第47話 ライズ・ユア・ハーツ・ハンマー!!
タイトルを少し弄りました
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飛びかかってくるロボロシェードにわたしたちは散開する。
通常の狼であったならば、無理無茶無謀承知の上で受け止めるという手もあったかもしれないけれど。
でも、ロボロシェードは黒蝕を纏っている。まともに受けるわけにはいかなかった。
「まずはッ!」
とはいえ、ただ躱すだけのつもりはハナからないッ!
わたしは飛び退きながら狙いを付けて弾鉄を引いた。
狙いはドンピシャ!
だけど、ロボロシェードはそれを躱すことなく、額にある第三の目で受け止めた。
「弱点じゃないのッ!?」
「純粋に硬いんだッ、傷つけるだけの霊力を込める必要があるッ!」
ビリーの言葉に納得はする。
納得はするけど、納得いかない。
「あーもーッ! 面倒ねッ!!」
毒づきながらも、わたしはマリーシルバーを通して霊力を自分の中の操る。
「面倒なのは同感だッ!」
ビリーもわたしのぼやきに同意しながら、抜剣の勢いのまま斬撃を放つ。
霊力を乗った斬撃は虚空を駆けて、ロボロシェードへと向かう。
それを――ロボロシェードは避けた。
「ある程度、霊力の乗った攻撃なら通用するのかな?」
「避けるということは、当たりたくないってことだろうしね」
鞘へ納剣しつつそう口にするビリーに、わたしも肯定する。
「それならぁッ!」
そして、わたしたちのやりとりを聞いていたナージャンさんがムチを構えた。
「
そこから繰り出されるのは、シンプルな高速連撃。
霊力の乗ったムチは白く輝きながら、ロボロシェードを包囲するような動きで追い立てる。
回避が難しい――と、そう判断したのかロボロシェードは恐らくはもっともムチの密度が薄い場所へと、横っ飛びするように身体をねじ込んで、包囲を突破。
「嘘ぉッ!?」
ロボロシェードは即座に体勢を立て直すと、ムチを引き戻すナージャンさんへ向かって飛びかかり――
「なーんてね☆」
テヘペロと舌を出したナージャンさんに応えるように、ナーディアさんの声が響いた。
「
彼女の水晶が大地に触れると、そこから鋭く尖った岩が無数に隆起し、波のようにロボロシェードに襲いかかる。
同時に、ナージャンさんはそこから大きく飛び退いた。
「……ッ!」
それでもさすが狼というべきか。
横合いから不意打ち気味に襲い来る岩の波に反応し、とっさに真上に飛び上がる。
だけど、鳥でもない限り空中での自由は多くない。
岩の波を足場に、ビリーはロボロシェードを追いかけていく。
手元の剣からは星霊陣が展開している。
そして、それを輝かせながら、ビリーは術式の名前を口にした。
「
直後、ビリーの双眸が霊力の光を灯し、その光がたなびき尾を引く。
恐らくはわたしのゾーン・デトネイションと似たような強化技……いや強化奥義を使ってるんだろう。
「
今まで見てきたビリーの技の中でも、トップクラスに霊力を使った一撃。
抜く速度も尋常でなければ、放たれる斬撃の力強さも尋常じゃない。
ビリーの繰り出したその一撃は、まるで吸い込まれるようにロボロシェードの腹部を撫でつけた。
捕らえた――と思ったけど、極限状態とも言えるその状況でも、ロボロシェードは身をよじった。
さすがはロボロシェード。太刀筋をずらされた一撃では、両断とは行かない。
それでも効いた。間違いなく確実なダメージを取ったッ!
身体の側面に走る斬撃の痕から血の代わりに黒い飛沫が吹き出した。
狂気に満ちた狼の顔が苦痛に歪む。
「ナージャンッ!」
「まっかせてッ!」
弾け飛ぶ黒い飛沫の中、ビリーの腰元にナージャンさんのムチが巻き付く。
「乱暴になるわよぉ!」
「承知の上だよッ!!」
そして、飛沫を浴びる前にナージャンさんが無理矢理ビリーを引き寄せたッ!
ビリーの瞳を包む光は消えた代わりに、彼は目をシバシバさせている。目にチカラを集める代償で、痛みや乾きが強く発生しているのかもしれない。
一方のロボロシェードも、空中で体勢を整える。
でも――
「シャリアッ、任せたッ!」
「シャリアちゃんッ!」
「シャリアさんッ!」
わたしだってただ傍観していたワケじゃないッ!
「
足下に展開した星霊陣が光り輝き、わたしの集中力を極限を超えた先へと引き上げていく。
視覚から色彩が欠落していく。
聴覚から不要な音が消えていく。
必要な情報だけを受け止めて、引き延ばされたように緩慢な時間の中で、わたしは落下するロボロシェードに狙いを付ける。
この状態で霊力を扱うのは難しい。
なぜなら、マリーシルバーの霊力操作機能の大半が、ゾーン・デトネイションの制御に当たられているからだ。
だけど、そのゾーン・デトネイションのおかげで――わたしは一時的に不可能を可能とする。
それはきっと、ラタス姉妹の戦いを間近で見ていたからこそできるようになった技術。
マリーシルバーの補助を使わず、そこに込められた弾に霊力を集める。
出来た――その直感と同時に、わたしはマリーシルバーの弾鉄を引く。
「
これが、今の私が出せる最大の一撃。
極限まで狙いを澄ました、霊力強化の貫通弾ッ!!
緩慢な時間の中、鋭く突き進むマリーシルバーの
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シャリア視点だとどうしても説明ができない技なので、こちらで。
【用語補足】
《断つべきを知る極視/アルテマ・アイズ》
本編中でシャリアが推測している通り、ゾーン・デトネイションと同格の身体強化系のスキルであり、奥義クラスのモノ。
ビリーの切り札の一つ。
シャリアのゾーンは集中力を高め思考を加速させるモノだが、こちらは目を良くするモノ。
視野を広げ、動体視力を高める。また微細な動きすらも見えるようになる為、筋肉や霊力の僅かな動きもわかるようになる。それらに付随して反応速度も高まる為、先読み能力が異様に高まる。
一種の未来予知とに近い視力を手に入れるモノであり、加えて、相手の隙や対象の脆い点をも見極められるようになる為、限りになく必殺の近い一撃を繰り出すことが容易になる。
ゲーム的に例えるなら、発動中の攻撃がすべてクリティカルヒットになるようなスキル。
シャリアのゾーンと異なり、発動準備に必要な時間も僅かな為、連発や即時発動も可能。
一見すると致せり尽くせりなのだが、弱点として瞬きすると解除されるという点がある。
また、発動中は異様に目が乾く為、目薬が必須。目が乾かずともその負担により痛みを伴う。
一応、しっかりと準備をすれば、瞬きによる解除も無くなり、任意解除するまで発動したままでいられるが、目への負担は軽減されないので、あまり気軽に使えない。
負担が重いときは、一時的に視力も低下してしまう。時間経過で回復するとはいえ、一時的な失明もありえるので使用リスクは大きい。
このスキル発動中に、瞬抜刃を使用すると技名の頭に【
発動後は目の痛みの為に、一定時間、ビリーの命中と回避が大幅に減少する。
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