酸素-11
新三と愛子は宇宙警察を出て近くにあるホルモン焼きの店に移動した。
「ホルモン2人前」
新三は席につきながらホルモン焼きを注文する。
「小永さん、食べている場合じゃない気が」そんな愛子を無視し、新三は今か今かとホルモン焼きを待っているようだった。
「はい。ホルモンできたで」関西弁の女の子が、ホルモンが載った皿を新三と愛子に渡す。
「うん、美味い」と舌鼓を打ちながら新三はあっという間に食べ終える。
「愛子ちゃん、これ見てみ」
新三にそう言われ愛子はホルモンを食べながら新三の食べ終えた皿を見る。
その皿は地図になっており、マーキングが打たれていた。
「もしかして・・・・・・・」
「愛子ちゃんのお考えの通り、これ酸部の居場所をマーキングしている」
「えっ!! ホルモン食べている場合じゃないですか!!」
「餅つけ。ここの場所は中々Deepな場所だからもう少し待とう」
「そうなんですか」愛子も勝手が分からないので取り敢えず、新三の言う通りにする。
それから約30分の時が流れた。
愛子もホルモンを食べ終え暇だと思っていると「あ、動いた」と新三が声を出した。
「行きましょう!!」愛子は立ち上がり店を出ようとするが新三は動かない。
「小永さん! 何しているんですか!!」
店に戻り愛子は新三の手を取るが振り払われる。
「せっかちな娘だなぁ~」
「せっかちって、逃げられるかもしれないんですよ」
「逃げらへんと思うで」
ここで女の子が話に入ってくる。
「どういう意味ですか?」
「だって、こいつ渡航パスポートを取りに行っとるもん。偽造のね」
「じゃあ、それを使って国外逃亡されるじゃないですか?」
「国外逃亡ちゃう。星外逃亡や」
「その星外逃亡されるじゃないですか?」
「あんた、アホか?」
「なっ!?」初めての相手にそんな事を言われるとは思わず愛子は戸惑う。
「ええか? こいつは今、偽造のパスポートを作りに行ったんや。
偽造のパスポートとはいえ、すぐには製造できへん。最短でも10日はかかるんや。あんた、ほんまに新ちゃんの同僚か?」
「まぁ、そう怒らんといてあげてや。この娘、新人やねん」新三が釈明するのに対して愛子は「何故に、関西弁?」と心の中で呟く。
「そうだったんや。なんか、ごめんや~」愛子に謝罪する女の子。
「いえ、こちらこそ不勉強で申し訳ありません」
「ほい、これウチのサービスや」
女の子は愛子にホルモンをサービスで出してくれた。
「ありがとうございます」愛子は礼を言い早速、口にする。
「いいなぁー 俺の分は?」
「あんたの分はない!!」あっさりと一蹴される新三。
それから愛子は出されたホルモンを食べ、新三は酸部の行動を追う。
「そろそろ行こうか」新三がそう促すと「はい、分かりました」と最後のホルモンを食べる愛子は店を後にした。
来た道とは逆方向に歩く新三について行く愛子。
「あの来た道とは逆ですけど」
「良いから、黙って付いて来な」
少し歩くと新三は「ここだ」と言い路地に入って行く。
また、行き止まりに着くと今度は「開けごま!!」と叫ぶ新三。
すると、異空間ゲートが出現したのだ。
驚きを隠せない愛子を他所に、当たり前といった感じで新三は中に入って行く。
仕方ないので愛子も恐る恐るゲートの中に入る。
三歩も歩かない感じで外に出た。
「早っ」愛子は率直な感想を述べる。
「ふふっ」そう微笑む新三は前方を指さす。
その先には行方不明の酸部が何食わぬ顔で歩いていた。
「愛子ちゃん、写真」
「あ、はい!!」愛子は慌ててスマホを取り出して今の状況を写真に収めた。
「よしっ、誠っちに連絡だ。愛子ちゃんはあいつを尾行して」
「分かりました」
誠の連絡を新三に任せ、尾行を開始する愛子。
この前の二の前は踏みたくないといつも以上に気を配り尾行する。
それから間もなくして、酸部は近くのウィークリーマンションへと入って行った。
ちゃんと、その現場も写真に収める愛子。
「どう?」遅れて新三が来た。
「今、あのウィークリーマンションに入って行きました」
「そう。ああ、もうすぐ誠っちが来るらしいから」
「そうですか」
「所で部屋番は確認したの?」
「いえ、確認してませんが」
「そうか。ま、いいや。俺、このマンションの裏口見てくるから。誠っちが来たら連絡してくれ」
「了解です」愛子がそう返事すると新三はマンションの裏手へと回っていった。
スマホの時計で時間を確認すると夕方の6時を示していた。
今日も残業ルートか、そんな事を考えながらマンションを見張る愛子の背後に一台の車が止まったので振り返る。
誠が乗った覆面パトカーであった。
手招きして車に乗るよう促すので、愛子は助手席に座る。
「お疲れ様です」開口一番誠はそう言った。
「お疲れ様です。今、酸部があのマンションに入っていくのを確認しました」
愛子は撮影した写真を見せながら現状を報告する。
「それで、動きは?」
「いえ、まだ何も」
「じゃあ、ここで見張りましょう」誠はエンジンを切り、後部座席に置いてあるモバイルバッテリーに繋がれた携帯用クーラーのスイッチを入れる。
「あ、涼しい」
「でしょ。他の刑事は使ってないんですよ」少し嬉しそうな誠。
「そういや、何か忘れているような」
涼みながらそれが何かを考える愛子だった。
一方、その頃新三はというと暑さに苦しめられ今にも死にそうだった。
「暑い。てか、誠っちはまだか?」
ついにはその場にへたり込んでしまうのであった。
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