第2話 俺は、彼女らの部活動の正式なパシリになった…?
「はああ、はあー、はあ……」
「これ、意外とキツいよね」
「そうだな。でも、あともう少しだから」
「はあ……もう、辛いっていうか……」
学校から少し離れたマラソン場を走る四人。
ポニーテイルの楓音。
ツインテールの紬。
ショートヘアの世那。
ロングヘアの弓弦葉。
彼女らはランニング部という活動の一環として走る練習をしていた。
「ねえ、パシリ? なんか、買ってきて」
マラソン場を走っていた
「何かって、なに?」
「飲み物に決まってるでしょ」
「用意していなかったの?」
「してたの」
強い口調で言い、楓音が近づいてくる。
睨まれている状況でかつ、湊はパシリの存在。
大きな意見などできるはずもなかった。
「私らはね、一応、水筒とかを持ってきたんだけど、飲んで、もうないの。だから買って来てって言ってんの」
「お金は?」
「は? そんなのないわ」
「え? 部費は?」
「あるけど。今日は、あんたの金で買ってきなさい」
「本当に、俺の自腹?」
「そうよ。それとも、私らの裸を見たこと、学校関係者全員に広められてもいいの?」
「それは……嫌というか」
「でしょ? だったら、今から行って来て」
「は、はい」
「早くね」
楓音から罵声のようなセリフを吐かれ、湊はしょうがなく、その場から立ち去るように、自販機のあるところまで向かった。
「はあ……」
疲れると思った。
湊は、マラソン場から少し離れた所にある自販機前に佇んでいる。
パシリの状態になってから一時間が経過していた。
爆乳な彼女らが在籍しているマラソン部は、陸上部がない代わりに存在する部活。
この学校では昔、陸上の競技とかで怪我をする人が絶えなかったこともあり、マラソンをするという活動方針に変わったようだ。
「それにしてもデカかったな……」
マラソン部の所属している四人は全員爆乳であり、走るだけでも、その豊満な胸が揺れ動くのである。
目の保養にはあるものの、楓音の存在は厄介すぎると思った。
あたりが強いというのもあるのだが、相当敵意を向けられているのだ。
こんな恵まれた環境であっても、精神的に辛くなることの方が多い。
「まあ、購入するのは、これとかでいいか」
湊は、制服のポケットから財布を取り出し、自販機にお金を入れ、五つほど購入したのだ。
一応、自分の分も購入しておいた。
「ねえ、一旦、休憩にしない?」
「そうだね。あああ、疲れた……」
世那先輩の発言に同意するように、
「……やっぱ、私。もう一回走ってくる。皆は、休んでていいから」
世那先輩に言われた三人は頷き、休憩に入るのだった。
「というか、あの変態。帰ってくるの遅くない?」
「変態って、そういう言い方はよくないと思うけど……」
楓音は、湊のことをディスっているが、
「というか、あんたはさ。あいつの幼馴染かもしれないけど。私からしたら、ただの変態だし。というか、よく、あんなのと、幼馴染でいられるよね」
「だって、そんなに悪い人じゃないよ?」
「……もしかしてさ。あいつのこと、なんか気に入ってんの?」
「え? 違うよ。そういう意味じゃないけど。ただ、昔っから一緒にいるし。そんなに、湊の悪口を聞きたくないというか。そんな感じ」
弓弦葉は頬を赤く染め、焦った感じに、説明を口にするのだ。
「ふーん、そう。そうなんだね。というか、そんなに仲がいいし、付き合ってると思ってたけどね」
「そ、それはないかな……」
弓弦葉は、楓音に対し、俯きがちになり、声が小さくなっていた。
「ん? あれって、湊? というか、今になって戻ってきたの? 遅いんだけど」
湊の姿がマラソン場に現れるなり、急かそうとするのだ。
「ごめん。ちょっと時間がかかってさ。というか、最初に言っておくけど。このジュースは、俺の金で買ってきたから。大切に飲んでよ」
「ふんッ、そんなことより、さっさと渡しなさい」
楓音は強引に、湊が持っていたジュースを一本だけ手にする。
そんな中、湊はあることに気づく。
「……」
湊はサッと、視線をそらしたのだ。
「どうしたの、湊先輩?」
後輩の紬が近づいてきた。
「いや、なんでもないよ」
「なんでもないって、どういうこと? って、これジュース? 貰ってもいい?」
「ああ、そのために買ってきたわけだしな」
「ありがと」
紬はお礼を言ってくれる。が、楓音はそうではない。楓音の態度を振り返るだけで、イラっとしてしまった。
「私も貰ってもいい?」
弓弦葉が歩み寄ってくる。
「いいよ。どれがいい?」
「えっと、お茶でいいかな」
彼女は控えめな感じの飲み物を手にする。
元々、湊が飲みたくて購入したものだったが、まあ、いいやと思う。
彼女らは、手にしているジュースを飲んでいる。
それはいいのだが、一つだけ気になっていることがあった。
その疑問は、彼女らの服装にある。
彼女らは、先ほどまでマラソンをしていた。だからこそ、服が汗で濡れているのだ。
結果として、マラソン専用のTシャツの中にある下着が丸見えなのである。
爆乳具合がハッキリとわかり、湊の下半身がどうにかなってしまいそうだった。
湊は極力見えないようにして、やり過ごすことにしたのである。
き、気まずい……。
その場に佇んでいたものの、下半身を隠すために、一旦、近くにあったベンチに座ることにしたのだ。
「はああ……暑いな。あれ? そういや、お前、ジュース買ってきたのか?」
「あ、はい」
そこに
先ほどまで走り込みの練習を行っていたこともあり、少々息を切らしている。
「貰ってもいいか?」
「はい」
湊は手に持っている二本のジュースを見せた。
一応、選ばせることにしたのだ。
スポーツ飲料と、オレンジジュースである。
「じゃあ……どうしよかっかな。だったら、オレンジジュースの方で」
「え。こっちですか?」
「ああ。もしかして、オレンジの方がよかった?」
「俺はどっちでもいいんで」
「そっか。じゃ、貰うな」
世那先輩は、ジュースを手にすると飲んでいたのだ。
「そういや、お前、汗かいてないか? これで拭けば」
「あ、ありがとうございます……」
先輩はポケットから取り出した、そのハンカチのようなものを強引に渡してきたのだ。
湊は頬を拭くことにした。
「……ん? なんだこれ」
普通のハンカチとどこかが違う。
どこか、頬に違和を感じ、それを顔から離し、まじまじと見てみる。
「……ピンク色? って、これ、パンツ⁉」
「え、あ、ごめん。間違って、持っていたかも」
「間違ってって。これ、ヤバいんじゃ」
楓音のだったら面倒だ。
けど、あの楓音がピンク色なんて履かないと思い、ひと段落していると――
「ねえ、ちょっと、変態ッ、な、なんで、それ持ってんのよ」
楓音は強気な態度で歩み寄ってくる。
「え?」
「え、じゃなくて……あああ、なんでこうなるのよ。というか、それ、私のだからッ」
楓音は、湊が持っていたパンツを強引に奪い。頬を真っ赤に染めた彼女は、湊を睨みつけた後、再び、ランニングを始めるのであった。
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