強すぎて退屈だったから転生先では運にステ全振りします 続 転生して得た能力で無双するのもどうかと思うので地力も付けていきます 終 転生して得た力に振り回されるのもアレなのでしっかり身に付けていきます

ヘルニア

第1話

俺、望月(もちづき)ジュンペーは悩んでいた、自分が強すぎることに。別に元から強かった訳ではない。順調にレベルを上げ、その中で攻撃力にばっかりステータスを割り振っていたのだ。それが原因でモンスターはほぼワンパン。正直なところ、戦いにおいては何も喜びを見出せなくなってしまった。そんな俺は今日も魔物狩りの仕事をこなしていた。

「ギャオオオォォォ!」

今日の相手は大型のドラゴン、普通なら4、5人のパーティでやっと損傷を与えられるくらいの強さだ。だが、、、

「ふん!!」

愛用の剣でドラゴンの腹を突き刺した。すると、、、

「グギャアアアァァァ、、、」

一撃で倒してしまった。ああ、退屈だ。もう少し反撃とかしてくれてもよかったのに、、、まあ、実際にカウンターが飛んできたら、俺の低すぎる防御力のためこちらがワンパンされかねない。なので先手必勝というわけだ。


仕事斡旋所にて、、、

「おう、ジュンペー。今日もご苦労なこった」

「ミハイル、お疲れ」

「その様子だと、今日もワンパンだったのか?」

「ああ、やられる前にやるスタイルでな。1発で終わっちまったよ」

「そうかー、相変わらず戦いを楽しむことが出来ないんだな。いいんだか、悪いんだか、、、」

まあ正直魔物討伐の依頼なんかはこの攻撃力のお陰で簡単に終わる。悪くはないんだがなあ、、、

「なあ、ジュンペー。お前、もうレベルは上がらないのか?」

「そうだな、ほぼカンスト状態だ。ミハイル、お前は?」

「俺はまだまだ上がるぜ。そう言えば試しにこの前、運を上げてみたんだ。そしたら告白されて彼女が出来たんだよ!」

「ぶふっ」

驚いてお茶を吹いてしまった。

「お前、彼女出来てたんか!?ちっこいのに!?」

「ああ、だから意外と運も重要なんだな、ってさ。お前も生まれ変わったらどれにステータス振るか、吟味するんだぞ。っていうか、ちっこいは余計だろ!?」

「生まれ変わるって、ミハイル、お前なあ、、、」

俺は元々日本という国にいた一般高校生だった。とは言っても、正直いい思い出もなく、この異世界に来ることができて僥倖だった。日本のスクランブル交差点で不意にナイフで刺されたのだ。俺はその後すぐにここに転生したが、もしかしたら俺の他にも刺された被害者がいたかもしれない。その人たちが本当に死んでしまったとしたら、俺は彼らの意思を継がなければならない。そう、新たな転生なんて簡単なものではないのだ、、、

「、、、ジュンペー?」

「、、、」

「おい、ジュンペー。表情が暗いぞ?急にどうした?」

「え?ああ、いや。なんでもない。まあ、もしまた転生することになったら、俺もよく考えないとな。あはは、、、」

「、、、」

日本のことは親友であるミハイルにも伝えていない、話す必要がないからだ。どちらにせよ、この世界ではそんな世界から転生してきた生き物も珍しくはない。オークしかいない世界から来た血気盛んなオーク、神話のような世界から来た聡明な軍神、獣人ばかりの世界から来た半獣のユニコーンもどき、などなど。色々な奴らがいる。だから、俺は戦い以外では充実した異世界ライフを送っている。そう、戦い以外では、、、

「お前、やっぱり本当は戦うのが好きなんじゃないのか?」

「、、、ああ、そうだよ、、、」

俺は日本にいた頃は巷で噂のゲーマーだった。そういえば、当時は回避に定評があったっけ。だから、ダメージを受けない前提で自分の育成を行ってきた。その結果が、今の攻撃力全振りなわけだ。

「やっぱり、お前色々あったんだな、ジュンペー」

「ああ、ミハイル、分かるか?」

「そりゃ、もちろん!彼女持ちの俺ならなんとなく分かるよ!ああ、かわいそうだなぁ!」

こ、こいつ、俺が彼女いない歴イコール年齢の根暗だからって、随分上から目線になったなぁ、、、

「そうだ!ジュンペー、お前、ギルドに入るのはどうだ?出会いもあるし、強い奴は重宝されること間違いなしだぜ!」

「ギルドかぁ、俺、そういうの興味ないしなぁ、、、」

「そんなこと言わずに、一度騙されたと思って、さ?」

「、、、お前がそこまで言うのなら、、、」

俺はミハイルの甘言に乗り、仕事斡旋所でギルドの紹介を受けた。いくつか候補はあったが、大所帯は避けたかったので、少人数のギルドにお試しで入ることになった。


「よう、お前がジュンペーか?噂は聞いてるぜ、頼りにしてるぞ!」とタンクの大柄な青年は馴れ馴れしく肩を組んできた。

「へえ、あなたが、あのドラゴンをもワンパンで倒すと噂の、、、」とメガネをかけた、魔法使いの小柄な少年は俺をジロジロと観察してくる。

「よろしくお願いします、ジュンペーさん」と容姿端麗なヒーラーの女性も挨拶をしてきた。

「よ、よろしく〜」


俺たちはダンジョンの道中の雑魚エネミーを難なく蹴散らしながら、目的の階層までほぼ無傷でたどり着いた。

「さあ、ボスのお出ましだ!」

ボスはゴールドドラゴン、名前の通り、金ピカな龍だ。

「俺が奴の気を引く!その隙に魔法使いとジュンペーは攻撃するんだ!」

タンクの青年は果敢にドラゴンの前に出て行く。

「よし、任せろ!」

俺はドラゴンの背後を突いて、愛用の剣で攻撃する。すると、、、

「ギャオオォォ、、、」

「え、、、」

「嘘、、、」

一撃で倒してしまった、、、

その後の帰り道、俺たちはよどんだ空気に包まれていた。普段は全員で協力して敵を倒すのだろう、ところが俺というバランスブレイカーが入ってしまって、均衡は崩された。そこには達成感なんてなく、ただただ虚無感が残るのみだった。


「おお、お帰り、ジュンペー。ギルドはどうだった?」

「ああ、ミハイル。やっぱりこれからも1人でやっていくよ」


翌日、俺はいつも通りに魔物討伐の依頼にやって来ていた。

「はぁっ!」

敵の攻撃を避け、ボスの前にたどり着く。

「ふんっ!」

やはり一撃、ううむ、つまらない。だが、倒れたボスの背後からローブを被った謎の人物の不意打ちを受けた。

「ぐわっ、、、」

その一撃は紙防御の俺を倒すのには十分だった。俺はそこで死んだのだ。


「う、、、ここは、、、?」

目が覚めるとそこは見覚えのある樹海の中で、俺は必要最低限の装備を身にまとっていた。まさか、俺、また転生したのか?試しにそこら辺にいる初心者用の雑魚エネミーに挑んでみた。

「はっ、ふっ、、、!」

5、6回攻撃して、やっと倒した。なんだか懐かしいな、初心を思い出す。どうやら俺は同じ世界に初期レベルで転生したらしい。水辺で反射を利用し自分を見ると、いつもの顔がそこにはあった。見た目はそのままらしい。よし、これからは攻撃力ではなく、運にステータスを思いっきり振ってみよう。そう意気込んだ俺は、周りにいる雑魚エネミーを片っ端から倒していった。


しばらく時は経ち、ピロリンという音と共にレベルが上がる。もちろん運にステータスを振った。

、、、まあ、すぐに何かが変わるというわけではないのだろう、地道にやっていこう。

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