第34話 窮地を打破する者2
34話 窮地を打破する者2
「カインさんッ!!」
声の主の名を、ジャスティスは驚きのあまり叫んだ。
「……カインッ。貴様よくも……ッ!!」
山賊Cは振り上げた右腕をカインが投げた短剣によって傷を負い、衝撃で痺れる右手首を掴みその場で片膝をついた。
カインは馬に乗っており、馬をジャスティスの手前でゆっくりと常歩(なみあし)にさせてから軽やかに降りる。
「ジャスティス無事かッ? ……っと、そっちはお前の連れか?」
ジャスティスに駆け寄るカイン。ウルーガをちらりと見てジャスティスに同意を求めれば、ジャスティスは無言で頷いた。
「相変わらず道草くうの好きだなお前」
「そんな事……」
呆れたように笑うカインにジャスティスは少し口を尖らせた。
「カイン! 貴様よくも頭(かしら)を裏切ったなッ!」
「まあちょい落ち着けって」
態勢(たいせい)を立て直しカインを睨む山賊C。それを諌(いさ)めるカインは投げた短剣(ダガー)を拾い上げた。
「……どう言う事だ?」
山賊Cは、戦いを中断した他の山賊たちの手を借り立ち上がると訝(いぶか)しく眉をひそめる。
「あんたらの頭、モンテロウは無事に助け出したぜ」
「何?」
ぴくりと眉を動かす山賊C。
「貴様からそんな言葉が出てくるなんてなぁ」
山賊Cはそう言いつつ小馬鹿した笑みを見せた。
「まあ色々と一悶着(ひともんちゃく)あってな……とりあえず急ぎこの国から出なきゃなんねぇ」
少し慌てた素振りで言うカイン。
「あんたらもチンタラしてるとディザイガ兵に捕まるぜ」
「何ぃ?」
カインの言葉に殊更訝しい表情を見せる山賊C。
「この国はディザイガ皇妃(こうひ)の命により『賊狩り』が執行されている」
「ーーな、なんだってぇッ?! ……か、頭は……ッ、サンポーさんはどうなったッ?!」
カインの言葉を聞いて急に慌て始める山賊C。
「国を出る準備をしている。俺は念の為、モンテロウからあんたらに言伝(ことづて)を預かった」
「……頭や他の連中は無事なんだな?」
カインの言葉を半信半疑に思っている山賊Cは未だ疑いの目をカインに向けている。
「信じたくないならそれでもいい。時間がない。俺はこいつを迎えに来ただけだ」
と、何が起きているか分からず呆然とするジャスティスを顎で指し示した。
「ーー相当ヤバいって事か……」
カインのひどく静かな言い草に、山賊Cは今の状況を瞬時に理解したようで、
「頭の言伝とやらを聞こうか」
言いつつ三日月刀を懐に戻しカインの方を向き直る。
「あんたらに会ったら、『ティエラ港のポイントゼロでランデブー。カインとその仲間を連れてこい』だってさ」
「……『ポイントゼロ』、あそこか」
顎に手をあてカインの言葉をおうむ返しする山賊C。
「賊狩りもガセじゃないって事か……」
「とにかく。とりあえずそのポイントゼロに連れて行ってくれ。ジャスティス……っと、お前の名は?」
カインは馬の手綱を引きつつウルーガに視線を送る。
「俺、ウルーガ」
「……お前も、いいんだな?」
カインがウルーガにそう聞くと彼は黙って頷いた。
「おい、カイン。こっちの馬一頭使え」
山賊Cは一頭の馬に跨り、山賊AとBは二人一緒にすでに馬に乗っていた。
「ウルーガお前馬は……」
「大丈夫」
ジャスティスよりは状況の飲み込みが早いウルーガはそう答え山賊達から借りた馬に跨った。
「ーージャスティス、行くぞ」
カインもまたジャスティスと一緒に馬に乗り、ジャスティス達と山賊達の一行は馬の脚でティエラ港に向かったのだった。
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