開始-9
その脅迫されていた人物は業界シェア第3位の企業に勤める営業マンの
誠からこの事を聞かされた新三はすぐ様、話を聞きたいとし柴取にアポイントメントを取ってもらい今に至る。
だが、柴取と話してみてその冴えないと印象は払拭された。
「私の営業スタイルは、相手を接待して上機嫌にさせたうえで契約に漕ぎ着ける。
私はこれで成績を挙げてきました」自分の営業スタイルを新三達に話す柴取。
「じゃあ、その為には相手のリサーチは相当なものでしょうね」
「そうです。そうです。これ、見てください」新三のその言葉に嬉しそう答え、メモ帳を新三に見せる。
そこには取引先担当の個人情報がびっしりと書かれていた。
個人情報とはいっても、住居先の住所や家族構成までが書かれている訳ではない。
性格や趣味思考そういったものだ。プロファイリングと言っても過言ではない。
それを読んだ新三はこの手帳フェイクの物だと見抜いた。
つまり、第三者に見せてもさして問題のない代物を見せたそういった所か。新三は声に出しはしなかった。
「それで、どの様な脅迫を?」誠が質問した。
「はい。これを見てください」
柴取は胸ポケットから封筒を取り出し、中から写真を出して三人に見せる。
その写真は、柴取が取引先の人間に茶封筒や紙袋を渡している写真だった。
「賄賂ですか?」愛子はストレートに質問を浴びせると「とんでもない」と柴取は笑顔で返す。
「これはお客様が欲していた物を私が入手して渡しているだけですよ。勿論、その商品の代金は頂いています」
「我々もそれについて、どうこう言うつもりはないので安心してください」と新三が安心するよう言うと柴取は安堵の表情を見せる。
「で、この写真を突きつけられて何と言われたんですか?」
「それは、この写真を他の取引先や私の会社そして週刊誌に流すと」
「王道を行く。そう言った感じですね」新三は思った事をそのまま口にした。
「彼の言う事は無視して頂いて構いません」そう前置きし誠は次の質問をする。「金銭の要求はありましたか?」
「いえ、それはありませんでした。只・・・・・・・・」
「只?」
「いえね、私の営業スタイルが実ってきたのか。弊社の商品を大々的に扱って頂ける期間限定のイベントを行えることになったんです。それも複数口で」
「それを中止にしろ。そう言われたんですか?」愛子のこの発言に柴取は頷く。
「それでこのイベントは中止にされたんですか?」
「結局の所はそうなりました」
誠の問いにそう答えると悔しそうな顔を浮かべ下を向く。
ここまで来るのにかなりの苦労があったことが三人に伝わってきた。
「会社はこのことを知っているのでしょうか?」誠は会社がこの事実を認知しているか確かめる。
「知っていますよ。私の上司は大変理解のある方でこの営業スタイルに賛同してくれましたし、それに脅迫の事を伝えたら烈火のごとく怒りましてね。社長にまで話を持って行ってくれて抗議までさせたんです」
「その成果は皆無だったと・・・・・・・・」
「その通りです」
「それって、違法なんじゃ」愛子は真希のこの行動の違法性について唱える。
「そうですね。明らかな業務妨害です。被害届の方は?」愛子の意見に賛同しつつ、誠はこの事案について何かアクションを起こしたのか尋ねる。
「いえ、やはり業界シェア第一位の企業さんなのでこちらが訴えを起こしても勝てないと、顧問弁護士が言いましてね。何より証拠がないもので」
「証拠ならあるじゃないですか。これ!!」愛子は写真を指さすと隣席の新三が軽い溜息を吐く。
「愛子ちゃん、この写真を真希が撮影した証拠は何処にもないわけだろ。それに脅迫された時だって録音してなきゃ、しらばっくれられて終わり。
つまりは訴えるだけの証拠がない。そういう事ですよね?」
「あ、はい。不徳の致すところで申し訳ありません」
「何も柴取さんが謝ることはありません」誠がすかさずフォローを入れる。
「そう言って頂けると幸いです」
「その脅迫を受けた日の事を教えてもらえませんか?」
「分かりました」そこから柴取はどのようにして、真希が接触してきたか語り始めた。
それは一か月前のある日、残業を終え会社を出てすぐ見知らぬ男から声をかけられた。
「柴取さん。ですか?」
「は、はぁ。貴方は?」
「申し遅れました。私、グンギロの営業を担当しております。真希と申します」そう言って名刺を渡してきたので柴取もまた名刺を渡すと受け取った真希はふっと鼻で笑った。
少し嫌な気分になったが、営業先でも偶にこんな奴がいるので流す事にし用件を聞く。
「グンギロの営業さんが私に何か?」
真希は辺りを見回して「ここじゃなんで、場所を変えましょう」と言い一人スタスタと歩いて行くので柴取も仕方なくついて行く。
そして、真希は個室のあるバーに入り席に着くと同時に接触してきた目的を話し始めた。
「これを見てください」そう言って、柴取の前に封筒を差し出す。
「失礼します」少し厚みのある封筒を受け取り、中身を確認すると、例の写真が入っていたので驚いて真希の顔を見るとニタニタと笑って柴取を見ていた。
「これは?」説明を求めると「見ての通り。貴方の不正ですよ」とだけ言う真希。
「不正って・・・・・・・」
柴取は顔を引きつらせながら何故、この写真をこの男が持っているのか? それだけを考えていた。
「その写真から察するにそうじゃありませんか? そのおかげで貴方は、複数口でイベント開催までに漕ぎ着けた。違いますか?」
「そ、それは」
「別に、貴方から金を無心しようなんて考えていません。私はそのイベントを中止して欲しい。ただそれだけなんですよ。もし応じて頂けないのであれば、この写真を貴方の会社、週刊誌に送らせて貰います。告発文を添えてね」
「それだけって。貴方ね、これは社をあげた一大イベントです。それをこんな写真だけで中止しろなんて」
「確かにこの写真だけで賄賂とは言えないかも。良いですか? 柴取さん。
世間や会社は貴方の言う事より、この写真の方を信用すると思いますよ」
「不愉快だ。失礼する」
注文をする前に席を立ち退店する柴取を真希は余裕そうに見送った。
「それから後日、告発文と共にこの写真が会社に送られてきたんです」
「そうでしたか・・・・・・・・」なんと答えて良いか分からず適当な返しをする誠。
「ま、会社はイベントの中止を決定し、大事にならず今になるんですけど」
新三はもう良いという合図を誠に送り「分かりました。大変参考になりました。では、失礼します」と言い去った。
その帰り道、愛子は怒りを爆発させていた。
「なんて奴なの。あの、真希って!!」
「そんな怒るなよ、愛子ちゃん。それより、誠っちに頼みたいことがあるんだけど」
新三は愛子を宥めつつ、誠にある頼み事をした。
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