第43話大賢者と竜食いの魔女(四天王戦その2)

俺達大賢者一行のいるのは竜族の領域。

竜系の魔物達が巣くっている一帯である。


「ねぇ旦那様、魔王らしき奴も倒したし一度戻らない?」


「私達のMPも底を尽きかけているしな、婿殿」


「転移の魔術が使えるうちに帰った方がいいと思うよ、ジャック君」


3人の言う事も最もだ。

特に魔王を倒してからは仇討ちとでも言わんばかりに、

魔物達の攻撃が熾烈になってきている。

そして俺が転移の魔法を使おうとしたその時である。


「大賢者様、お待ちください!」


「あなたは村長代理のエルザさん!どうしてここに?」


「祖父が魔物に囚われてしまい…大賢者様達を村に連れて来いと…」


「どう見ても罠よ旦那様」


「でも行くしかないだろう、皆手を繋いで…転移!」


俺は転移の魔術を唱えると、かつて魔竜サイクロプスと戦ったあの村に戻った。

これで持ってきた魔力の石も皆のMPもすっからかんだ。

しかし休む間もなく俺達は村長の家へと急いだ。


「おじい様!」


エルザさんが勢いよく扉を開け叫ぶ。

そこには拷問でもされたのか傷だらけの村長がいた。


「く、ヒール!」


俺はエルザさんの手を掴みなけなしのMPで回復を試みる。

どうやら峠は越えた様で、何とかなったようだ。


「申し訳ない賢者殿…あの竜の死骸の場所を教えてしまいました」


「そんな事はいいんですよ。ゆっくり休んでください」


「あなたが魔王様を倒したという大賢者ゼロね?」


「だとしたらどうする」


「あなたにはもうMPはないはず。サイクロプスの心臓を食べるまでもなかったようね」


「何が何だか知らないが、俺のMPはまだなくなっちゃいないぜ」


「ひょ?」


「リン!MPを貰うぞ!フラッシュ!!」


「うおっ、まぶし!?」


俺は生きている剣ことリンからMPを貰い閃光の魔術を唱えた。

それ自体は大した事はない。

しかしピンチをチャンスに変えるには十分だった。

さすがはぷよぷ〇の攻略本、頼りになるなぁ…

俺は竜食いの魔女レジーナの手を掴んだ。

これでこいつのMPが使える訳だ。

女性だから好感度ボードで好感度を弄れば魔王城の場所も探れるやもしれない。

しかし村長を拷問したこいつにはそれで気が済む訳が無かった。


「ちょ、離しなさい!」


「転移!」


俺は転移の魔術を唱えるとバビロニアの警備の詰め所に飛んだ。

そこには丁度傭兵女王ミーナとその部下達のあらくれどもがいた。


「マナドレイン!そして竜の力を封じたまえ!」


これでレジーナは竜の力も使えないし、MPも無いから魔術も使えない。

大賢者の知識からこいつが魔術以外に竜の力を使える事は分かっていたからな。

俺はタコ殴りの準備をすますとミーナ達に合図する。


「こいつは魔王の配下だ。死なない程度に痛めつけていいぞ」


「本当に、いいんだな?」


ミーナは舌なめずりをした。


「いや、やめて!なんでもしますから!」


命乞いをするレジーナ。

しかし後悔してももう遅い。

レジーナから吸収したMPはリンに注がれている。

俺は最大MPも0だから俺自身に吸収しても意味が無いのだ。

俺はそのMPを使い転移の魔術を使うと、エルザさん達の待つ村へと戻った。

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