第62話 人の多さと熱気に驚かせられた。

「結構大きいな」

「そうだね」


 僕達はビッグサイトを見上げて感動している。


「翔琉は来たことあるのか?」

「僕も初めて。お台場の方に入ったことあるけどビッグサイトには来る機会がなかったから今日見れてちょっと感動している」

「俺もテレビでしか見てないから生で見ると迫力みたいのがなんか違うな」

「分かる。スカイツリーも遠くで見るのと近くで見るのぜんぜん違ってたし」

「そうなの? 家の方からも遠くにあるのを見たことあるけど目の前では見てないから分からないな。どう違ってた?」


 僕はそうだな~と考え込む。


「なんていうか遠くから見ると細く見えるけど目の前で見るとなんていうか太い」

「太い? それは遠近感による錯覚じゃないのか」

「そうかもしれないけど想定してたより太いんだって。今度見て見た方がいいよ。想定してたより太くて大きく見えるから」

「そんなにか。そうだな。今度そっち方向に行く機会があったら見て見るか。それはそうとせっかくだからビッグサイトでも撮るか」


 一樹はスマホを構える。僕もデジカメでビッグサイトを撮る。せっかくデジカメを持ってきたんだから使わないと損だろう。


「じゃぁ、さっそく同人誌から見ようよ」

「この時間でも残ってるのか? 朝早く来る奴は同人誌目当て何だろう。もう残ってないんじゃないか?」

「人気あるのはそうかもしれないけどまだあるかもしれないし雰囲気味わってみたいんだよね」

「それならいいんだ。俺もせっかくだからどういうのがあるかじっくり見るか」


 中に入るとブースがあっちこちありコスプレして客寄せしてる人も行ってなかなかのにぎわいだ。


「そういえば一樹は小銭多く持ってきた?」

「小銭? それほど多くないと思うけど何で?」

「ここで売ってる同人誌の値段って大体五百円か千円がほとんどだからおつりが出ない様にぴったり出せるように持ってた方がいいよ」

「なるほどな。買いたいのがあったらそこの自販機で何か飲み物を買って崩すかな」


 しばらく二人で同人誌を眺めながら移動する。


「まだ同人誌が完売したところはあんまりないみたいだね。今日がたまたまなだけか分からないけど」

「同人誌ってエロいイメージがあったけど結構普通の物もあるんだな」

「自分で作った創作物を売って実力を試してる人もいるだろうし、何でもかんでもエロには走んないと思うよ」


 同人誌には、小説のような読み物の文芸系、一次創作系、既存のマンガ・アニメ・ゲームなどを題材とした二次創作系、その他にもコスプレ写真集や特定の趣味を深く追究した専門雑誌のような作品など様々なジャンルがあり、出版社の介入を受けないために自由な表現を発表できる場となっている。


「でもさ、マンガを題材にしてるのも見かけるけど、著作権大丈夫か?」


 気になってたことを一樹が聞いてきた。僕も気になって前に調べたような気がする。


「僕も気になって前に何かで聞いたような気がするけど、なんかグレーっぽいんだよね。本当はダメだけど暗黙の了解っていうか日本の文化だから大目に見られてるってこともあるらしい」


 さらにいろいろまわって思ったことがある。同人誌買い手出版してるだけあってみんな絵がうまい。こんなこと言うとあれだけど中には漫画を題材にしてるものはその作品の作者よりも絵がうまいと思うのがチラホラある。まあ僕の主観だけどね。


「なあさっきから壁の方にあるところの方が並んでる人が多くないか?」


 一樹に言われた方を眺める。所せましに行列ができている。

 僕は事前に調べた情報を伝える。


「あそこは壁サークルて呼ばれてるところで、特に人気があるところが出店してるらしい。混雑するサークルは列が待機しやすい壁に配置されていてそのため、「壁サークル」と呼ばれてるんだって。どのサークルも長蛇の列ができるため、購入に時間がかかるから相当待つのを覚悟するしかないだろうね。特にシャッター前のサークルは壁サークルの中でも一際長い列ができやすく、列が会場の外に行くこともあるらしい」

「へぇ~、すげえな」


 一樹が感心したように頷いている。



「ちなみに、僕達がいるこの場所は「島サークル」っていうらしい。こっちはそれほど混雑しないからゆっくり見たいならお勧めかな」


 それからほどなくして、外に出た。


「あ~あ、風が気持ちいい」


 会場の外に出たら外から新鮮の風が吹いてくる。中が人ごみと熱気で蒸し暑かったから季節は夏のはずなのに外は涼しく感じる。


「これは生半可な覚悟じゃ無理だな。ちょっと舐めてたわ」


 そう言いながら一樹は服をパタパタさせている。


「次にアニメ関係のブースを見てこようと思うんだけど一樹はどうする?」

「俺はパス。そこの自販機で何か飲み物を買って涼んでるから終わったら来てくれ」

「了解」


 僕はアニメ関係のブースのフロアに行く。中に入ると、さっそく団扇を配っている人がいた。団扇を受け取るとアニメ情報と作品の絵が描いてある。タダでもらえてちょっと嬉しい。そしてちょっと歩くことにチラシや同じように団扇を貰ったりしてたら直ぐにいっぱいになってきてしまった。やっぱりリュックサックをしょってきたのは正しかったようだ。手ぶら出来たらすぐにいっぱいになって苦労したのが目に見えている。

 それぞれのブースにはアニメの予告映像が流れて、この作品アニメ化するんだといろいろ情報が入って楽しい。物販を見て見ると僕の好きな作品の原画集などもあるがちょっと値が張っていたので今回は見るだけにとどめて、機会があったときに買おうと決めた。

 一通り見て一樹のところに戻る。一樹は自販機の横のベンチに座りながら僕に気付いて手を振っている。

 僕ものどが渇いたので飲み物を買って一樹の隣に座る。


「はぁ~生き返る~」


 疲れた体には冷たい飲み物が染み渡る。


「なあ翔琉。さっきから向こうに人が集まってきてるみたいだけどなんかあるのか?」

「さぁ~何だろう。行ってみようか」

「だな」


 立ち上がると飲み終わった感をごみ箱に捨てて、僕達は人が集まっている場所に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る