どうしてあの人が ララの葛藤②
「ララ? さっきからどうしたんだ?」
「……」
馬車の中で黙りこくっていたララに、ユリウスが首を傾げた。
「顔色が悪いみたいだ。少し降りて休憩しよう」
「いいの! 早く街に行きたいから」
馬車を止めようとするユリウスを遮って、ララは首を横に振った。
(街に行ってメリーアンさんを見つければ……彼女と何か話せば、この事態もどうにかなるはず)
領民たちに意地悪をするのをやめるように言ってもらえれば、少しはあの生意気な人々もララのために動くだろう。
実際のところ、領民たちは自分の仕事を全うしているだけで何もララに意地悪をしているわけではなかったのだが、ララの頭の中ではそういうことになっていた。
だって今まで、ララのために動かない人はいなかったのだから。
(とにかく、メリーアンさんにお願いしてみるわ)
心配そうなユリウスの顔にも気づかず、ララは窓の外を睨みつけていた。
*
メリーアンはすぐに見つかった。
街の人に特徴を伝えると、大学、神殿、博物館のあたりでよく見かけると教えてくれたのだ。
特に目立った容姿をしているわけではないが、街の人々はメリーアンをよく記憶していた。それだけ彼女は注目を浴びていたということなのだろう。
なんとなく立ち寄った大学のカフェテラスで、ララとユリウスはメリーアンを発見した。
同い年くらいの少女と何やら話し込んでいる。少女は突然立ち上がると、パッと駆けて行った。ちょうどいいと思い、ララはメリーアンに近づく。
久しぶりに見たメリーアンは、思ったほどやつれておらず、それどころか以前よりもいきいきしているように見えた。化粧っ気もないし、美しいドレスをきているわけでもないのに。
けれどやはりララの美しさは注目を浴びるようで。
話している(というか、ララが事情を大声で一方的に喋っている)うちに、周りの視線がララに寄ってくる。ララは気分が幾分か良くなった。
(そうよ。今までだって、ずっとそうだった)
いい気分になりつつも、警戒して話そうとしないメリーアンに少し苛立つ。
(何も答えないのは、やましいことがあるから?)
などと思っているうちに、予想外のことが起こった。
まるでメリーアンを危機を察知したかのように、美しい男性がこちらへやってきたのだ。
ララは息をつめた。
(なんて美しい人なの……)
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