エピローグ

エピローグ



 ――船の出航する汽笛をジャスティスは悲しみで顔を歪めながら聞いていた。



『俺はお前が嫌いだ』



 幼馴染の、確実な決別。



 そんな言葉を聞きたかった訳じゃ無い。



 甲板(かんぱん)に立つジャスティスは、小さくなっていく自分の育った国を呆然と眺める。



 これから僕はどうなるんだろうか?


 残された父様や母様はどうなるんだろう?


 そしてロウファ。


 キミはどうして僕が嫌いになったの?



 船に揺られながらジャスティスは幼馴染の突然の裏切りや濡れ衣を着せられた事に悲しみよりも何か引っ掛かりを感じていた。



(いつか誤解が解ける日は来るだろうか)



 そんな確約のない淡い期待を胸にジャスティスは深い溜息を吐いたのだった。
















 ――カラカラに渇いた荒廃した大地。いまやその姿を残骸と化した堅牢であった城。崩れ落ちそうな壁や落とし穴まである床の玉座の間。


 その玉座に座るのは一人の幼き少女――まあるい大きな瞳は目尻が少し吊り上がり勝ち気な印象をもつ。



「……何ともはや」

 少女は呟き、眉間に皺寄せ瞳を閉じる。

「これは到底看過出来ぬこと」

 ゆっくりと目を開けて深く溜息を吐いた。



「ノリス様、そろそろ……」


 いつの間にか、少女の傍(かたわら)には赤毛の男性が恭しく跪(ひざまず)いていた。



「ふむ」


 ノリスと呼ばれた少女は立ち上がる。


「漸く決心がついたのか」


 ノリスの真正面で跪いているのは濃紺の髪をした少年。



「今度は負けない」


 少年は立ち上がりノリスを真っ直ぐ見つめた。両耳にぶら下がった雫型(しずくがた)をした水晶(クォーツ)のピアスが虹色にキラリと光を放つ。




「――まあ朕自(ちんみずか)らお前の供をするのじゃ」


 言って、ノリスは傍にいた赤髪の男の肩にヒョイっと座り乗った。



「『ゲート』に向かう」


 ノリスは自分よりも少し大きめの錫杖(しゃくじょう)を振りかざす。


 次の瞬間、その場にいたノリス達はその姿を忽然(こつぜん)と消したのだった――




――続

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