長門有希の開拓

箱枝ゆづき

長門有希の開拓

 SOS団の部室で今日のハルヒは何やら口えんぴつならぬ口シャープペンシルで腕を組み、脚を組みながら窓の外を横目で眺めている。こいつがこういう感じで考えている時は大体ロクなことがないのは、今までの経験から察せることである。

「――そうだわ」

 ハルヒが呟いた。俺は嫌な予感に思わず身構えた。

「いいことを思いついた。今日からあんた、有希に毎日ちょっかい出すの」

「……は?」

「だって、有希ってあんまり話さないし、何考えてるのか解らないじゃない? だからキョンがいつもちょっかい出して会話を成立させなさいよ。そうすれば自然と部員にも心を開いてくれるかもしれないでしょ?」

「……お前、それ本気で言ってんのか?」

「あのねぇ、有希はあんなキャラだし、なんか無機質すぎて取っ付きにくいって言ってるわけ。だから感情とか表情が生まれるように、あんたの話術でわかりやすく変えてやりなさいよ」

「俺の話術? とてつもない過大評価っぷりだなおい。お前は一体何を考えてる? 俺に何を期待している?」今日のハルヒはとことん錯乱してるようである。長門にちょっかいを出して感情が生まれれば世話はない。

「有希もね、あたしが話しかけても反応しないんだけど、キョンにはちゃんと反応するんだもん。何かあんただけ特別みたい」

 そりゃお前と俺じゃ長門への認識が違うからだろ。だいたい長門はお前を要観察対象として認識してるから、下手に刺激できないんだよ。だからあんまり反応しないんだよ。ああ、これが言えれば楽なんだがまあ無理だわな。

「まあそんなわけで明日から頼むわよ! あんたたち二人なら上手くいくような気がするのよね!」

「待て、勝手に決めるな。そしてお前はこれがきっかけで俺と長門が仲良くなってしまったらどうすんだよ?」

「別にいいんじゃない? あんたたちが仲良くなる分には構わないわよ。ただし変なことしたらダメだからね。それからみくるちゃんにも手を出しちゃダメよ。わかった?」

 こいつ本当に頭湧いてんじゃねえか? それは昔からだと言われれば確かにまあその通りだが。

「俺が長門にちょっかい出すのはもう確定事項のような物言いだが、俺の意思は無視か?」

「もちろん無視。これは団長命令です」

 さいですか。朝比奈さん、俺を助けてくれませんかね。この暴走女をどうにかしてくれないかしら。

 しかし朝比奈さんは顔を赤くしながら黙りこくっているだけだ。いつものようにおどおどしているだけだった。

 まあいいか。いやよくねえよ。なんなんだよこの人権を無視したような俺の扱いは。まるでパワハラじゃないか。と俺は古泉に助けを求める視線を送ると、ヤツは苦笑していた。おいお前何とかしろよ。

 すると古泉は口パクでこう言った。

『すみません』………………。

『あなたに任せます』……。

 おい待て、もしもだ、仮に長門と仲良くなった俺にハルヒが嫉妬でもしてみろ、世界が崩壊しちまうんだが? そうなれば長門と仲良くなっても帳消しにされちまうんだが? 無かったことにされちまうんだが? それってかなりの徒労だと思わんか? とこれをハルヒに言ったところで「はあ? あんた何を言ってんの?」とか言われそうな気がするわけですよ。

 だってこいつは他人の気持ちなんて考えるはずがないんだからな。

 結局その日はそのまま解散となった。

 翌日の昼休みに部室へ行った俺は、昨日のハルヒの命令を実行に移すことにした。つまり長門とまずは会話するということだ。しかしだ、こいつは無表情で無感情、さらに話しかけてもだいたい一言で返されて終わるか、スルーするかのように無言なのである。打っても響かない太鼓というやつである。なので打ってるのかどうかわからなくなって、リズムが狂うというやつだ。しかしここでやめて逃げたりすると、ハルヒから何をされるかわからんのである。ああもう面倒だなあ。何でこんなことせにゃならんのだ。そもそも俺は長門とコミュニケーションを取ったことがほとんどないんだぞ。それをいきなり積極的になれと言われてなれるかってんだ。まったく困ったもんだぜ。せめてもう少し友好的になってくれたらなぁ。そうすりゃ俺も話しやすくなるし、こっちとしても接しやすいだろうに。

「……」長門はというと、まあもちろん無言で椅子に座りながら本を読んでいるわけですよ。しかも微動だにせずに黙々と。これを見て何かを察して言葉をかけろ、そこから会話を成立させろというのは、初見RPGゲームとかで攻略本とか攻略サイト見ないと絶対に突破できないイベントをノーヒントで突破してみろと言ってるようなもんだ。それが俺に可能なのか? できるわけないよな。しかしやらなきゃいけないんだろうなあ。ちくしょうめ。

「……ええとだな」とりあえず適当に声をかけてみるか。

「……なに?」長門はいつもと変わらない口調で応えた。

「何読んでるんだ?」まずこれだよな。これが普通だよ。しかし俺にはそれを訊くのが精一杯だった。すると長門は、

「本」と一言だけ返してくる。はい、そりゃそうですよね。本だろうな。本以外に何を読むってんだよ。長門がどんな本を好んでるのか訊いてみるべきだったか? いや無理だな。そんなことを訊いた日には、長門の無表情っぷりがもっと増すかもしれん。ただでさえ少ない表情がさらに少なくなったら、さすがにちょっと悲しい気分になりそうである。だが訊かない限り話は進まないわけだ。

「それは何の本なんだ?」

「文学の本」おいおい、まただよ。さっきの本という一括りの単語に比べれば多少は範囲が狭まったが、文学ときた。文学でも色々あるだろうが、俺は知ってる文学の本の数が少ないというハンデを背負っている。というかさ、なんか長門の返答が微妙に冷たくないか? 無表情の無感情な言葉の中にもう少しだけ微妙にフレンドリーな要素があったような気がするんだが? まさかこれも俺の気のせいなんだろうか。

 しかし長門との会話が続く気がしないぞ。どうしたものか。

 そこで思い出したのだが、昨日古泉が言っていたことを思い出す。『まあ要するにですね、彼女の方から話しかけられるのを待っていればいいんです』だったっけか。そういやあいつ言ってたなそんなこと。よし、やってみるか……とかするわけないだろう。話しかけられるのを待っていたら、おそらく100年経っても無言のままであろう。ということは、これはもう下手な鉄砲数撃ちゃ当たる作戦で弾幕を撒くしかないわけである。

 まずは少しだけ考えてみる。長門は女である。女ということは、褒められると嬉しいわけである。褒められて嬉しくないと返すような奴はツンデレであって、それでも心の中で(なんなのよあいつ、いきなり褒めるなんて)などと多少は心に刻みつけられるわけである。長門を褒めるとなると、どの辺りを褒めるかという問題が浮かんでくるわけであるが、やはりここは外見でしょうな。顔や体型など容姿のことを言えばいいんじゃないかと思う。見た目を褒められて嬉しくないと口で返す奴はツンデレだけである。

「長門はクールビューティーだな」

「……」相変わらず無表情で無言である。ダメだこりゃ。失敗だ。さて次に行こう。

「長門は美人だ」

「…………」反応なし。次だ。

「長門はスタイルがいい」

「…………」反応なし。いや待て、まだ諦める時間じゃない。次はこれだ。

「長門は可愛い」と俺が言うと、長門の本を持つ手がビクンと一瞬震えた。……ん?今の反応はなんだろう。何か意味があるんだろうか。

「……」長門は本に視線を向けているが、さっきは約30秒くらいでページをめくっていたのに、1分経っても2分経ってもめくる気配がない。ああ、何かしらの考察をしながら読んでいるんだろうな。そうだ、そうに違いない。きっとそのはずだ。俺が考え過ぎているだけなんだ。そう思いたいね。だってあんな一瞬の反応からじゃ何が何だかわからないじゃないか。うん、そうだろう、そう思うことにしようぜ。

 俺は長門の横顔をじっと見つめてみた。するとそれに気付いたのか、長門は視線を本に落としながらも横目で俺の顔を一瞬窺った。相変わらずページがめくられないまま本は開かれている。……あれ、こいつ読んでないな? もしくは読んでいるが目にも頭にも入ってないような状態か? 無表情で無感情だから判断が難しいところであるが、どうもそんな感じに見受けられる。

 ふむ、もう一度攻めてみるか。

「長門は可愛いな? なんで他の奴らはこれに気付かないんだろうな?」

「…………」今度は本を持っている親指が一瞬震えた。微動だにせず読んでいるためか、ほんの少しの反応がわかりやすい。なんか可愛く思えてきたぞ。あれだ、自分を洗脳してそう思い込むように努力をするとだんだんそういうふうに見え始めるというやつである。

 しかし長門は本当にどこから見ても美少女だからな。あの朝比奈さんにも負けず劣らずと言っていいだろう。性格はともかくとしてな。

「……なに?」

 と本に視線を向けたまま長門は一言だけ呟いた。うん、無感情の無表情だが、行動に少しだけ感情が垣間見えるようになってきたぞ。それは俺に視線を合わせないというやつだ。いつもなら無感情で無表情ながらも俺に視線を合わせるはずなのだ。これはもしかしたらアレだろうか。好感度上昇中ってやつなのかね。いや待て待て、冷静になれよ俺。恥ずかしがって視線を合わせないようにしてるとか、あまりにも都合の良い解釈だと思わないか? ああ、長門が恥ずかしがるとかどうやって証明するんだね? そしてそこまで考えたところでふと気付くことがある。

 今俺たちは二人きりであるという事実だ。この部室には俺と長門しかいないのである。しかも今は昼休みであり教室からは賑やかな喧噪が飛び交っているはずである。だというのに、俺と長門の間には会話がほとんどなく、あるのは沈黙のみである。これってもしかしてアレじゃないのか? まああり得んとは思うが、良い雰囲気とかになったりしたら、なんかスキンシップとかし始めるとか、そんなフラグだったりするか? いやまああり得んとは重々わかってはおりますけども。

「……」長門は本に視線を向けているが、本のページは全くめくられなくなってしまっている。さて、これをこちらの都合の良い解釈で表すと、一言で、照れていると。はい、ありえんな。でもだ、もし仮にだぞ、長門が俺を好きだとしたら、こんな反応をするかもしれないじゃないか。あくまで仮定の話だが、それでも俺が長門に好かれていたら、こういう風な態度になるんじゃないかと思っただけだ。まあ俺は長門との接点はほとんどないし、嫌われてはいないだろうが好かれてもいないだろうし、仮に好かれていたとしたら、……どうなるんだ? いや待て、そこまでは考えていなかったぞ? これは想定外である。さてどうするか。これは長門が俺に好意を抱いているというポジティブな前提で、それとも好意がないというネガティブな前提で行動するべきか、何しろ長門には判断材料があまりにも少なすぎるのだ。どちらにしても俺の選択肢はあまり多くなさそうだな。ああまったく困ったもんだ。やれやれだぜまったく。

「……あなたは、さっきから何をしているの?」

 と、相変わらず視線を本へ向けたまま長門がぽつりと申す。おお、ようやく会話らしい会話ができそうである。

「ああ、長門は本を持って読んでるはずなのにページを全然めくらんなと」

 俺が指摘してみると、長門はページをめくる。そこで俺は長門にまた言ってみる。

「さっきのページ、なんて書いてたんだ?」

「あなたに言う必要はない」と無感情で冷たい返答が返ってくる。うーん、ちょっと冷たすぎやしないかね。もうちょっと優しい対応はできないものかねえ。

「いやさ、なんか少し気になってな。教えてくれないか?」と、俺が頼んでみると、長門はページを一枚戻す。あ、こいつさっきのページ読んでなかったぞ。ということはだ、長門は少なくとも本の内容が頭に入らないような状態だったということである。ならばちょっと攻め方を変えてみるか。

「お前はよく観察すると、行動が可愛いな?」

「……」長門は無反応。相変わらず本に視線を向けているが、ページが一枚戻ったままそこから動く気配がない。いや待てよ? これはある意味反応なのではないか? よく観察しないと絶対に気付けないものではあるが、一応リアクションの一部として見られる。それは本に視線を向けているのに、ページを一向にめくる気配がないというものである。これが意味することは、やはり俺の想像通りということなのだろうか? いやいやいやそれは早計というものだろう? ここでいきなり結論を出すというのは時期尚早というものだ。もう少し様子を見ようじゃないか。それからでも遅くはない。ただまあ現状から判断する限り、どうやら俺の推測はかなり正鵠を射ているようだけどな。

「お前はよくみると、肌が綺麗だな?」俺は長門の横顔を観察してみると、その通りに肌がきめ細かいのである。そして白いのである。白いが血色が悪いというわけでもなく、まあなんというか、一言で表せば可愛いのである。なるほどそういうことだったのかと納得できるものだ。というか今まで気付かなかった自分の馬鹿さ加減に呆れるぜ。まあここまできたらもう確定的だろうがな。というか他に理由が見つからないんだがな。そもそも長門みたいなタイプは俺の趣味ではないはずだしな。では何故にこんなに可愛く思えるんだろうねぇ。不思議ですなあ。これはあれだ、ハルヒがいきなり言い出した『長門にちょっかいを出せ命令』のおかげであろう。

「あなたはわたしにエラーを起こさせる」

 長門が呟くように口を開いた。

「うん? どういう意味だ?」思わず訊き返してしまった。

「あなたと話しているとわたしの処理速度が遅くなる」

 ふむ、これを好意的に解釈すると、長門は俺からこんな感じで可愛いやら肌が綺麗やらなどの言葉をかけられると、処理速度が低下するような状態となると。長門ほどのヒューマノイド・インターフェース、TFEI端末の処理速度が低下するような原因を、インパクトを俺が与えたということとなる。あれ、俺ってわりと凄くないか?

「……あなたと話をしていると、胸に異常が起きる」

 無表情で淡々と告げるその言葉を聞いた時、一瞬俺の思考回路が止まった気がした。

 胸に異常とは? これは好意的な解釈をすれば、そっくりそのまま俺から可愛いやら肌が綺麗やら言われると心臓がドキンとしますよ的なことになるが、否定的な解釈であれば、あなたと話すと恐怖心で心臓が変な鼓動をしますよと。さて、これはどちらで解釈するべきか。いや待てよ? よく考えてみると、今までこいつが恐怖に震えるようなところを見たことがあるか? 朝倉涼子の時もそうだ。俺を庇って体を貫かれても、長門は恐怖心など全くなかった。さも当たり前のようにあの場は淡々と作業するかのように振る舞っていたのである。ということはだ、俺に恐怖心を抱いて心臓が変な鼓動をするという方向の可能性はゼロではないが限りなく低くなるということだ。

 おい待てよ? ということは、俺に対して好意的に心臓がドキンとして胸が痛いということになるんだが、これは合ってるのか?

「ひょっとしてだが、俺に好意的な感情を抱いてくれているとか、そんなわけないよな?」

 恐る恐る訊いてみたところ、しばらく沈黙した後でポツリと一言だけ返事が返ってきた。

「……わからない」

 ああそうかいそうかい、わからないのかそうかい。なら安心だよ。お前がそんなわけわかんない機能持ってたら困るからな。まあでもそうだな、仮にその機能がお前に搭載されていたとしたら、改変された世界の長門とこの長門は中身が一緒ということになるしな。

「俺はだな、ハルヒから俺がお前にちょっかい出して、お前の感情を引き出し無口なお前をもうちょっとこう、人間味を引き出せみたいな感じで命令されたわけよ」

「そう」とだけ返事があった。おいおい頼むよ本当に勘弁してくれよな? そんな無表情で機械的に返事されてもこっちが不安になるじゃねえかよ。もっと感情を込めて欲しいもんだぜまったくよお。まあいいや、とりあえず俺もこれ以上突っ込むのはやめておこうじゃないか。うん、それがいい。と思ったが、もうちょっと言うことがあったんだわ。

「最初は指令通りに長門に渋々ちょっかい出すような感じだったんだが、いざちょっかい出して色々観察してみると、無表情無感情なわりにはお前の行動はなんだかコミカルで可愛くて魅力があるなと」

「……あなたはわたしを買いかぶりすぎている」

 無表情のまま抑揚のない声でそう言うと、視線を下に向けたまま口を閉ざしてしまう。そして相変わらず本を開いてはいるが、ページが全くめくられていない。

「……長門、本を読まないのか?」

「あなたがわたしの読書の邪魔をしている」

「邪魔というと?」

「話しかけないで欲しい」

「いや待て、お前はいつも俺から声をかけられても淡々と一言で返事をするものの、読書は続けていたではないか」と俺は普段のSOS団の部室でやりとりした記憶を元に指摘してみると、案の定である。長門は小さくため息をついた後で言った。

「本の内容に集中することができないので迷惑している」

 ……ん? 以前は俺から話しかけられても本の内容に集中することには支障がなかったけれども、今は本の内容に集中することができないほどの状態に変えられてしまっているほど内部でインパクトが起きているということか? あれ、これってあーもー鬱陶しいとかそんな感情だったりする? しちゃうのか?

「長門は俺のこと嫌ってたりするか?」

 思い切って訊いてみたら、長門はしばらく考え込んでからこう言った。

「わからない」

 ふむ、わからないと。とりあえず俺のことが嫌いというわけでもなく、あーもー鬱陶しいなこの人はなどと思われているわけでもないらしい。つまりだ、これは好意的な方向で集中できなくて迷惑していると解釈するしかなくなってしまうじゃないか。そうじゃなければわからないとかじゃなくて、正直鬱陶しいとかそんな感じの言葉が出てくるはずだろ? 違うか? いやわからんけどさ。しかし何だろうなこの感情は。今までこんな感覚になったことはあまりないような気がするぞ。この気持ちを表す言葉は何だろうな。えーとまああれだ、多分これは嬉しいんだろうなきっと。俺は今猛烈に嬉しくなってしまっているんだと思われるぞ。だってそうだろう? 俺は長門から好意的なものを抱かれてるということだぞ? そんなの今まで全く気付かなかったよな? いや気付いていなかったんじゃないな、気付かないフリをしていたんだ。それはなぜかといえば、俺が長門を苦手としているからだ。だから俺がこいつに何かしてやるなんて行為はもってのほかであり、こいつは俺にとって苦手な存在であるわけだ。しかしその俺がいつの間にかこいつの行動観察をして考察しているのだ。それもこれもハルヒが俺に長門へちょっかい出せという命令をして、俺が実際にちょっかいを出してみて、無表情無感情だが長門の些細なリアクションが可愛いと感じてしまったからである。あ、やばいぞこれ、気づいてしまったじゃないか。自分が何を思ってこんなことをしているのかを自覚することほど恥ずかしいことはないぜ? 俺の気持ちを素直に認めるとするとだな、俺がこいつに対して抱いている気持ちは何だろうかと考えるとしよう。こいつを苦手だと思っていた頃の俺と今の俺はどこが違っているんだろうかね。どう違って何が変わってしまったのかと考えてみるとさ、結局同じなんだよな。ただひとつ言えるのは、長門は無表情無感情だけども、些細なリアクションから何を考えているのかを推測することは可能だということである。しかもそれを推測していくと、何故か俺に好意的なものを向けられていると。そんな事実を知ってしまうとですよ、俺の中にある長門の印象が変わってしまうわけだ。あーあなんだこれ。どうしてくれるんだよこの気分は! 今まで知らなかった自分の気持ちを知ることができるってのは嬉しい反面怖くもあるわな。今まで知らずにいた方が良かったかもと思う時が来るかもしれないだろ? しかし知ってしまったものは仕方がないし、後戻りできないところまで来ている気がする。今まで気にしていなかったことが気になるようになったりするわけよ。あれだよ、要するにラブコメに発展しちゃうというやつだよ。

「ところでさっきから開いている本の内容がちょいと気になるんだよ」と俺は長門の肩越しに本を覗き込もうとすると、長門はほんの一瞬ピクッと震えた。気にしなかったらわからないレベルの反応であるが、俺はさっきから長門の行動観察を続けていたことにより感覚が鋭敏になっているのか、見逃さなかった。好意的なものを抱いてなければ、普通こんな顔を近付けるような行動をすると離れようとするよな? だがこいつは一瞬ピクッと震えるだけで離れようとはしないと。

「へー、もっと難しくて堅苦しいものを読んでるのかと思ったら、ライトノベルかよ」と俺は横目で長門を確認しながら本の内容を言ってみる。俺は長門の肩越しに本を覗き込んでいるため、俺の顔のすぐ横には長門の顔があるわけである。これはつまり息遣いが聞こえるような距離ということである。まあ当然と言えば当然だが、結構静かな呼吸音だ。

「これはラノベではない」

 無表情無感情の声が耳元で聞こえた。吐息混じりの小さな声だ。

「でもそれ、俺は読んだことあるやつだぞ。『新妹魔王の契約者』って。アニメにもなったやつだよな?」

「違う」本を開いたまま微動だにせず、長門は否定をする。いや、否定されても内容読んだらすぐにわかるんですが。……ああ、これはあれか、頭の中でエラーが起きまくっててとりあえず否定の言葉しか出ないような状態ということか? いや待て、そのエラーとはあれか、俺がこうして長門の肩越しに本を覗き込んで、顔と顔が近いからエラーが起きたとか、そんな都合の良い解釈しちゃっていいのかな? しかしこれが一番説得力のある答えだと思うんだけどな。うんそうだそうに違いない。だってそうじゃなきゃ俺はただの思い込みが激しいやべえ奴になってしまうじゃないか。ああもう俺らしくない俺になりそうで怖いわ。

「お前さ、さっきから本のページ全然めくらないじゃないか。次のページ開こうぜ?」と言いつつ俺は肩越しに覗き込みながら長門が持っている本のページをめくる。すると若干長門の指に触れる。長門は相変わらず無言であったが、少し体を強ばらせたように感じた。俺はさらにページをめくる。また指が触れる。長門はさらに体を固くしたように見える。

 うーん、やっぱ長門は面白い反応をするよな。無表情無感情だが、凝視しないと見逃すようなほんの僅かなリアクションをすると。こういうのを発見すると、なんかいじくり回したい気分になるんだよな。あれ、これってよく考えたら、俺、長門のことを理解しちゃってないか? だってそうだろ、こうやって肩越しに本を覗き込んだ上に、指が触れるようにしてページめくっても、こいつは嫌がるそぶりがないと、むしろなんか捉えようによっては面白くて可愛い反応をしていると、それをわかってしまっているこの状況は、どう考えても長門のことを理解してしまっているような気がするんだが。

「……あなたはわたしを困らせるのが好き」

 長門は抑揚のない声でそう言うと、本に視線を落としたまま微動だにしなくなる。

 待てよ? 俺が長門を困らせてるということは、長門は俺の行動で困っているということか? 嫌がるのではなくて、困ると。困るということは、嫌がっていないと。嫌がっていたら、困らせるのが好きとは言わずに嫌がらせるのが好きと言うはずである。嫌がっていないということは、好意的な方向で困っていると。あ、やばい、また気付いてしまったではないか。しかも気付きたくなかったことに気付いてしまったというかなんというか。

「お前は俺に困ってるのか?」

「困るという定義付けができない」

「そうか」と言って俺が本を覗き込むのをやめると、ようやく長門は視線を上げて俺の方を見たのである。

「ところで長門、お前はなんで俺が顔を近付けたり、指にほんの少し触れたりするとエラーが起きるんだろうな? 感情がないはずなのに不思議だな?」

 俺は自分でも何を言っているのだろうと思うようなことを言ってしまった。いや待て落ち着け、落ち着くんだキョン。聞いているのかいないのか、長門は無表情無感情でこちらを見ている。

「お前の感情が本当にないのなら俺が何をやっても無反応なはずなのに、息遣いが聞こえるくらい顔を近付けたり、指をほんの少し触ったりすると、何故か体をほんの一瞬硬直させる上に、本の内容が全く頭に入らなくなるくらいエラーが起きると。はて、何故だろうな?」

 俺はとりあえず適当なことを言ってみた。しかし自分で何を言ってるんだろうと思うが、まあ確かにその通りだしな。うん間違いないと思うよ? いやまああれだ、ちょっと気まずくなった雰囲気を変えるために適当なことを言っちゃっただけなんだけどさ。

「わたしがあなたに対する意識調査によると、あなたの行為によってわたしは何らかのデータを得た可能性がある」

 俺の発言に対しての返答なのだろうか。今までずっと沈黙していたくせに、いきなり饒舌になったじゃないか。それに今の言い草だと俺の行動がきっかけになって新たな情報が引き出されたということになるよな? え、それはどういうことだってばよ? おい、まさかだが、好意的に思うというデータが新たに追加されたとか、そんなご都合主義的展開になったりしないよな? いや、まさかな。ははは。

「で、そのデータってなんなんだ?」

「……わたしにもわからない」

「そうかそうか。なら俺がそのデータを紐解いてみたら面白い結果になるんじゃないか?」やばいな、いつの間にか長門の新たに得たデータに興味が湧いてきてしまったぞ。

「そのデータの断片的な情報でもいいから、ちょっとこっそり教えてくれないか?」

 おいおいなんなんだよ俺は。これじゃ俺が長門に気があるような感じになってないか?

 すると長門は俺を凝視するような感じで言ったのだ。

「あなたがわたしの身体に触れようとする度にエラーが出る理由はおそらく不明のままで終わる可能性が高いと思われるので説明できない」

「……」

 はいきた! きました! 来ましたよ! もう自分で言っちゃってるだろこれ。俺が体に触れようとするたびにエラーが出るって。もうあれだろこれ、体に触れようとしたり顔と顔の距離近いと胸がドキンと痛くなって、何も考えられなくなるってやつで確定じゃないか。これは俺が長門を開拓してしまったということで間違いなくなってしまうんだが。

 ああやっちまったなあ。でもここまで言われちゃうともう後には引けないよな。引いちゃいけないよな? ここで引いたら男が廃るってもんだ。しかしどうやってこいつにそのことを伝えるべきかね。ストレートに伝えていいもんかどうかわからんしなあ。こいつの口から直接言わせたいところではあるが、聞いてもどうせわからないの一言で済まそうとするだろうし、俺がレクチャーしてやる以外にない状況じゃないかこれ。まったくとんでもないことをしてくれたもんだぜ。もし俺の勘違いだったら赤っ恥どころか社会的地位まで失ってしまう大惨事だぜこれは。そして俺は一生後悔して生きていくんだろうな間違いなく。まあそんな先のことは置いておいて、今は目の前にある問題を解決すべきだろう。まずはこの無口無表情系女子に自覚させることだな。

「つまりだ、俺が顔を近付けたり、手に軽く触れると、胸に異常が起きて頭脳にエラーが起きると、そういうことか?」

 俺が尋ねると、長門は小さく頷いた。

 よし、言質を取ったぜ。これで俺の推理が当たっている確率が高まったというわけだ。あとはこいつの反応を待つだけか。さてどんな返事が返ってくるかな?

「わたしにとって未知の症状であるため、対処法が解らない」

 なるほど予想通りの回答だな。では、次はこの手で行ってみようか。

「例えばだ、俺がお前の手を握ると、お前は嫌か、それとも握られても別にいいと思うのか、どっちだ?」

 言ってみてから思ったが我ながら凄いこと聞いちゃった気がするな。まあいいさ。別にセクハラとかそういうんじゃないからな。たぶんね。

「あなたに触れられることを不快に感じたことはない」

「ふむ」と相槌を打ちながら俺は考えたね。どうやらこいつは俺が触っても不快感はないらしい。おい、これってつまり、俺から手を握られると嫌じゃないということなんですがね。嫌じゃないということは、俺から手を握られると好意的な方向の何かが湧いてくるってことになるんだよ。こいつはそのことを理解してるのかね? きっとわかってないんだろうなあ。だって長門だもん。

 しかし長門にも何か思うところがあるらしく、こんなことを言ってきた。

「あなたがわたしの手に触れた時にエラーが発生したことがある」

 おや? これはもしかしてもしかすると脈ありかもしれんぞ? いやいや落ち着け俺。冷静になれ俺。

「それはあれか、手に触れられると胸が痛くなって思考回路が一瞬止まるというやつか?」

「違う」と長門は首を振った。

 違うのかよ! じゃあどういう時に出るんだよあれは。俺もう完全に脈アリだと思ったんだぞちくしょうめ。いや待て落ち着こう俺。こいつが自分からそんなことを言うわけないじゃないか。きっと俺が勝手にそう思い込んだに違いないぜ。なんせ相手は長門だしな。認めたくなくて敢えて違うと言っている場合もある。長門は人間ではないが、人間にはカリギュラ効果ってものが存在するからな。要するにやれと言われるとやらない、図星を突かれると慌てて否定するという効果だ。

「そうか、なら手を握ってみて確かめてもいいか?」

 長門は少し迷ったような顔をした後、小さく頷いた。俺は長門の手をそっと握った。やはりというかなんというか、何も起きなかった。いやむしろ起こらなくて良かったんじゃないのかと思い始めた頃である。俺の手を握らせたままの状態で長門が俺にこう言ったのだ。

「エラーが発生しなくなった」と。

 ん? なんだそりゃ? どういうことだ? あれか? 俺の手を握るまではエラー起きてたけど、いざ握ってみたらエラーが起きなくなった=心臓ドキンのインパクトが落ち着いたとか、そんな感じか? それは都合のいいポジティブな解釈をすると、俺の手を握って落ち着いたということとなる。これが意味することは、つまり俺の手を握ることによって新たに開拓されちゃったとか、そんな感じになるわけである。うわあなんか照れるなオイ。

 まあそれはさておきだ。とりあえず長門の手を離しておこう。いつまでもこうしてるわけにはいかないもんな。手を離すとき、ちょっと名残惜しかったけど、そこはぐっと我慢するわけよ。

「それじゃ本当にエラーが起きないのか、もう一回試してみるか」と俺はまた長門の肩越しに顔を覗かせてみる。すると、やっぱりこいつは体を硬直させてから本を閉じ、俺の方を向くのである。それで俺と目が合うとすぐに本に視線を落とすのである。そしてまたしばらくすると俺の方を向く。……うんわかったから、そんなに何度も確かめなくても大丈夫だぞ。大丈夫っていうかもう既に確認済みだから。

「エラー起きてないのになんでそんな体を一瞬ピクッとさせるんだ?」

「……あなたの行動が原因と考えられる」

「いや原因も何もないだろ。お前は単に緊張しやすい性格だったってことじゃないのか?」

「そうとは思えない」

 うーん、もうあれだわ。俺に好意的な感情持ってて、俺の息遣いや体温感じられそうな距離に来られると、俺のことを意識したり想像したりして胸がドキドキしてエラーが起きてるって確定なんですけど、これをどうやって理解させるかなんだわ。まああれだ、さっきはつい調子に乗って手を握り続けてしまったわけだが、あの感触はよかったです。とても柔らかくてすべすべしてました。ええそれはもう最高でしたよ。しかも俺の手を握ったまま放そうとしないんだもん。おかげで俺は、しばらく幸せな気分に浸ることができましたよ。ああ、これを理解してないまま無意識にしてしまう長門って、ある意味やばいんですが。天然ですかこの子は? それとも狙ってやってます?

「ひとつ聞くが、俺の手を握って落ち着いた気分になったりしたか?」俺が訊くと長門はやはり無言で頷いた。そうかそうかそれは何よりだ。俺も幸せだよ。

 だが、俺は今ふと思ったわけだよ。こいつってもしかしたら無意識下でも俺の事を意識してたりするんじゃないだろうかとな。その可能性を検証するには実験あるのみだが、さてどうしたものかなと考えを巡らせていると、あることを思いついた。

「長門、例えばだが、お前は俺から抱きしめられたらどう思う?」

 俺が質問すると、長門は俺の目をじっと見てきたのだ。おいおいそんな真っ直ぐ見つめられると困るじゃないか。顔が赤くなってるのが自分でもわかるくらい熱くなってきたぞ畜生め。なんて考えてる場合じゃないんだよな今は。頼むから返事をしてくれよ。こんなことを聞いた俺がアホみたいである。しばらくしてから長門は答えた。

「あなたと密着するのは不可避であり、回避は不可能と考える」

 あ~あ、ですよねー。抑揚のない事務的な言い方だけど、これ遠回しにあなたに抱きしめられたら逃げることはできませんって返答してるようなもんなんだよ。逃げることはできないってことは、受け入れちゃうよと。そういうふうに捉えることも可能なわけですよ。さあどうする俺? これでもう逃げ道はないぞ? いやもうとっくに退路断たれてたけどね! そんなことを考えつつ、俺は試しに言ってみたわけだよ。

「じゃあ抱きしめても良いな?」と俺が両手を広げて近寄ると、こいつは何も言わずに立ち上がったのでそのまま抱きしめたってわけさ。そうしたらこいつ抵抗もせずされるがままって感じでさ。抱きしめている間も一切身動きしなかったんだよね。まあさすがに力入れすぎたら抵抗するだろうけどさ。それくらいの分別はあるからね俺だってさ。

 それにしても柔らかい体してるよなこいつって思いながら、離れようとすると、こいつの腕が俺の背中に回されてきましてですね。そして小さな声でこう言ってきたんですよ。

「……あなたと一緒にいると落ち着く」とね。これはもう完全に告白に近い何かじゃないかと思うんだが、どうだろうね? というわけでだな、ここは一つ返事としてだな、俺もお前が好きだと言ってみようかと思うわけなんだよ。だがそれを言ってしまうとだな、ハルヒが言ってた、ちょっかいは出しても変なことはするなという言いつけを破るような、変なことをやっちまいそうな雰囲気にひょっとすると、万が一の確率でなってしまう可能性があるわけだ。変なことをやっちまいそうな雰囲気になってもいいかなと、一瞬思ってしまったが、もしも変なことをやっちまった事実をハルヒに知られてしまったら、世界が崩壊してとんでもないことになる可能性大なんです。俺の人生が終わることよりも、世界の崩壊が恐ろしいのです。しかしですよ、この気持ちを言葉にして伝えるにはタイミングというものが大事なわけでしてね。こんないいシチュエーションをスルーしちゃうってのは男の沽券に関わる行為であってだね、そんなことを俺ができるはずがないだろう? だから俺は言ったんだよ。

「長門、俺もなんだか落ち着くような気がするわ」

 ってね。そしたらこいつは何て答えたと思いますか?

「嬉しい」だってさ。

 え? なに? なんだって? 声が小さくてよく聞こえなかったんだが、俺の耳がおかしいのかな? もしかして幻聴だったりしますかね?

「……あなたも同じ」とか聞こえた気がするんだが、いや、言ったよ、言っちゃったよ、これもう、都合の良い解釈をすると、好きって言っちゃってるよ。やべえよハルヒにバレたら世界が崩壊フラグだぞこれ。しかし長門は続ける。

「あなたに抱きつかれると胸が温かくなる」

 ああそうですか、そうなんですか。胸が温かくなるんですか。これは物理的に接触して熱が篭るから温かくなるのか、それとも都合の良い解釈をすると心が温かくなっちゃってるのか。俺は後者だと思いたい。

 俺はハルヒの命令通り長門の無感情無表情を少しわかりやすくするだけのつもりが、あれ、どうしてこうなった? まあいいや、とりあえずはあれだ、都合の良い解釈をすると、長門はどうやら俺を異性として認識してくれたようだから良しとしようじゃないか。これからいろいろ解っていくこともあるだろうし、少しずつ攻略していくしかないなこれは。まあまだ時間もあるし焦ることはないだろ。たぶん大丈夫だと信じたいもんだ。

 すると、長門は俺を見上げて見つめ始めるんですよこれが……。しかも頬に朱がさしてるような気がするんですよ。これが俺の思い込みと都合の良い解釈でないとすると、なんかキャラ崩壊してる気がするがどうなんだこれ。そんな表情されたらこっちも恥ずかしくなってくるじゃないかまったくもう。このままずっと抱き合ってるのもどうかと思うし、俺はそろそろ離れたほうがいいんだろうかと思い始めた時である。

部室のドアがノックもなしにいきなり開かれたのである。そこには朝比奈さんが立っていた。

「きょ、キョンくん、長門さんと何をしてるんですか……?」おっと。誤解されるような行動は慎まねばならんぜ。俺は長門を離すと、

「ああいや、ちょっとこいつの無表情無感情を少し改善しようというハルヒの指令をですね」と説明した。

「あの、抱きしめ合ってましたよね……?」「それは違います!」

 そうなんだよ、長門の無表情無感情をどうにかしようと無理矢理会話をしていたらいつの間にかこんなことに。だからこれは違うのです。別に好きでやってたわけではないのですよ。むしろやらされた感満載である。本当ですからね? 信じてくださいよ? すると、何故か突然涙ぐみ始めた朝比奈さんを見て、俺は慌てたのだった。

 後日、SOS団の部室にて、

「キョン! 有希が全然変わってないじゃないの! あんた何やってたの!?」と怒り狂う団長様がいらっしゃいましたが、それに対して、俺はこう答えるしかないのである。

「いや、俺から見たら相当変わったんだがな?」

「はあ? どこが? あんた頭沸いてんの?」

 長門にちょっかい出せとかいきなり言い出したお前に一番言われたくないセリフである。

 長門とあんなことをしてしまったことは、朝比奈さんは見なかったことにしてくれたようだし、無表情無感情で無言を貫く長門からは漏れることはなかった。

   了

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長門有希の開拓 箱枝ゆづき @yuduki-hakoeda

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