第3話 時間遡行と時間停止はチートすぎたw

  神は日記に書いたいつかの運命をもう一度なぞる思っていた。

 事実、それは何回もあったからだ。

 今回も〝失敗″かと思っていた。

 今回は仮面の主として認められずにそのまま閻魔のとこまで送らないといけないなと考えていた。

 一方、彼は考えていた。常に来る刺激に耐えながら意識を別のところへ置く、このまま終わりたくないと彼は願う。しかし時は残酷で時間も残りあと僅かとなった。

 そこで彼は閃いてしまった。〝時間を自由に操れたら″と、彼は神々の禁忌に触れようとしていた。

 それは神々が保ってきた秩序を崩壊させる力。しかし誰にも止めることは出来ない。彼も〝彼女″すら止めることのできない力に彼女は笑い、彼につぶやく。

 時間....時計.....そんなイメージで仮面を構築する彼に声がした。

「いいでしょう。その力を認め、あなたに力の一片を授けます。その力で私を楽しませてね?」

 瞬間、仮面が光り、その形を変える。そしてその白い仮面を着け、言う。

「時よ止まれ!!」

 次に世界が灰色になっていく。見るとタイマーは止まり、今まで続いていた痛みは止む。神は止まっていた。

 今は俺しか動けていないということに驚きながらも不自然なまでに落ち着いていた。

「....やったのか......?」

 俺は白い仮面をまじまじと見つめる。

 すると仮面が独りでに手から離れ地面に着く。俺は「うわっ」と言って驚いてしまった。

 仮面がまばゆい光を発しながら形を変える。目を開けてみるとそこには一人の女神が立っていた。

 神は金髪ながらに毛並みはとても綺麗で目元はくっきりし、あらゆる部分が整いすぎているそれはそれはとてもきれいな女神だった。

「初めまして、私の名は〝クロノスと名づけられました″」

 その発言に違和感を覚えながらも自身の名前を言う。

「どうも.....浦本一輝です」

「存じています。それよりも......」

 彼女は自身の手元にある白い仮面を見つめる。

「まさか、こんな力を作っていたなんて.......あの人には後でたあああああああああああっっぷりと叱らないといけませんね」

 そう言うクロノス様はため息をつくとなぜかニコニコしていた。.....怖い。

「さて、浦本一輝さん。あなたはまだ試練の最中でしたよね?」

 彼女はそう言うと仮面を自分の手へ渡してきた。

「でしたら、今は見届けています。.....終わったら来るので.....ぜえええええええったいに!私の事を言ってはいけませんよ?」

 なにそれ....怖い。はやくもトラウマ回は避けたいので神様には言わないと何度もうなずくとクロノス様はいつの間にか姿を消していた。

「頑張ってね」とどこからか聞えてくる。

 それはこの仮面を想像する際にも聞えたことから今更ながら彼女であることを理解した。

 意識をまだ時間が止まっている空間で考える。出されたお題はシンプルながらも難易度が高い「感情を亡くせ」との事。

 俺は怒りや悲しみ、喜びなど様々な感情を無くすまではいかなくともコントロールすることが出来たらと考えていた。

 しかしイメージは曖昧でなかなか深くまでは構築できない。

 もっと、もっと深くまで、それはまるで果てしない海のようだった。

 彼はうっすらながらに感情を無くすためのイメージを構築していた。

 それはとても暗かった。すべてを飲み込むような暗くて何もない空間、次元。何かは分からない。ただ、言えるのは.......それをうまく使えばできると思った。

 仮面は主の要望に応え、それを取り込み、構築する。

 その仮面はさっきとは真逆の黒の仮面。

 それを着けると止まっていた時間は動き出し、己の頭の中でうごめいている炎のようなものがスッと消えていく。それが感情と分かるのはブーというタイマーの音と同時だった。

 自分は笑っていた。そして泣いていた。感情を消すことは出来たが、それは〝未完成″だった。制限時間ぎりぎりでクリアした反動で仮面の精霊は一時的ながらその力を使えなくした。とめどない炎のようなものが燃えて、そして再び感情は戻ったのだ。

「おめでとう」

 神は静かに、そして短くいうと俺に胸を貸してくれた。俺はしばらくそこで泣き喚いていた。


 すべてが終わると俺は怒っていた。.....なぜなら。

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャイーヒヒヒヒヒヒヒヒ。あんな......あんなに泣くとは.....オホッ......思わなかったわい」

「うるせええええええええ!!いい加減にそれをいじるのをやめろぉおお!!」

 とかれこれ30分はこのままなのだ。

 しかし、俺は気づいた。神が笑っている後ろでニコニコと怖い形相をしたクロノス様が近づいていることに.......。

「ゼーーーーウーーーースーーー?」

「....?.......あ......」

「....って.....え?......ゼウス......?」

 まず状況を簡単に言うと.......ゼウス(神)は青ざめてクロノス様の方を向き、クロノス様は神の名を呼んで物凄く怒っているのか怒ってないのか分からないがニコニコしている。

 かく言う俺はゼウスという名に嘘だろ?といった感じで絶句していた。

 クロノス様は神の頬をつねって。

「あんた!!私の仕事増やさないでって何回言ったら分かんの!?」

「ふぇ?ひゃにをひってふんあ?(え?何を言ってるんだ?)」

 この後二人の喧嘩が始まるのだが俺はただ「え.......?ゼウスが......あれ?」とクロノス様のキャラ崩壊なんてものは気にせず、しばらく思考停止していた。


 ようやく事が収まると神ゼウスは頬を擦りながらため息をつく。

「まさか時間を自在に操る仮面を作るなんて......おぬし、その力があれば、無敵じゃぞ?」

 静かにガッツポーズとナイス俺と称賛を送る。

 するとそこになにやら顔を俯かせた仮面の精霊が現れる。

「.......さま」

 何を言ってるのかさっぱり分からない程ぼそぼそと話していた。

 俺は「?」と首をかしげると。

「主様ー!!すごいです!さすがです!今まで酷いことを言って申し訳ございませんでしたー!」

 と日本古来の謝り方〝土下座″を繰り出して.....ってちょおおおおおおおおおおおおおおおおおっと待てええええええええええええ!!こいつもキャラが崩壊してるってか態度変わりすぎだろ!!。

「ああ、言い忘れておったがそやつは一度主と認めるとこんな風に従順なせいかくになるのじゃ」

 .......にしても変わりすぎだろ......とここにいる奴らってキャラ崩壊多い気がするんだが.....気のせいかな?とクロノス様に視線を送るとただ笑っていた。

「.......主様......そちらの白い仮面の事で申し上げたいことが.....」

 精霊は急に重たげな発言をしてくる。

「何?」

 精霊は冷や汗を出しながら言う。

「〝そちらの仮面は使えません″」

「........え?」

 思わず声に出てしまった。

 クロノス様を見ると顔を俯かせており、それが本当の事だと分かった。

 一方、神はというと「おや」となんとも呑気な顔をしていた。


 それは神々が下した決断。そして彼女は今、選択を迫られていることに誰も気づく奴なんていない。全能と呼ばれた神すらも未知の領域は存在したのだ。それは..........。

 神は日記をもう一度見に行こうと奥へ進む、そして.......彼は.......。

 俺は使えないと聞いた時........この上無いほど絶望していた。

 自身が初めて神の権能をほんの僅かでも使えたことに喜びを感じていたのに........それはもう使えないということに悲しみを覚え、地に手をついて........どうすればいいのか分からず、ただ絶望するだけだった。

 

 

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