第四話 模擬戦(3)カルム 対 殺人鬼
忍者と爪の少年の戦いが終わり、三戦目である僕の出番が来た。
僕の相手は人も殺したことのあるらしい男。
背中を見てみると散弾銃が一丁かけられている。
これで戦うのだろう。
散弾銃とはもちろん戦ったことがないがどうすればいいのだろうか。
多分何発も連続で撃てないはずだし何発か避けてから速攻という感じでいいだろう。
俺の武器は当然兄からもらった剣。初出勤だ。
「準備はいいな?よーい、初め!」
目の前の男は銃を構えて余裕そうな表情で待っている。
ただ、銃相手に正面から突っ込むほど僕は馬鹿じゃない。
回り込むように走りながら徐々に距離を詰めていく。
横目に男のトリガーにかけられた指を注視する。
百度ぐらい走った時、トリガーにかけられた指がピクリと動く。
それを見て俺は動作に出ないように走る角度を変える準備をする。
指がピクリと動いた直後にトリガーが押される。
それに合わせて九十度ぐらい方向を変えて剣を顔の前に構えて斜め気味に突撃する。
男の放った弾丸は広範囲に広がり、完全には避けきれずに少し当たってしまう。
くそ、痛い。剣を持つ右腕から血が出てる。
でも、こんなので負けてはならない。
降参なんて絶対にしない。
腕が痛むまま近づく。銃は撃って来なそうだ。少し時間が必要なのだろう。その隙に懐まで潜り込む。
そこから、銃を剣で薙ぎ払って、え?
確かに剣で銃を飛ばしたはず。この男がそれを掴んだ素振りも無かった。なのに、今僕の頭の上にさっきと同じ散弾銃がぴたりと突き立てられている。
「終わりだ。」
この男はそう言って少し頭からずらし、地面に向かってそれを放つ。
「終了!」
そうウィリアムが告げる。
何が起きたんだ。スペアの銃……は持ってなかったはず。
そうだ!実はつかんでいたんじゃないんか?
そう思って確かめるために地面をみるとそこには確かに僕が吹き飛ばした銃が転がっていた。
何が起きたんだ……。
「ふっ、理解できてなそうな顔をしているな。おい、そこの女。見てたろ。お前が説明してやれ。」
そう男が乱暴に一戦目の水魔法使いを指名する。
女の人は「え?私?」と言って、説明し出す。
「えっとね、創造魔法って知ってる?」
創造魔法。聞いたことはある。確か、ゼロから特定の物を作り出すというものだったはずだ。ただ、他の水魔法みたいな属性魔法と違って扱うためには才能が必要になる。
使えるか使えないか生まれた時に決まっており、どんなものが作れるかもそこで決まる。
この国でもいないことは全然ないが、もしなれたら生産職としてかなり優遇されるものだ。
戦闘に使った人なんていただろうか……。
「まぁ、聞いたことだけありますね。」
「そう?よかった。で、私もびっくりしたんだけど、この……えっと、名前ってなんていうの?」
「ルーファスだ。」
「うん、あ、じゃあ君の名前も聞こっかな。」
「カルムって言います。ミラ・カルムです。」
「で、このルーファスがその創造魔法を使えるみたいでカルムくんが銃を飛ばしたあと、すぐに同じ銃を作ってって感じね。あってるわよね?」
「あぁ、完璧だ。」
「なるほど、創造魔法で銃を作った……。ということは銃を飛ばしたのは無意味だったってことですか?」
「そうなるな。」
「じゃあ、僕勝てないじゃないですか。」
「そうだな。」
「どうしたら勝てたと思いますか?」
「始まった瞬間に剣を投げて弾を避けるとかか?……あぁ、それくらいだな。今ざっとシュミレーションしてみたがそれくらいしかないと思うぞ。」
なんだと?剣を投げるなんて考えてなかった。で、勝てる方法がそれくらいしかないなんて……。
僕は少し浮かれていたのかもしれない。
こんな形ではあるが軍に入ってルーファスとの戦いも接戦のようで。
僕が軍に入っても僕は変わっていなかった。立場が少し変わったぐらいだ。
「四戦目だが、昼休憩の後やるからな。とりあえず十五分昼飯だ。弁当は一階の受付でもらえるはずだからそこでもらってくれ。以上。」
少し、考え事をしていると絶妙なタイミングでウィリアムがそう指示を出す。
昼休憩か。うん、切り替えよう。
「さ!いきましょうか。」
僕は三戦目までの六人に声をかけて移動することを促した。
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