明日のキミに「しあわせ」を

S.Akatsuki

オオカミの少女と物語

序  君と出会えて


「もし、普通の人として生まれたら私達はこうして出会えたかな?」


 輝く星々。

 静かな漣の音。

 温かい砂浜。

 星の光が海面にも映るので、まるで星の海の中にいるような感覚。

 そんな中で、僕の隣に座る少女が不意に尋ねてきた。


「んー、どうだろうね」


 僕はそう答えるしかなかった。

 果たして、普通の人間だったならば、こうして彼女と出会うことができたのだろうか。

 その時、彼女は本当に僕に対して……いや、これ以上考えるのはやめておこう。

 どうせ考えたって仕方のないことだから。


「ねぇ、私は貴方が好き。大好き」


 僕の肩に彼女の頭が寄りかかる。


「出会ってからたった3ヶ月しかなかったけど、私は貴方を好きになった……好きになれた。あ、もちろんシイちゃんのことも好きだよ」

「……うん、知ってる」


 どこか照れているような彼女の声は、いつもと違って穏やかで、いつも通り何かを期待するようで。


「なんだか照れるね、こんなこと言うの」


 右手で顔をパタパタ仰ぐ彼女。

 暗くて顔はよく見えないが、恐らく赤くなっているだろう。僕も同じく……


「貴方は私と出会って何か変わった?」

「……うん。変われたよ。ありがとう」

「えへへ、ならよかった」


 彼女の声が少し弱くなった気がする。

 肩に寄りかかる重みは、少しずつ、でも確かに重くなって。


「最後に聞かせて欲しい。ここにきて良かったと思う?」


「何、言ってるの……そんなの当たり前じゃん……私はここに来て、幸せ……だよ」


 彼女がそう言って笑ってくれた。

 それが何よりも嬉しくて、それと同時に彼女から伝わってくる素直な思いが苦しくて。


「私、少し……休むね……」


 彼女の右手が、そっと僕の左手に重ねられる。

 僕もその手をしっかりと握ってあげる。


 青春とは非情なものだ。

 それでも幸せを感じられるのは、それは彼女が頑張ったからだろう。


「うん、お休み」

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