第31話 山賊、再び2
31話 山賊、再び2
一刻ほど森の中を進んでいけば木々は次第にまばらになり低木や雑草が殆どの景色となった。
陽は既に朝の顔を見せて眩しいくらいにジャスティス達を照らしてくる。
「ジャスティス、森を抜けるぞ」
先を歩くウルーガが後ろのジャスティスに声をかければジャスティスは前方に視線を向け、『あ、ホントだ』と小さく呟く。
「そんなに、森の中にいた感じしなかったけど」
「あの森は奥のほうに木々が集中しているからな」
ウルーガとジャスティスは森を抜けて街道へと続く細い脇道に出た。
太陽の光を左側に受けつつ脇道を歩く二人は数十分程で港に続く街道に突き当たった。
「……ウルーガさん、この道を西に行けば港に行けれるんですよね」
脇道と街道が繋がる所に案内板が建てられており、それを確認するジャスティス。
「そうだな」
「……」
ウルーガの短い頷きにジャスティスは少し俯いく。
「ジャスティスどうした?」
ウルーガが気になり問えば――
「……ウルーガさん」
ジャスティスは顔を上げてウルーガを真剣な眼差しで見つめ、
「その……。大丈夫、ですか?」
今度は申し訳なさそうに上目遣いになってウルーガを見る。
ウルーガはそんなジャスティスに呆れたような溜め息を吐いたのち、
「気にするな」
ジャスティスの頭を軽くポンポンと撫でる。
「俺が付いて行きたいと言ったのだから、お前は自分の思うようにすれば良い」
ジャスティスはウルーガに頭を撫でられ、その余韻を確かめるように軽く手を当ててから、
「ーーはい!」
笑顔でウルーガに答えた。
ジャスティスとウルーガはお互い薬草や香草のについての趣味が合い談笑しつつ港を目指す。その道の途中――城都ディズドに向かう北側の道、デセンタ街道・北から砂煙(すなけむり)と共に何やら影がニ、三体ほど見えた。
そちらを何気なく見たジャスティスは、
「ーーッ!」
何かに気付いたのか、
「ウルーガさんッ、避けて!」
叫んでウルーガを横に押し倒す。
ズザザザァ…!
ジャスティスとウルーガは地面に勢いよく身体を打ち滑らした。
『すみません』と、ジャスティスはウルーガに短く謝りすぐさま自分達が居たであろう場所を確認すると矢が数本地面に突き刺さっていた。
ジャスティスはウルーガと態勢を整えて『矢』の飛んできた方向を見やる。
数体の影が次第にはっきりとしてきて――
「あーッ! やっぱりあの坊主だ!」
姿が見えた途端に叫ぶ一つの影。現れたのは、一昨日に出会った山賊達だった。
「おいッ、坊主! 昨日はよくもやってくれたな!」
弓を片手にジャスティスを指差すのは山賊A。
「はぁ……」
ジャスティスは重い溜め息を吐き、
「先に仕掛けてきたのはそちらじゃないですか」
少し面倒臭げに頬にかかった横髪を指先で耳にかけた。
「このッ、減らず口がッ!」
山賊Aは有無を言わさず弓を構え矢を放ったが、その矢の切っ先がジャスティスに届くことは無く地に叩き落とされた。
「ウルーガさん」
ウルーガがジャスティスの前に立ちはだかり盾で防いでいたからだ。
「弓の攻撃は任せろ。『コレ』で防いでやる」
ジャスティスを振り返り盾を少し上げてみせるウルーガ。
「ーーはいッ」
ジャスティスは頷いて双剣を抜く。
「……クソッ!」
後ろに控えていた『兄貴』である山賊Cが舌打ちしつつ三日月刀(シミター)を構える。
「お前が邪魔しなければ秘宝が手に入ったんだがな!」
口中で悪態を吐きつつ刃を向けてくる山賊C。
それをジャスティスは片側の短剣で難なく受け止める。刃と刃が擦れ合い耳障りな音を立てお互い鍔迫り合いの形となる。
「……力ずくでは何も解決しないと思いますが」
「相変わらず生意気な小僧だ!」
刃を交え互いに言葉をかわして二人は離れて間合いをとる。
その間も山賊AとBが弓を放ってくるがそれはウルーガの盾防御によって払い落とされている。
「このデカいの、盾なんか持ってやがる!」
「…クソッ! これじゃあ埒があかねぇ!!」
山賊AとBが口々に言うのに気を取られたジャスティスの隙を狙い山賊Cが地を蹴り斬撃を放つ。
――ギャン! ギィンン!
鈍い金属音が鳴り響く。
山賊Cが繰り出す斬撃を双剣で受け止めるジャスティス。
「ー…素早いな」
小さく言って山賊Cは三日月刀を滑らし左脇から斜め上に切り上げる――
その刃をジャスティスは数歩引いてギリギリの所で交わし左手にある短剣を逆手に翻し、山賊Cの刃を受け止めつつ右手側の短剣を山賊Cの脇腹目掛けて突き出した。
「甘い!」
ジャスティスの右側の突きを山賊Cは難なく交わし攻撃を塞がれていた三日月刀ごとジャスティスを押し除け再び間合いをとった。
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