第13話大賢者と創造の錬金術師

この国には魔法と相反する技術がある。

後に科学と呼ばれる錬金術だ。

科学と魔法の区別が付かないこの国では錬金術は異端の魔術扱いされている。

その錬金術を若くして極めた者がいるという情報が入ったのだ。

さっそく俺はいつもの面子(MPタンクのヒロイン達)を集めると

その錬金術師の元へ向かう事にした。


「じゃあさっそくいくぞ、メア」


「わぁお!これってデートみたいね!」


「はしゃがないで下さい、メアさん。これは真面目な調査なんですよ」


「その通りだ。ハーレムの事は解せないが、本妻として奴に付き合う義務があるからな」


「はいはい、先輩もアリスちゃんも拗ねないの。じゃんけんで決めた事でしょ」


何故連れて行くかと言うと、帰りや緊急事態用にMPタンクが必要になるからだ。

更にここからは幼女軍師マリアの助言なのだが、相手を信頼させる為には、

仲間はぞろぞろと連れて行かない方が賢明だという。



「おしゃべりはそこまでだ。転移!」


さっそく俺とメアは創造の錬金術師の元へと飛んだ。


「うおっ!」


「きゃっ!?」


灰色の髪をしたすすだらけの女性に俺とメアはダイブした。

俺の転移の魔術は精度が高すぎて対象のすぐ近くに飛んでしまう。

精度が高すぎるのも考え物だ。


「大丈夫か?」


俺は手を差し出すとすすだらけの少女はその手を掴みこういった。


「私はマリー。で、あんたらは?」


マリーと名乗った少女は警戒心剥き出しで俺達に尋ねた。

そりゃ急に自分の前に見慣れぬ二人組がダイブしてきたら誰だってそうなる。


「俺はゼロ、こっちはメアだ」


メアと俺はぺこりと会釈した。


「私に用があるって事はあなた達まともな魔術師じゃないわね…まさか処刑人?」


「違うって。俺らは―」


「私達夫婦なの♡ね、旦那様?」


「また誤解を招きそうな事を…ち、違うからな!」


「ふふふ、あなた達が処刑人じゃない事はよーく分かったわ」


腹を抱えて俺達の事を笑っているマリー。

どうやらわだかまりは解けたようである。


「で、新婚さん、この私に何か用なの?」


「新婚だなんて…もう正直なマリーさん」


「…君の錬金術師としての腕を借りたい」


「ふーん、どうやら真面目な話みたいね」


「ここじゃなんだ、ちょっと場所を変えようか」


「え」


俺はメアとマリーの手を掴むと転移の魔術を唱えた。

目指すは未開の無人島。

未知の世界へ出発だ。


「こ、ここどこ?」


狼狽えるマリー。

周囲には木一本さえ生えていない不毛な大地だった。


「ここを君の力で楽園にして貰いたい、君のスキル”錬金術師(アルケミスト)”でね」


「ふーん、私を異世界人だって知ってて連れて来たみたいね」


「俺もそうだからな。ここの世界の奴等は魔法魔法と魔法に拘り続けている」


「この世界の住人の私が言うのもなんだけど魔法主義すぎて堅苦しい世界よね~」


現地人のメアがフォローを入れる。

マリーは俺達の話に納得し、うんうんとうなずいている。


「という訳で科学に満ち溢れた世界をここに作ろうじゃないか」


この言葉を聞いた瞬間マリーの目が輝き出した。

そう、彼女が転移前は科学オタクだった事は調べが付いている。

俺の計画に興味津々の彼女が俺の提案に乗るのは時間の問題だった。


「本当に好きにやっていいのよね」


「ああ、いいぞ」


「じゃあさっそくやっちゃって!蒸気戦士一号!!!」


突如現れた3mはあろう巨大な人型のソレは、

急に地面をほじくり返した。


「よし、アルケミスト(錬金開始)!」


彼女が作り出したのはなんと…なんと温泉宿だった。


「いや~前住んでた所じゃ狭すぎて作れなかったんだよね~」


「旦那様、これは何?」


「ジャパニーズリゾートホテルって所かな」


「よーし、早速汗を流すぞー!」


「あ、待ってよ!私も行く」


気があったのか二人は温泉でくつろいでいる。

俺はと言うと一人寂しく男湯の温泉に浸かっていた。


「はぁ…次はどうしようかなぁ…」と考えていた矢先である。


女湯の温泉の方に魔物が現れたのだ。

魔物はワイバーン、小型の飛竜だ。

それも群れで来ていて何匹もいる。

うおおおおおおおおおお、ここは男として断固助けに行かねば!

そう俺が興奮してる間にワイバーンは全滅させられていた。

ワイバーン弱すぎだろマジで…と落胆する俺だった。



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