第3話 旅の道連れ
ソロンたちはスライムが群生する湿地帯にて、スライムを懐柔すべく色々と試行錯誤していた。
なにしろ勇者がスライムと裸一貫タイマンで勝負して、死なない程度に負かさなければならないからだ。
「……ここまでで、やっと一匹か」
武器を持たないとはいえ、勇者の拳は軽く魔物の骨を砕く。相手が軟体ならば力を少しでも加えすぎると破裂してしまう。それを見た他のスライムが逃げたりするものだから追いかけるのに体力を無駄に消費してしまう。
「おめでとうございます、ソロン」
「で、このあとどうするんだ?」
「次に、そのスライムにあなた自身が『人間に近い因子を持ってると思われる他の魔物を取り込ませる』のです」
ソロンは一瞬考えた後、顔をしかめた。
「つまり、
セラはにっこり笑う。
「待て待て、人間に近い魔物ってのはそれだけで結構強いんだぞ? こいつを守りつつ魔物を倒すのは結構大変なんだが……」
「はい、頑張ってくださいね。一緒に戦えばスライムも多少強くなりますから、共闘してもいいですしおっしゃったように守りながら倒してもいいですから」
ソロンは今更ながら自身の選んだ方法を変えたくなってきた。しかしこれ以外に残された方法はまた一つ面倒なものだった。久方ぶりに体も動かせて、ソロンは割とこの方法に満足していたのも事実だった。
「仕方ないな。ここは一つどんどんと喰わせていくか。それじゃあセラ、まずはどの魔物から喰わせていけばいい?」
「そうですね、見た目から言うとハーピー、ケンタウルス。知能も考えるとミノタウロス、ナーガ。身体的なものだとワーウルフやリザードマンなどがオススメですね」
「……意外と結構種類あるなぁ」
「そもそも魔王が人間を参考に魔物を強化したという経緯があります。人間の身体的特徴は、魔法を唱えたり戦ったりするのに向いていたと感じたんでしょう」
「その中で、さらにスライムを連れて何とかできそうなのは……」
ソロンはさらにセラと話を詰めて、まずは意思疎通ができるような魔物を先に吸収する方向で決まった。
「じゃあ次に向かうのは動物系だな」
スライムは嬉しそうに体を揺らして答えた。
「あっと、そうですね。これから一緒なら名前を付けないと……」
「名前か…… じゃあ『スラまる』で」
「そんな単純な…… って」
セラがあまりの短絡思考に抗議しようとしたが、当のスライムは名前を付けられた瞬間、見て分かるほどの喜びをソロンに示した。
「お、気に入ってくれたみたいだぞ」
「はあ…… まあいいです。それじゃあ行きましょう」
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