第52話 ハデスの襲撃

 ポセイドンは、海底神殿を捨てた。メルティアの世話が十分に出来ないことと、天界から刺客が送られた場合、自分だけでは十分な対応が出来ないからであった。残念ながな、アンブロシアは、天界に対抗できるだけの、戦力と優秀な人材がいるのだ。


 「メルティア様がお帰りになられたぞ!ポセイドン様とご一緒だ。」


 メルティアの久々の帰還は、全ての将軍、魔術師長、賢者、大臣から、従者、メイドに至るまで大歓迎であったが、メルティアの姿を見て皆愕然とした。


 「なっ、何故このような事になったのですか・・・」


 メルティアとポセイドンは、が玉座の間に通された。玉座からアンゼルが駆け降りてきた。メルティアの傷だらけながら、安らかな寝顔を見て、ポセイドンの顔を見やって話出す。


 「我が自慢の娘は、如何でしたかな・・・」


 「わが伴侶ならば、十二分に満足な娘である。本人はハッキリと認めてはくれませんがな・・・」ポセイドンは、気まずそうである。


 「いつか必ず認めてもらえる様努力する・・・」


 「しかしながら、メルティアのこの状態は、如何いう事ですかな?」


 ポセイドンは、海底神殿が攻撃をうけ、その標的がメルティアである事を告げた。急遽危険を回避するためにアンブロシアに退避してきた状況を説明した。


 「兎に角、メルティアの治療と世話をお願いしたい。」





 天界は、まさかこの段階でメルティアがアンブロシアへ戻るとは思っていなかった。ましてポセイドンが、一緒に亡命するなど考えもしなかったのだ。


 ポセイドンは、すでにメルティアの保護を条件に地上に協力を約束している。これは、天界にとっては誤算なのであった。


 恐らくは、またメルティアを狙って刺客を放って来るだろうが、今回は暗殺者程度では侵入すら困難であり、正面からの力押ししか手段がなかった。


 「で、どうするのだ?君たち地上浄化推進派の君たちが、押し切ってくれるのだろ?ハデスにプロメテウス?」


 地上存続を訴えるヘルメスは、すまし顔で問いかける。


 「よろしい、私ハデスとヒュプノス・タナトスで落として参りましょうか。」






 ポセイドンは、神気に気付いた。「ふむ、神が降臨してきます。戦闘準備をお願いしたい。」


 シェスターとシーベル・アルフィンが戦闘準備に入った。


 奥からメルティアがファンタムに付き添われてアルセンシア城のテラスにでてくる。メルティアは、黒い天使達に覆い尽くされた上空を見回した。


 「ファンタム⁉︎空間障壁をお願いね。私はあの天使達の数を減らしておくわ・・・」


 メルティアの先制攻撃を皮切りに戦闘が開始された。


 『インテグラル・セイント・アロー!』


 高い上空から広範囲に無数の光の矢が降り注ぐ。あっと言う間に敵の半数以上を叩き落した。教科書通り、最初は遠距離広範囲攻撃がしかけられた。


 『ダイアモンド・ゼロ・フィールド!』


 シェスターの極大範囲魔法が炸裂、反対側ではアルフィンが範囲極大魔法を放つ。


 『スカーレット・フレア・ストーム!』。


 『インフィニティ・クリムゾン・プラズマ!』シーベルも生き残っている敵に対して固有魔法を放った。


 敵はほぼ全滅した。


 「何ということだ、たかが人間ごときに、ここ迄やられるとは・・・」ハデスは、愕然とした。


 このままでは終わらせん!タナトスは致死攻撃を展開する。  


 『テリブル・デスペラー!』


 自分よりランクの低い対象者全てに、致死魔法をかける技である。


 ファンタムとクロエが精神防御壁を展開して防ぐが、城内の従者の3分の一は餌食になってしまった。


 メルティアは、タナトスを狙って超高速光収束魔法を放つ。


 『オメガ・シャイン・ラスター!』


 タナトスの胸を打ち抜いた。アレスを戦闘不能にした狙撃魔法だ。


 ヒュプノスにもシェスターの絶対零度の氷結砲が撃ち込まれた。右肩を貫かれ右半身が凍りつく。


 「むむっ、撤退だぁ、戻って立て直す!」 


 ハデスはタナトスとヒュプノスを抱えて天界に戻っていった。完全に天界がアンブロシアを舐めてかかっていた為に招いた敗北であった。


 『クリティカル・エリア・リザレクション』


 メルティアは、致死魔法を受けた従者を全てを蘇生させ、力を使い果たし気絶するのだった。

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