第25話 新生アンブロシア

 朝からシェスターは頗る機嫌が悪い。


 それは、兎に角メルティアがアンゼルにベッタリなのだ。アンゼルもまんざらでも無いのだ。アンゼルは玉座にいてもメルティアを膝に乗せている様な有り様であるのだから、親子とはいえシェスターも気が気では無いのだ。


 「謁見ですけどこのままでいいのですか?」流石にメルティアが確認するが、「これでダメなら、教皇止めるからいいさぁ。」


 「お父様は、子供ですか!」などと怒られる始末である。


 当面は、メルティアが帰国した事をアピールして暫くは争い事は、無かったがこれからが心配なのである。

 

 「お父様?私自分で軍を作りたいんですけどいいですか?」


 「うむ、費用は国庫管理に申し付けてよいから好きにしなさい。」


 「後はカルセドを聖将軍として呼び戻しますし、アルフィンは聖導師長に任命しますがいいですか?」もう、ゆるゆるである。


 そんな一見覚束無い状況の中、メルティアのアンブロシア強化作戦の幕が開けたのだ。


 「お願いがあるのシェスター・・・」返信が無い。


 「あっ・・・て、また怒ってる?私またあんなになっちゃう?」少し怯えた感じで、シェスターの機嫌をうかがう。


 「今日は、僕を一番にしてくれる?」


 「わかった・・・今日はお父様の所に行かない。シェスと一緒にいる。」 


 「で、お願いってなに?」


 「シーベルって・・・今どこに居るのかしら・・・」


 シーベルは、やはりシェスターと同じく魔法強化人種で、ライバルであった人物であり、素行の良い人物では無かったが能力的には、シェスターに比する人物である。


 一方何故かメルティアの追撃命令を無視して消息を絶った人物でもある。


 「シェスぅこの子探してくれないかなぁ」


 シェスターには、原因に心当たりがあるのだ、実はメルティアの逃亡時に、密かにアンブロシアの国境外に運んだのは、シーベルだったのだ。


 そう、何を隠そうシーベルもメルティアの事が好きだった一人なのだ。シェスターが慌て出す。


 「やっベルは、辞めませんか?あいつ何するか分かんないし、言うこと聞かないかも知れないし・・・」


 「よかった、居場所知ってるんだね。できるだけ早く会いたいの。」

 

 シェスターは、がっくりと肩を落とした。


 「メル・・・浮気は、無しだよ⁉︎」メルティアは、眼を丸くしている。


 まさかシーベルがシェスターの恋のライバルとは、知らなかったのだ。





 さて、メルティアは行動開始である。


 アルメリア王国ロゼルのセージ達・幼魔法師に招集の手紙を書く。




 そして軍の中央病院を訪れる。


 目的は、ルメイル将軍と魔剣士ティーラ、そして剣王セルレインである。


 病棟で彼らを探す。いた!ティーラだ。メルティアを見て驚くが、既に察した様にはなしだす。


 「私は貴方を殺そうとした人間です。あなたの配下には、なれません。」


 メルティアは、優しく微笑むと超回復をかける。


 『パーフェクト・リプロダクション』切断された両脚が再生した。


 「貴方はお父様に忠誠を誓った剣士。お父様を守って‼︎」言い放つと次の部屋に移動した。


 次は、将軍ルメイラである。人工呼吸器を付けて苦しそうに、メルティアを見つめるが声は出せない。左腕も欠損している。


 「アンブロシアでなければ、あのまま死ねたのにね。ごめんね。もう一仕事して下さい将軍。」


 『インフィニティ・ヒール!』『パーフェクト・リプロダクション!』


 ルメイルは、完全回復・欠損部位の再生が成功して暴れ出す。


 「何故私を助ける‼︎」


 「お願い、お父様を守ってほしいの・・・お願い。」


 「・・・いわれなくても・・・」静かに下を向いて呟く。


 そして、最上階に彼はいた。


 「お久しぶりです、セルレイン様。」


 「おっお嬢・・・どうされたんですか?この様な負け犬の所へ・・・」


 「いいえ、貴方は負けてなんかいません。カルセドを戦闘不能にして捕まえたのは、貴方です。」


 「しかし、左腕・左脚を切断されたのでは、意味がない。あの時剣王は死んだのです。」


 「カルセドも生きています。貴方も迎えに来ました。」


 『パーフェクト・リプロダクション!』再生完了。


 最後にその場で『インフィニティ・エリア・ヒール』を打ち込んで病院全体を回復させると、一言言い放つと去っていった。


 「私待ってるから・・・」





翌日、玉座の間に3人は平伏していたが、少しおかしい。そう、アンゼルはまたメルティアを膝の上に抱き抱えているのだ。


 「いつの間に、仲良くなったんですか?こっ、これでは私達が戦った意味が分かりません。」訝しげにルメイルが言う。


 「要はお前達を失って、私のやってきた事が如何に愚かであるか分かったのだ。お前達は今日から自由だ。今まで大義であった‼︎」


 皆ポカーンとしている中、セルレインが笑い出す。


 「何か以前より楽しそうでは無いですか。私もご一緒させていただきますぞ。」


 「自由と言うなら、私もご一緒致します。姫様には、猊下を御守りするよう言われましたから。」ティーラは、淡々とした口調で話す。


 「成程、ふざけた話だが事実上メルティアさまがアンブロシアの実質的な、指導者となる訳ですか・・・まぁカルセドに借りを返すまでは、世話になる事にしよう。」


 メルティアは、アンゼルの膝から降りると宣言する。


 「私は、貴方達に命令はしません。皆で相談して良いと思われる事をして下さい。私とシェスターだけは、自由に正しいと思った事を迅速に履行します。動きの遅い人は置いて行きますから。」すごい面会となった。


 当のアンゼルだけは、とてもたのしそうだった。

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