かぐや秘め ~カグヤヒメ~

!~よたみてい書

夜闇に輝く竹

 茶髪の女性は肩を縮ませながら夜闇の山道を歩いていき、


「うぅ、ヒカルやっぱり怖いよー」


 ヒカルと呼ばれた黒髪の男性は硬い笑みで周囲を見渡しながら、


「大丈夫だってヒカリ! 滅多に恐ろしいことに遭遇なんてしないからさ! 逆に遭遇したら、俺たちでっかいお土産話を持って帰れるから、むしろ来いって感じだよ!」


 ヒカリと呼ばれた茶髪女性は十代半ばの姿をしていて、身長は約百五十五センチメートル。

 前髪は目の上まで垂らし、後ろ髪はうなじ辺りで切り揃えている。

 目じりは少し吊り上がっていて、茶色い瞳を宿していた。

 上は赤い半袖で、下には紺色のショートパンツを履いている。

 また、首からペンダント型端末をぶら下げていて、胸部にはわずかに膨らみが出来上がっていた。


 一方、ヒカルも容姿は十代半ばに見え、百六十五センチメートル程の身長をしていた。

 後ろ髪はうなじまで伸ばし、前髪は眉の下まで垂らしている。

 黒い瞳をしていて、目じりはやや吊り上がっていた。

 そして、ペンダント型端末を首から下げ、白い半袖を身に着け、黒いショートパンツを履いている。

 

「ヤダよー。お土産話より身の安全を優先したいよー」


「心配いらないって」


 ヒカルは握っていたなたさやから引き抜き、一瞬見せびらかしたらすぐに前方に振り下ろし、薄暗い宙を軽く切り裂いていく。


「何か出たら、これで撃退しちゃうから!」


「えー、でも、お化けに刃物って効くの?」


「俺たちの強い思いがあれば、きっと幽霊にだって効く!」


「だといいんだけど」


「さぁさぁ、そんなに怯えてたらお化けも幽霊もここぞとばかりに襲ってきちゃうよ」


「うん……」


 ヒカルとヒカリは手に持っている灯りで周囲を照らしながら林道を進んでいった。


 すると、少し離れた場所の竹藪たけやぶの中に、薄緑色の淡い明かりを放つ竹が一本生えている。


 ヒカリは光る竹を指さしながら、震えた声で、


「ねえ、あれ、なに?」


「えっ、電灯でしょ!?」


「こんなところに? なんで?」


「そんなの知らないよ! 大丈夫、近づけばたいしたことない事実が分かるから!」


「えぇ、引き返さない?」


「俺たちの灯りを反射してるだけかもしれないから、大丈夫大丈夫」


 ヒカルは強張った笑みを浮かべながら、竹藪の中を進んでいく。


 ヒカリも眉尻を下げながら肩を縮ませて、周囲を見渡しながら歩み続ける。


 そして、光る竹の近くまで移動し終え、安堵のため息をつき、


「よかったー、お化けとかじゃなくて」


「でしょ? ただの仕掛けだって」


 ヒカリは物珍しそうに硬い笑みで光る竹を見つめ続け、


「でも、なんで光ってるんだろう?」


「さぁ? 中に何か入ってるんじゃないかな?」


「何かって、なに?」


「それは……これから調べればわかる!」


「えー、でも、勝手に切っちゃっていいのかな?」


「こんな暗闇で人気ひとけもないんだ、ばれないって!」


「うーん、そうだけど」


「まぁまぁ。じゃあ、るよ。下がってて」


 ヒカルは周囲を見渡し、真剣な表情を作ったら鉈を横に振り、反対側に思い切り振りかぶる。

 それから、明かりが薄い部分を刃が刻んでいく。

 そして、それを数回程繰り返していくと、切断されたみきより上部分が鈍い音を発しながら地面に倒れこんでいった。


 ヒカルは戸惑いの表情を作り、竹の中を凝視しながら、


「えっ、子供?」


「わぁ、綺麗な着物。なんで光ってるんだろ?」


「最新技術が使われてるのかな?」


 赤ん坊は親指を咥えながら二人を見上げる。


 ヒカリは優しい笑顔を作りながら抱きかかえ、


「お人形さんかな?」


「アンドロイドじゃないかな?」


「あ、そっちもあるかー。というか、なんで竹の中に?」


「うーん、何かの実験か、作品?」


「あーなるほどねー。……なんか可愛いから、持って帰っちゃう?」


「まぁ、必要ならこんなところに無防備に放置しないよね」


 ヒカリとヒカルは静かな山道を笑い声を響かせながらくだって行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る