奥さんに出て行かれたりしませんよ」
「グフッ」
「挙げ句の果てには娘さんまで出ていく始末」
「ゴフッツ」
いつもの調子でマスターをいじり倒しながら、ギルドに向かおうとする。
もはや日常になりつつある光景だ。
するとマスターが声をあげる。
「おい待てよ、ホラ!」
いじり倒されたマスターが何かの袋をこちらに投げる。
キャッチして中を見ると白パンが3つほど入っていた。
「朝食だぜ」
マスターがドヤ顔でサムズアップしている。
なぜか無性にイラッとしたのは内緒だが優しさは素直に受け取っておく。
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貰った白パンを食べながらギルドを目指す。
やがて到着するのは我が職場である【ギルドーアミナテロス本部】だ。
【アミナテロス】というのは【アルトルース王国】に属しているこの街の名前だ。通称【城壁の街】と呼ばれる。
なぜ城壁の街と呼ばれるのか、それはこの街を中心として東西南北にゲートが乱立しているからである。逆転送された魔物から守るため大きな壁が街の周りを囲んでいる、なので城壁の街。
周辺のゲートの多さからギルドの規模も王国の中で一番大きく、冒険者も多く出入りしている。
ギルドの中に入ると多くの冒険者で溢れかえっている。
その中で誰も冒険者が並んでいない受付へと向かう。
「すいませんクエストお願いします」
声をかけると顔見知りの受付嬢プルネラさんが顔を出す。
「ここは
「ここのクエストしか達成できないんですよ。生活のためお願いします‼」
「その言葉101回目ですよ」
数えてくれているの⁉
内心驚きながらもクエストの提示を待つ。
どうしてこんなことになっているのか……
俺のスキル『マゾイズム』はダメージを受ければ受けるほど自身を強化するというもの。魔物からのダメージでもスキルが発動できるならまだ戦うことができたかもしれない。だがこのスキルは人間、しかも異性からダメージでないと発動しないというドMな18禁スキルだ。
こんな使い勝手の悪いスキルのおかげで2年もランクアップ出来ず最低Fランクのまま、さらには変態の烙印を押される始末だ。
ああ消えたい……
「ではこちらF級魔領域-無限草原-
プルネラさんにクエスト内容の書かれた紙を提示される。
それは戦闘向けのスキルが使えればの話だが……
「ありがとうございます」
「では拠点ノースアミナに向かってください。分かっていると思いますが」
「了解です」
クエストに向かう俺にプルネラさんは声をかける。
「頑張ってください、永遠の
「綺麗な顔して冗談がキツイですよ。プルネラさん」
「褒めて頂きありがとうございます」
ギルドを出てノースアミナに向かう。
だがその前に俺にはやることがある。
「初めまして、突然ですがあなたのパンツを下さい!」
商店街の露店で買い物をしている女性に声を掛ける。
これが俗に言うセクハラだ。
「キャー!変態が出たわよー」
グフッ
悲鳴と共に腹パンをお見舞いされる。
あぁ…この街の女性は何故こんなに力が強いのだろうか。
「うぅ……クエストに行くか……」
殴られた腹をさすりながら拠点へ向かう。
ドMは辛いぜいつの日も……
『
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