添い寝

私の唇を紗羅が撫でる。


「ほら、やって」


そう言われてキスをした。


めいちゃん、上手」


そう言って、髪を撫でられる。


私のパジャマのボタンを紗羅が外す。


「命ちゃん、さわって」


紗羅は、自分の胸に私の手を持っていく。


キスをしながら、さわってあげる。


お酒を飲み過ぎてるせいか、急に酔いが回ってきたのか


しん」って呼ばれた。


その時は、兄さんを呼び捨てにするのを知っている。


何度も聞かされた。


「命ちゃん、ここほらすごい」


兄を感じているのは、わかってる。


それでも、紗羅が慰めて欲しいと言うならしてあげたいのだ。


「神ッッ」


やっぱり、神でしかないのだ。


私は、紗羅と向き合うのをやめた。


後ろから、紗羅を抱き締めた。


神を感じさせてあげよう。


求めているなら、答えてあげなければ…。


「しんッッ、しんッッ」


向きをかえただけで、出す声は兄の名前に変わった。


涙が流れる。


肩を優しく舐めてあげた。


ピクッと体が跳ねる。


「しんッッ、愛してる」


よかったね。愛されてるよ、兄さん


背中に舌を這わせた。


「しんっっ」


兄を想って、果てた。


悔しくて、辛い。


気持ちまで、知られた今


私は、紗羅を慰める人形にすぎないのだ。


紗羅は、私に向き合った。


「命ちゃん、私もしてあげるから」


そう言って、私のパジャマのズボンに手を入れてきた。


「命ちゃん、本当に私を愛してるんだね」


感じてる、自分が情けなくて惨めだ。


「嬉しい、誰にも渡さない。私だけに、泣いて」


そう言って、涙を舐められた。


情けなくて


苦しくて


辛くて


消えたいのに…。


体は、紗羅の指に快感をえていく。


それが、堪らなく。


空しい


私が、どんどん空っぽになっていくのを感じる。


なのに、紗羅を愛してるのだ。


「命ちゃん、大好きだよ」


キスをされた。


体は、満足されたようだ。


私の胸に顔を埋めて、紗羅が目を閉じる。


「また、やって」


そう言って、眠った。


朝陽に教えてあげよう。


相手に気持ちが、バレた時の方がバレてない時より辛いことを


ただ、利用されるのではない。


私は、紗羅に縛りつけられるのだ。


嫌なのに、苦しいのに、悲しいのに


心の奥底が、喜んでるのはなぜ?


渡さないって言われて、喜んだのはなぜ?


愛されないのに


愛してもらえないのに


やきもちを妬いてくれたみたいで嬉しかった。


でも、空しさは広がった気がする


愛されない事をわかったうえで、傍にいる。


最初からそうだったのに…。


寝れない。


酒、飲もうかな


起こさないように起き上がった。


パジャマを整えて、一階の自分の部屋の冷蔵庫を開ける。


500ミリのビールを2本取り出して上がった。


ビールを飲みながら、スマホを見てた。


[悪いけど、一週間帰らない。女が、泣いてる    神]


[どういう意味?]


[紗羅を愛してんだろ?一緒に居てやって]


[また、浮気してんの?]


[いいだろ?金あるんだから浮気ぐらい。]


[紗羅を大事にしてやれよ]


[してるよ。だけど、今は無理。彼女が大事だから。命に任せるわ。紗羅の事]


馬鹿だな。こいつ


兄さんは、私より4つ上だった。


二年前、兄さんは、21歳の医大生に好かれて付き合った。


そこから何か勘違いが始まった。


もう、これは死ぬまで続く気がしている。


45歳には院長が約束され、お金もある、若い彼女も出来て、妻も子供もいる。


兄さんは、一生遊ぶ気がしている。


ビールを2本飲み干して、シンクに置いた。


私がするのは、この夫婦を繋ぎ止めて置く事なのだ。


ベッドに潜り込んだ瞬間に、紗羅が抱き締めてきた。


「神」


兄さんのかわりだとわかっていても、ドキドキしてる自分に苛立つ。


辛くて、消えたくなる。


だけど、傍にいたい気持ちが強い。


利用されてる、兄さんにも紗羅にも…。

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