第2話 ドワーフはクラスメイト?
扉を開けると内側に取り付けられた
幸人は内部をざっと見る。家具の類いはなく、奥まったところに低い木製のカウンターがあり、二つのマサカリのアイコンが置かれていた。
「いらっしゃい。マサカリがお買い得だよ」
「それしかないけど。あと、
「それって誰? わたしはドワーフだよ。ここの店主ね」
被っていた緑の三角帽の先端を左右に振って否定した。
幸人は疑いの目を相手の全身に向ける。帽子と同色の厚手のワンピースを着ていた。四宮の特徴である、ふっくらとした体型を完全には隠せていない。
「陸上部で砲丸投げをしている四宮にしか見えないんだけど」
「だから違うって。それより商品に注目だよ。マサカリだよ、マサカリ!」
ほんのりと染めた頬で両腕を広げた。手前のアイコンを懸命に強調する。表情では納得していない幸人であったが視線を下げた。
「これ、微妙に違うな。刃に星が付いた物は切れ味が良さそう。こちらは十字の絆創膏かな。壊れそうな感じがする」
「よく見ているね。用途は見たまんま。邪魔な木を切り倒してショートカットができる優れ物だよ。もちろん買うよね?」
「こちらのコインは九十枚なんだけど」
「十分だよ。マサカリは七十コインだからね」
店主は当然という風に十字の絆創膏のマサカリを両手で押し出す。目にした幸人は慌てて他方を指差した。
「こっちだよ」
「そちらは四十コインだけど」
「値段設定がおかしくない?」
「こっちは重要アイテムだし」
口を尖らせて小声で言った。
「重要なのか?」
「気にしないで。じゃあ、こっちのマサカリでいいんだね」
店主は泳ぐ目で聞き返す。
「少し待って」
幸人は二つのアイコンを見比べる。情報が少ないこともあって考えが纏まらない。
「……最初の、七十コインの方でいいよ」
「お買い上げ、ありがとうございました!」
にこやかな顔に対して幸人はわざと渋面を作る。支払いはアイコンに直接、触れることで済んだ。残りは二十コインとなった。
「また稼いで戻ってくるよ」
「それはどうかなぁ」
幸人は木に覆われた道に改めて踏み出す。
「なるほどね」
木々の間から隣の様子が窺える。道を歩きながら左右の隙間にも注意を払う。
何かを見つけたのか。急に足を止めて隙間へ顔を近づけた。スニーカーのアイコンの一部が見える。マサカリの出番と思いきや、足を速める。右手に折れると長い直線が続く。
幸人は思い切ってマサカリを使用した。異音と共に木は切り倒されてスニーカーのアイコンを手に入れた。更に速度は上がって走る技能を手に入れた。複雑な道を物ともせず、数分で突破した。
一気に視界は広がった。森を抜けた先は湖を思わせる。水色が広がってその上に石畳の道が歪な蜘蛛の巣のように伸びている。
遠目に幾つかのコインを目にした。幸人は前進を続けながら可能な限り、コインを拾い集めた。道を塞ぐように聳える木はマサカリで切り倒す。
順調に進んでいる中、水色の底に揺らめくアイコンを幾つも見つけた。入手を試み、何度も道を外れようとした。不可解な力で押し戻されて靴を濡らすことさえできなかった。水に潜る専用のアイコンが必要なのかもしれない。
「あれは」
斜め右に四角い床が見える。そこには手に嵌めるフックのようなアイコンが置かれていた。続く道は飛び地でジャンプができれば到達できる。一箇所、行く手を阻むような木が生えていた。
幸人は迷うことなくジャンプで飛び地を進む。障害となる木はマサカリで難なく切り倒した。その直後、甲高い破砕音が辺りに鳴り響き、マサカリは役目を終えた。幅広の刃は複雑な形で
その状況に幸人は、やっぱりね、と苦笑いで言った。
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