届ロケ言葉の命綱〜言の葉の校舎〜

衣草薫創KunsouKoromogusa

題1章 始まりの鐘

第1話 秋が訪れる頃ー照れカクシー

- 照れカクシ -


嘘? 本当? 隠せる真実

空想? リアル? 物語はどっち?

言葉は現実を作り出すのだ


上手くできない 本音は言えない

素直な子になれなかった

嘘と真実で固められた この世で生きている


嘘で作られた真実は君の本心です

壊れかかった歯車を直すのも君自身だよ

ほんのちょこっと素直になってご覧

君の感情はダダ漏れだ


嘘? 本当? 隠せる真実

空想 リアル 物語はどっち?

言葉は現実を作り出すのだからね


日常茶判事 言葉は嘲るために

使ってしまうのは勿体ない

嘘と真実で固められた 君の心はそう甘くない


嘘で作られた思い出は君の悪夢です

割れていくガラスを直すのは仲間たちが支えてくれてるよ

ほんのちょこっと素直になってご覧

君の 君の 本音がダダ漏れだ


別れ話をしようか 寂しくないのは真実です

「後悔」なんかしてないよ

「後悔」なんかしてないさ

本当かどうかなんて誰も知らない


言葉は現実を言葉はフィクションを作り出すのだ


序話 後悔の叫びが轟いて


「心の声に素直でいれたら何かが変わっていたのだろうか。」


「反発して、体当りして、抗って...」


「変わらない過去を変えることができないのかと、」


「ずっと一人で悩んで、泣いて、悔やんで、怒って、」


「「泣いて、悔やんで、怒って、蔑んで、人のせいにして、自分は悪くないと言い張って、


後悔してるんだ!!!!」」


『独りじゃないよ。』


小さな声だった。二人の耳に響き渡る。可愛くて、なんだか切ない一人の声。


「「誰?」」


これは双子の菅野すがの秋斗あきと菅野すがの春香はるかが繰り広げる言葉を探す謎解きゲーム。


届ロケ言葉の命綱

〜言の葉の校舎〜


母が入院したのは3ヶ月も前の事。目を覚まさなくなったのはつい最近の事。枯れ葉が生い茂る木々が風に吹かれ揺れるのを窓から見えるこの病室で母が眠っている。まるで眠れる森の美女だなんて言える程の余裕などない。家庭状況はお世辞にも良いとは言えない。お金がかかる。親子の関係は母が入院する前から割れている。それでも病室に訪れるのはこの私、高校1年菅野春香だけ。母とは喧嘩して以来一度も言葉を交わしていない。顔を合わせに行くも、母には私が見えない。片方だけ。片方だけが仲直りをしたい。母はきっと私とは口も聞きたくないのだろう。だから目を覚まさない。


「お母さん、私は素直な人じゃないんだよ。お母さんが小さい頃に言ってくれた『素直な子』じゃないんだよ。」


あの時、嘘はついていなかったと思う。でも、本当に言いたかった事ではなかった。このまま目が覚まさずにあの世に行ってしまったとしたらとネガティブな思考が募って血の気が引く。


「後悔してるのよ。」

「後悔してるんだ。」


ハモった声にびっくりしてこの病室の扉の前に立つ一人の男の子を見るとおもわず呼吸を一瞬止めた。双子の兄、菅野秋斗。そして驚くべきことがもう1つあった。


『独りじゃないよ。』


優しく静かな声が耳に響く。すると目の前に現る1つの影。その声の正体を見た秋斗はびっくりしすぎたのか腰を抜かし、春香はまじまじとその姿を観察していた。


「そんなに見られたら照れちゃうなぁ〜。えへへ。」


照れくさそうに体をよじるのはなんと小さな体に小さな羽を持った妖精だった。


「まぁ、可愛い。お名前は?」


興奮気味に言う春香とは逆に秋斗は現実を受け止められないといった様子。


「僕は妖精、カンパ・パープニュラ。カンパでいいよぉ〜。にひひ。」

「はじめまして、可愛い。」

「あ、う、あ。いや、なんで?」


妖精のカンパは秋斗の言うことに眉を寄せムスッとした顔で答える。


「なんで、て二人を助けに来たんだよ?そのくらい察してよ。そんな未練たらたらでお母さんが彼岸に行っちゃっていいわけないだろ?」

「彼岸て?」


二人は顔を見合わせ問う。


「彼岸てぇ〜ゆうのはな。死者の世界ていう意味だ!いいか?私のいう事聞けば母の命は助かる。そして、仲直りもできる。」


カンパはぱっと一通の便箋を出す。それを春香が手に収める。


「その文は君たちが母に言いたい本音が書かれている。」

「でもこれ、空欄ばっかじゃん。」

「その通り、その空欄をこれから連れていく世界で探して見つけてもらう。もちろん、ただでその言葉をあげるわけにはいかない。何故なら、この人を助けるには報酬が足りなすぎるだろ?だからクイズを見つけては答えてもらう。必要な言葉はその答えだ。分かったか?」

「うん!」


元気よく答えたのは春香。


「それじゃあ、言葉探しにレッツゴ…」

「いやいやいや待てって。俺はそんな事頼んでない。迷惑だ。」


嫌がる素振りを見せる秋斗を笑うようにニマニマするカンパ。


「そんなこと言ってぇ〜。いっつも春香ちゃんのいない時間を探っては病室訪れてたっていうのにぃ〜。」

「は!?」


その話を聞いてびっくりする春香を差し置いてカンパは声をあげた。


「それでは、レッツラゴー!!!!」

「おー!」

「おいこら待て!話終わってない!」

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