第33話 窮地を打破する者1
33話 窮地を打破する者1
山賊たちに取り囲まれたジャスティスとウルーガは、互いの背を互いに預ける形で山賊たちと向かい合っていた。
そんな中、ウルーガは静かに口を開く。
「……ジャスティス」
「ウルーガさん、すみません……こんな事になってしまって」
それに応えるようにジャスティスが小さく呟けば、ウルーガは苦笑しつつ首を横に振り、何かを決したかのように構える盾を再度しっかりと持ち手部分を握り締め直す。
「ここは俺に任せろ。お前はどうにか逃げ切って港へ行け」
と、ジャスティスにだけ聞こえるように静かにそう言った。
「ーーッ?!」
ジャスティスは信じられないと言った表情でウルーガを振り返り見る。
「何言ってんですかッ? できませんよ、そんな事!」
少し苛立ったように語尾を強めた。
「……逃げる算段でも立ててるのか?」
子ども二人のやりとりを可笑しそうに見る山賊C。それに気付いたジャスティスは山賊Cを睨みつけると、
「僕、絶対にウルーガさんと一緒に行きますからッ!」
唇を噛み締めて双剣を握る手に再び力を込めた。
「分かった」
ジャスティスにそう言われてウルーガもまた盾の持ち手を強く握りしめた。
「いい度胸だなっ」
「二人仲良く俺らの餌食(えじき)にしてやるぜ!」
山賊AとBは口々に言い、ウルーガに向かって刃を振り下ろす。
―…ガキィィンッ!
ウルーガは衝撃に耐えるべく腰を落とし盾を構えた腕に力を込めたがそれは刃の弾いた音によって阻まれた。
「ーーなッ?! クソッこの坊主……ッ!」
「二体一(にたいいち)は卑怯じゃないですかッ」
ジャスティスが、ウルーガを庇うように山賊たちとウルーガの間に入り込んで双剣にて攻撃を防いでいる。
「こっちがガラ空きだぜぇ!」
「そうはさせないッ!」
山賊Cが三日月刀の切っ先をウルーガ目掛けて突進してくるが、ウルーガは半身を少し捻り盾を横振りにして山賊Cの攻撃を弾き返す。
「……くそッ。デカイ図体して結構素早いじゃないかッ!」
地に足を滑らすようにして後退した山賊Cは軽く舌打ちをした。
「ウルーガさん! ……ぁうッ?!」
ジャスティスがウルーガに気を取られていると山賊Bの切っ先が、ジャスティスの右頬を掠める。右手の短剣で山賊Bを払い除けたジャスティスは同時に左から向かってくる山賊Aを牽制(けんせい)するように短剣を大きく横振りした。
「ジャスティスッ、大丈夫か?!」
「そうはさせねぇぜ!!」
ジャスティスがウルーガに駆け寄ろうとするところを、山賊Cはそれを止めるよう間に割って入った。
「……俺の相手はお前だよ、坊主」
「ーーッ」
低く威圧するように言う山賊Cに、ジャスティスは口の中で息を飲み込んだ。
ウルーガは山賊AとBに挟まれるように囲まれており身動きが取れない。それを助けようとするジャスティスだったが、こちらの行動はどうやら山賊Cに読まれていたようでジャスティスもまた動きが取れない状態となっていた。
「そろそろ終わりにするか……」
山賊Cは見切りをつけるようにジャスティスに三日月刀の切っ先を向け刃を振り上げた。
その場から逃げることも叶わずジャスティスは観念したように目を瞑った。
――ガキイィィンッ!
迫り来る刃を目の前で交差した双剣で受け止めようとしたがその衝撃は来なかった。恐る恐る目を開けるジャスティス。
「……え?」
目の前の光景にジャスティスは目を丸くする。
山賊Cが、苦痛に満ちた表情で顔を右側に向けて視線はその先を恨みがましく睨んでいた。
「俺の大事な『仲間』に手を出すんじゃねぇよ」
山賊Cが見る視線の先から聞こえるどこか聞き覚えのある声。ジャスティスは信じられないといった面持ちでゆっくりと声がした方を見た――
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