貴方は、「予知夢」を信じますか? ーーこの物語は、ある夢に基づいた、実話を綴った物語です。

うさみち

第1話 九死に一生! 熱中症? いえ、実は……


 貴方は、――予知夢――を信じますか?


 私は、予知夢って本当にあるのではないか、と最近思っているのです。


 実際に私の父に起こったある事件の前日、母が同じ夢を三度も見たと言うのですから。


 その夢に基づいた事件が本当に起こったのなら、それはもう、予知夢であった、と疑わざるを得ないでしょう。


 ――では、私たち家族に実際に何があったのか。

 この物語を読んでいただく貴方を、予知夢の世界へ誘いたいと思います……。


 ◇ ◇ ◇


 ――事件は7月上旬、灼熱日。

 こどもの園行事の観覧に、両親とともに参加したある日のこと。


 その日、事件は起きました。


 観覧時間は朝の10時半から1時間半程度。

 いまかいまかと、たくさんの保護者に混ざって時間前から行列に並びます。


 炎天下、特に日陰も椅子もない中、立ち見観覧というものは、こどもたちの母である私でさえ、なかなかつらいものがありました。

 

 私の両親にとっては尚更でしょう。

 それでも、「孫たちの勇姿を見たい」と、無理を承知で来てくれたのです。

 それだけでなく、私が前日体調不良で病院へ通院していたため、優しい両親は私のことも心配してくれていたのです。


 前置きさせていただきますが、私たちなりに熱中症対策をバッチリしておりました。


《持ち物》

 水筒(お茶、塩分を含んだ飲料も)

 帽子

 涼しい服装

 首には、ネッククーラーも


 簡易椅子も持っていけたら良かったのですが、周りの保護者様も多くいる都合上、私たちだけフル装備で参るわけにはいきませんので、そこは我慢。



 そして、演技は始まります。

 まず、下の子の盆踊り。

 20分間くらい元気に踊っていました。


 ……この時、まだ父は元気だったのです。


「ちびちゃん、可愛く踊れているなぁ。うちの子がやっぱり一番可愛い(孫びいき炸裂)」


 このようなことを申していましたから、私も母も父の異変に気づくことなく、我が子我が孫に夢中だったのです。


 さぁ、下の子の演技も終わっていよいよメインイベント! 上の子が太鼓を披露するというのです。


 ……このあたりから、父の様子が次第におかしくなっていきました。


 上の子の演技が始まるまで、園内の掲示物を見回る私たち。


「ねぇ、短冊のお願い可愛いこと書いてあるね! ◯リキュアになりたいって」


「あ……あぁ……」


「ちびちゃんのほうは、バズ◯イトイヤーになりたいって」


「あ……あぁ……。そうだ……ね……」


 父の返事は一歩遅く、声に覇気も感じられません。


「「――?」」


 私も母も、顔を見合わせます。


「ね、ねぇ……、大丈夫なの? 具合、悪いんじゃないの……?」


 私は思わず心配になり、父に言います。


「無理しないで帰った方がいいよ! お姉ちゃんの演技は、私1人で見ておくから!」


「あ、あぁ……でも、お姉ちゃんももう卒園だからな。見てあげないと。大丈夫、少し……休めば……」


 日差しもますます強くなり、皮膚がジリジリ焼かれるよう。

 父の顔から吹き出す汗は、ただの汗ではない、と思えてならないのです。

 顔面蒼白、脂汗……。


「ね、ねぇ、熱中症なんじゃないの? 無理しない方がいいよ!」


 私はいつも優しい、けれど頑固な父を納得させるため、少し強い口調で言いました。


 すると、父は……



「………………………………うんだ」


「え?」


 体調不良のせいもあってか、声が小さく、全く聞こえません。


「え? なに?」


「………………………………たいんだ……」


「は?」


 普段から父に強気の母は「ハッキリ喋れ」と言わんばかりに語気を強めます。


「だから、はぁ?」




 母に気圧され父は言います。


「トイレに行きたいんだ……! (大)」







「「――――?


 …………ええええええええええ〜!」」




 ――話は冒頭へと戻りますが、これは「予知夢」に関する物語です。


 さぁ、体調不良の父へ母は何と言ったのか。


 後編は、母の暴言(?)から始まります。

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