抱きたいっていうのは……えっと、言葉の綾でして
闇野ゆかい
第1話キミを、傷付けたんだよ……
「抱きたい……」
「……良いよ。私で、良ければ……」
脳内を埋め尽くさんとする異性への関心で、思考していた異性を抱きたいという欲求が湧いていた。
そのせいで、理性を保てない性欲丸出しの野獣のような願望が身体から漏出した。
気づかぬうちに、やましい願望が口から漏出していた。
床に新聞紙を敷いた上に載る未完成の応援旗に刷毛を走らせる
「……えっ?えっと……漏れてた?」
正面に屈みながらクラスメイトに押し付けられた応援旗の作成をしていた彼女の表情に気付き、恐る恐る訊ねた俺だった。
短い沈黙をもうけて、ゆっくりと頷く彼女。
彼女の反応に、俺は慌てて誤解を解こうと足掻く。
「えっとぅー、あれは……そのぉー、あれでっ言葉の綾でしてっ……けっして衣縞さんをそう言った目で見てるというわけでは——」
「……分かってるよ。あっ……気持ち悪いとか思、わないから……男の子なら、そのくらい普通だよね。藤木くんが……藤木くんの本心を告げてくれたのに驚いて。それ、に……嬉しい、なって……」
頬を紅潮させたままの彼女が俺を傷付けまいと言葉を選びながら、僅かにうわずった声で言葉を紡いでくれる。
「……えっと、あっ、ありがとう……で合ってるのかな?この場合って……」
「あはは……私も、分かんないよ……」
弱々しい苦笑を漏らし、困惑しながら返答する彼女。
「……」
「……」
気まずい空気が二人だけを残した教室に漂い始めた。
俯く衣縞の表情は垂れた前髪で隠れていたが、動揺しているのが手にとるように解る。
「……ごめん、衣縞さん。困らすこと言って……」
「あ、いや……謝らないで、えっと……笑ってよ、藤木くん。藤木くんにそんな顔……似合わないよ。それに……そんな顔してる藤木くんなんて見たくない、よ……」
無意識でも衣縞を傷付けるような言葉を発してしまった。
それなのに……彼女は、衣縞は、俺を責め立ててくれない。
——ごめん……ごめんな、衣縞。俺なんかを……
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