第107話 行きたいところがありすぎて一日じゃ足りない。

 僕たちは、ミニオン・パークに行って、たくさんのミニオンがいて明日香たちがはしゃいで写真を撮っていたり、ちょうどお腹が空いてきたので近くの店でミニオン・クッキーサンドを買って食べた。ミニオン・クッキーサンドは、ミニオン型のクッキーでフルーツ・アイスを挟んでいて、フレーバーは、イチゴ・オレンジ・バナナなどあり、季節で変わるようだ。アイスは、今まで運動して、ほてった身体には心地よく染み渡るようだ。食べた後は、ミニオン・ハチャメチャ・ライドを楽しんだ。所要時間は二十五分ぐらいと長めだが、あっという間に時間が過ぎた。

 ユニバーサル・ワンダーランドも行った。ここは、ハローキティやスヌーピー、セサミストリートのキャラクターたちがおり、特に明日香たち女性人のリクエストが多かった。よく見ると、園内あっちこちでいろんなキャラクターを見かける。

 あー、これは楽しいわと心の底から思う。とてもじゃないけど、気になるところがありすぎて一日で回れそうにない。

 僕も、ポケモンのキャラクターを見たときは興奮した。


「ねえ、翔琉。私、もうちょっとこのエリアにいたいんだけど」

「え、だけどほかのところに行く時間が」

「別にいいんじゃない。私も明日香と一緒にいるから、今のうちに行きたいところ回ってきなさい。翔琉たちが行きたいところはスパイダーマンのアトラクションでしょ。一時間後ぐらいにその前で待ってるから」

「う~ん・・・・・・でもな~」


 加奈の申し出に悩んでいると、一樹が、


「別にいいんじゃないか。どうせ、女子たちはこっちの方が楽しいだろうし、興味ないところに一緒に来たってつまらないだろ。それならみたいところ見て楽しんだ方がいいだろ」

「うん、それもそうだね。分かった。じゃあ僕たちはちょっと行ってくるね」


 話がまとまったところで、加奈がアリスに聞いた。


「アリスはどうする」

「私もカケルと行く。スパイダーマンに興味あるし」


 そう言いながら僕の腕に抱き着いてくる。


「ちょっ、ちょっとアリス!?」

「翔琉君から離れなさい」


 明日香が目くじらを立てている。


「全くしょうがないわね」


 加奈が呆れている。


「橘、今回は俺もいるから大丈夫だよ」

「桜井君がそういうならいいけど・・・・・・ちゃんと目を光らせてアリスを監視しててね」

「お、おう」


 明日香のあまりの剣幕に一樹がたじろいでいる。


「ま、心配するようなことは起きないでしょうけどね」


 加奈のつぶやきは、周りの騒音に紛れて明日香の耳には届かなかった。

 僕たち三人は、明日香たちと別れて、スパイダーマンのアトラクションがある場所に向かった。

 少し行列ができていたが、これなら少し待てば乗れそうだ。

 列に並んでると、張り紙が張ってあることに気付いて見てみると驚いた。


「えっ、このアトラクションもうすぐ営業終わるんだって」

「マジ! ラッキーだったな。もうちょっと来るのが遅かったら体験できなかったな」

「明日香たちにいま彼でも連絡したほうがいいかな?」

「いや、いいんじゃないか。久々の二人っきりであっちはあっちで楽しんでるだろうし、それに翔琉と付き合いだしてからなかなか二人で遊べないって嘆いてたぞ」

「そんなかな」

「自覚がないってすごいな」

「だけどその分、加奈と二人っきりの時間が多かったでしょ」

「そりゃそうだけど、昔と変わらないっていうか新鮮味に欠けるというか」


 確かに幼馴染と付き合ってたらお互いのことを知ってるから新しい発見がなかなか見つからないのかもしれない。


「それはそうと、このアトラクション結構激しいようだから、加奈はともかく橘は酔うだろ。さっきのハリーポッターのアトラクションでまいてたようだからな」


 僕もあれは結構きつかったんだけど・・・・・・やっぱやめて明日香たちの方に行こうかな。


「あの、やっぱり――」

「せっかくだから楽しもうな」

「私もこれが一番乗ってみたかったから、カケルもこういうの好きでしょ」


 二人にかぶせるように言われてしまったため断りづらくなってしまった。ここは覚悟を決めて乗るしかない。どうか、思ってたよりハードじゃありませんように。

 心の中で願った。


「・・・・・・そうだね。楽しもう」

「そうこなくちゃ!」


 アリスが腕を絡めてくる。


「ちょ、ちょっとアリス」

「いいじゃない」

「一樹、助けて。明日香にも言われたでしょ」

「少しぐらいいいんじゃないか」

「さすがカズキ。話が分かる!」


 一樹の一声でアリスが嬉しそうに絡めてる腕に力が入る。僕は抵抗しても無駄だとされるがままになる。明日香にはあとで埋め合わせでもしよう。


「なああの子かわいくないか」

「モデルか何かかな」


 そんなささやき声がチラホラと聞こえてきた。列に並んでる人たちがチラッと僕たちの方を見てくる。


「あの隣にいるのが彼氏かな」


 いえ、違います。


「隣のイケメンの人じゃないんだ」

「なんかショック―」


 ほっとけ!


 聞こえてくる囁き声に心の中で突っ込んでいると、僕たちに呼びかける声が聞こえた。


「あなたたち、こんなところにいたんですか」


 その声に振り向くとタマちゃんがいた。


「あなたたち、三人だけですか」

「明日香たちなら別行動してますけど」

「逸れたわけじゃないならいいんです。私は他の場所も見回りするのでこれで」


 ほかの場所に向かおうとするタマちゃんの背中に呼びかける。


「あの、なんかやりづらいというか違和感があるというか昔みたいなやんわりとした感じに戻ってくれませんか」


 そう話しかけたのは一樹だ。


「ですが」

「教頭のことなら何か言ってきたら俺たちが言いますから。な!」


 いつの間にか僕たちも巻き込まれてる。教頭に意見する勇気なんてないんですけど。


「昔のタマちゃんは、話しかけやすくてフレンドリーだし、年上の先生に言う事じゃないかもしれないけど、なんていうか友達みたいんだったんだよな」

「私もお姉ちゃんができたみたいで学校に行くの楽しいもん」

「あなたたち・・・・・・」

「翔琉もそう思うよな」

「ま、確かに。生徒を誘惑するのはどうかと思うけど昔のフレンドリーな先生の方が親しみやすくて好きかな」


「あなたたち、グスッ・・・・・・私は何て言い生徒たちに恵まれたんだ」


 タマちゃんが感動して涙を流す。周りの人たちが何事だと様子をうかがっている。すごい恥ずかしんだけど。


「あー、涙を拭いてください」


 ハンカチを渡すと涙をぬぐった。


「そうだよな。私らしくなかった。ありがとうお前たち。せっかくだから写真を撮ってやる」


 僕たちを撮ると、


「ほかのところも見て回るからお前たち、あんまり羽目を外しすぎるなよ」


 タマちゃんがほかの場所に向かった。やっぱりこの方がしっくりくる。いつものタマちゃんに戻ってよかった。


 そして順番がきて、始まってみれば画面が4K3Dではあるものの、12名掛けのライドに座って、コースを進んでいくものの多少の揺れはあったけど、絶叫アトラクションのような落下・猛スピードでの滑走はなくてよかった。


 終わったら外で待ってた明日香たちと合流して、近くにあるスパイダーマンのフォトスポットに向かった。この場所は、裏路地に糸にぶら下がるスパイダーマンがいて、撮影クルーによる写真撮影を行っていて撮ってもらった。みんな普通のポーズをする中で真ん中にいたアリスだけがスパイダーマンが糸を飛ばす時のポーズをしたのが印象的だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る