酸素-15
それから一週間が経った。
新三は平々凡々とした毎日を送っていた。
一方、犯人を検挙した誠には警視総監賞授与の話が挙がっているらしい。そして、愛子は探偵として不倫調査や素行調査業務に勤しんでいた。
「あ~暇だ」
いつものソファーに寝転がりながら声を出す。
「じゃあ、報告書の作成手伝ってください」
愛子は自分の作業を手伝うよう促すと新三は「やだ」と即答する。
「でもさ、こう平凡な毎日が続くと少し退屈だよね」
「そう思っているのは小永さんだけです」
「そぉ?」
「それより・・・・・・」作業の手を止め愛子は疑問に思っていた事を尋ねる。
「私達が鑑定している間に何があったんですか?」
「え?」そう言いながら新三はソファーから起き上がると辺りを見回して誰もいない事を確認して話始める。
「じゃあ、教えてあげる。但し、誠っちには内緒で。あの後さ・・・・・・」
誠達が部屋を後にしてすぐ新三は話し始めた。
「さ、お話しましょう」
「何も話すことはない。この星の人間は犯人を作り上げるために拷問までするのか?」
ふざけるなといった目で新三を見る酸部。
「拷問って大袈裟な」
「違うのか?」
「あんたが素直に認めないから、オキシジェン・デストロイを使ったまでよ」
「オ、オキシジェン・デストロイだと!?」
「今頃、気づいたの?」
「自分が何を使ったのか、分かっているのか?」
「うん」
「はぁ、はぁ」酸部は目を泳がせて呼吸が乱れ始める。
「あ~あ、早く白状しないからあれを使われるんだよ」
「く、クソっ!!」
「もうその反応に飽きた。そろそろこっちの話を聞いてほしいな」
「何っ!! 俺を殺そうとするのにか!!」
「勘違いすんなよ。お前に殺された人達の事を思えば大したことはない。早い死刑執行だと思え」
その言葉に酸部は苦虫を嚙み潰したような顔になる。
「ま、オキシジェン・デストロイの効能より先に他の星の暗殺部隊がお前の事を殺しに来るだろうなぁ~」
「う、噓だろ」
「この地球、特に日本のセキュリティはガバガバだから。あっという間にお陀仏だろうなぁ」
「ひっ、ひぃ!!!」
そこから新三は懇々と同様な話を酸部に約30分し続けた。
誠達が戻って来る5分前に酸部は観念したのか、涙を流しながら自分の供述を始めた。
「というわけ。分かった?」
「納得はしました。でも・・・・・・」
「でも?」
「私、人殺しになるんですか?」
「あ、言い忘れてた。あのオキシジェン・デストロイがオキシジェン星人を殺すことはないよ」
「じゃあ、酸部は何故、自分が死ぬと?」
「それはね、オキシジェン星人が自分達の能力を使って殺さないようにする為にオキシジェン・デストロイを使われると死ぬそう教えられているんだよ。子供の頃から」
「迷信ということですか」
「That’s Right!!!」
「この事は他言無用だよ」
「分かりました」
愛子は再び、調査報告書作成に戻り新三は再びソファーの座面に身を預ける。
それからすぐに事務所の電話に一本の電話が掛かってくる。
「はい、Star of Light探偵社です」と愛子がすぐさま電話を取る。
「良かった。繋がった。巽川です」
「巽川さん! どうしました?」
「事件です。小永さんのスマホに繋がらなくて」
「そうでしたか。それはすいません」
愛子は誠から事件発生場所を聞き出して電話を切る。
「小永さん、ご指名です」
「人をねぇ、キャバ嬢みたいに言わないで」
新三は再び起き上がると立ち上がり事務所を出て行く。
「場所も聞かないで行っちゃうんだからぁ~」
愛子も後を追うようにパソコンを慌ててシャットダウンして、新三の後を追うのだった。
完
Detectiveは宇宙人 飛鳥 進 @asuka-shin
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