第27話大賢者と大闘技場

今俺はシルヴィア会長と手を繋ぎドキドキしている。

それは恋でもなんでもない、命の危険を感じてるからだ。

俺は最強だ、俺は最強だ、俺は最強だ、俺は最強だ、俺は最強だ、

俺は自分に強く念じる事で暗示をかけた。


「ゼロ君、来るわよ」


小柄な男が巨大なオークを引き連れている。

モンスターが相方とかそんなんありかよ!と内心思う俺だったが、

今更この程度のモンスターに臆する俺ではなかった。


「バーン!」


ウギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!


俺は最下級の炎の呪文で男の使役するオークを焼いた。

オークは黒焦げになりその場で倒れた。

残った小柄な男は俺達に降参のポーズを取っている。

これは思った通り楽勝かもな。


巨大なスライムに巨大なドラゴン、巨大なワーム等、

強力なモンスターばかり引き連れた奴等ばかりと戦っている。

なんだこれモンスター大戦じゃないか…

呆れてる俺を余所に戦いは進んでいく。

無論最強の大賢者の力でどのモンスターも楽勝だ。

そして決勝戦が始まった。

相手はモンスターではなく漆黒の鎧を着た騎士と黄金の鎧を着た騎士だった。


「ゼロ君、こいつら中々手強いわよ」


「分かってます、防護の魔術を掛けておきますね!それとメガフレア!」


俺は万一の為に防護の魔術を会長と自身にかけると、

敵に上級の炎呪文を唱えた。

決勝に進む位だ、この程度で死にはしないだろう。

(まあ万一の時は蘇生させればいいしな)

黒騎士は剣の一閃でその炎を切り裂くと俺に急接近してきた。


「うお、マジか!頼んだぞリン!」


「ちょっと、こんな化物と戦うなんて聞いてないわよ!?」


黒騎士の猛攻撃が俺に降りかかる。

剣であるリンはなんとかそれを振り払いしのいでいた。

一方会長はと言うと、俺と手を繋ぎMPタンクをしつつ互角に黄金騎士と戦っていた。

化物なんじゃないかこの人。

俺がそんな失礼な事を考えていると黒騎士の斬撃が容赦なく飛んでくる。

俺は仕方なく超上級の炎魔術を唱えた。


「煉獄の炎纏いて突撃せよ!イフリートフレア!」


これは俺もろとも炎をまとって突撃する魔術だ。

この距離でしかも俺に突撃してる状態で避ける事などできないはず。

しかも煉獄の炎だ、先程の様に剣で切り裂くことなど不可能、

そう思ってた矢先である。

黒騎士は剣を地面に突き立てると宙高く飛んだ。

一方で肩透かしをくらい態勢を崩す俺。


「おっとっと」


「後ろがお留守だぞ、魔術師!」


「それはお互い様だ!」


「何!?」


俺はおいて来た生きた剣であるリンを手元に呼び寄せた。

その射線上にいた黒騎士の背中に見事にリンは突き刺さった。

こうなれば後は黄金騎士のみ。

俺は会長と黄金騎士の戦いの方に目を向けると既に勝負はついていた。


「さすがに、本気をだしすぎちゃったわね…」


その勝負は会長が勝っていた。

黒騎士も黄金騎士も完封し、まさに完全勝利!

大闘技場での戦いは大賢者としての俺の名声を大いに高めてくれた。

…明日は凄い筋肉痛になりそうだなぁ。


「それならマッサージでもしてあげるわよ」


「よろこんで!と、その前に」


俺は満身創痍の黒騎士の前にやってきた。


「なんだ、嘲笑いにでもきたのか」


「いや、実は俺国王やってるんだけどウチの国にこないか?」


「バカげた話を…断る」


「そうか…それじゃあしょうがない」


俺は好感度ボードを呼び出すと黒騎士の設定を0から4にした。

あの時声を聴いて女だってわかったからな。

ロックもかかってないし、これはやったと思った訳だ。

しかし残念ながら黄金騎士の好感度は動かせない。

男だったのかはたまた女だがロックがかかっていたのか、

いずれにしても仲間にするのは無理な様だった。


しかたない、素で頼んでみよう。


「黄金騎士さん、よかったらウチの国で働かない?」


「興味無いね。黒騎士を妙な術でかどわかした様だが私には効かん」


「じゃあしょうがない、ここでお別れだ」


こうして大闘技大会は幕を閉じた。



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