第2話 クラス一の美少女とやたらと目が合うんだが・・・・・・
僕たちは先頭車両に乗り込んで座席は程よく埋まってるので中ほどまで進み、つり革を掴んで立つことにした。大宮行きは混んでることが多いが、最近できた快速のおかげでそんなに密集するほど込んでないのが幸いだ。しかも、途中岩槻駅に停まるだけなので大宮に用があるならお勧めだ。(*個人的見解)ちなみに先頭車両を選んで乗っているのは大宮駅の改札が一番近いからだ。
電車が走り出したタイミングでさっきの話の続きを聞くことにした。
「さっき聞きそびれたけど一樹は結局誰かと付き合わないの。僕の知ってる限り告白は日常茶飯事だけど誰かと付き合ったて話聞かないんだよね」
「・・・・・・聞きたいか?」
一樹は神妙な声で聴いてくる。そんなに言いずらいことなのか? もしかして、過去にとんでもない出来事に巻き込まれて何か女子に対してトラウマになっていることがあるとか・・・・・・あり得るかもしれない。毎日のように告白されてる一樹だ。町ですれ違いざまに見ず知らずの人に告白されたという噂も聞いたことある。なにそれ、ちょっと怖い。だけど、僕みたいな冴えないわき役からしたらモテモテの一樹がうらやましく思える。僕も一度でいいから告白されてみたい。
「お、おい、そう睨むなって。言うから・・・・・・」
「えっ!?」
僕は知らないうちに一樹を睨みつけてたようだ。
一樹は深呼吸して改めるように言う。僕はどんな深刻な話なのかと思って唾をゴクンッと飲んだ。
「・・・・・・実はな、俺、昔からモテるんだ」
「知ってるわ!! 何だ、モテない僕への嫌味か! このやろ~!!!」
僕は怒りに任せ一樹につかみかかる。一樹の言葉で昔から僕が好きになった女子はみんな一樹が好きで失恋したことを思い出しちょっと涙が出てくる。・・・・・・グスンッ。
「ちょ、ちょっと落ち着けって! 周りに迷惑だろ!」
「ゴホンっ!!」
僕たちの前に座っているサラリーマンが新聞を広げながらこっちを見ている。
「す、すいませんっ!」
僕は慌てて謝った。
「ほら見ろ」
「もとはと言えば一樹が――――」
「んっ、人のせいにするのは良くないぞ」
なんかムカムカするのを深呼吸して精神を整える。
「はぁ~、それでモテる一樹様はどうして彼女を作らないんですか?」
思わずムッとした態度で言った。でもこれぐらい許してほしい。昔から一樹と仲良かった関係で度々女子に声をかけられることが多かった。僕は嬉しさのあまり一喜一憂していたが決まって一樹との関係を取り持ってほしいとか彼女いないのかなという話ばかりで僕は恋愛対象に見られなかった。それが長年続いたらもういいかなと思う反面一樹がモテてるのを目の当たりにするとうらやましかった。自分でも分かっている。嫉妬だ。僕もなんだかんだ理由をつけているが彼女が欲しいことに変わりはないのだ。それゆえ、態度に出てしまった。だけど、この心情は一樹に筒抜けなんだろうな・・・・・・
「おいおい
「・・・・・・拗ねてない」
「まあいいか。俺が彼女を作らないのは醜い争いを見たからだ。ある日のことだ。俺は告白はすべて断ってきた。特定の相手を作る気がなかったからな。そして、バレンタインデーのときに事件は起こった。当然チョコを貰ったわけなんだが、そのチョコをくれた一部の女子たちが暴徒化してな。自分が彼女だと主張してな。殴るけるの取っ組み合いにまで発展した。彼女なんか作った覚えないのにあの時の光景はちょっと怖かった。だからか、もう女に関わるのはなるべく避けようと思うことにしたんだ。それに
「その割にはさっき女子たちが次々倒れてなかったか?」
「あれはファンクラブの連中が大げさに騒いでいただけだ。それに考えてみろ。人を見ただけで気絶なんかしてたら大問題だろ」
「それは確かに――――ってお前、ファンクラブなんてあったの」
なにそれ、うらやましい。僕も女子にちやほやされたい。だって男の子だもん・・・・・・
「翔琉、今うらやましいと思ったろう?」
ギクッ 何で分かった。顔の出てたのか。
「そんなにいいもんじゃないぞ。一日中一定距離で観察されてるんだ。今もほら」
一樹が指さす場所、車両の一両目と二両目を繋ぐ連結部分の扉付近に双眼鏡でこちらを見ている女子の集団が・・・・・・何あれ、怖い!!
「な、あんまりいいのじゃないだろう。出来れば潰れてもらいんたんだけどいいアイディアないか?」
「それはやっぱり彼女を作ればいいんじゃないか?」
「それしかないか。でもな、俺はそのつもりないしな~」
「じゃあどうするんだ。他になんかあるか?」
一樹はしばらく考え込むと何かひらめいたように手をたたいた。
「ならこうしよう。俺は彼女を作るより翔琉と一緒の方が楽しい。だけど、もし、翔琉が彼女を作ったら一緒に遊ぶ時間が減るだろうな~。そうなったら俺も彼女作るかな~。そういうわけで彼女作れ」
「な、何で!?」
何で一樹に彼女を作らすはずが、僕が作ることになってるんだろうか。僕に出来るわけがないじゃないか。それにどうせ、僕が好きになった女子は一樹のことが好きに決まってる。何か昔の初恋の彼女のことを思い出して胸がズキッとする。
「僕に彼女ができるわけないじゃないか」
「そんなことは無いと思うけどな。手始めに彼女なんてどうだ」
一樹が見てる方を見ると一番前の右側ドア付近に座っている女子が目に入る。手元にある本を読んでいるのか顔は良く見えないが、長い茶色がかった髪にほんを持っている手首には白いシュシュが。それに着ている制服が同じなところを見ると同じ学校のようだ。その時女子生徒が顔を上げてこっちを見る。長い睫毛にぱっちりとした目、薄く化粧もしてあって今時の女子って言った感じだ。思わず見惚れてたら目が合ってしまった――ってあれ・・・・・・同じクラスの橘さんじゃないか!?
本名、
そんな彼女と僕が付き合えるわけないじゃないか。もし、仮にそうなった場合を想像したら周りの男子から袋たたきに会う未来しか想像できない。
もう一度彼女を見ると橘さんは顔がみるみる赤くなり隠すように本を開いて顔に当てている。何その初心な行動。かわいくない。
「お、こいつは脈ありじゃないか」
一樹の言葉にそうなの? っとうれしさが込み上げそうになったが冷静になれ、自分。本当にそうなのか。もし、勘違いだったら目も当てられない。僕の隣には一樹がいる。ひょっとして一樹のことを見てたのじゃないのか。たまたまその射線上に僕がいただけで。その可能性が高い。僕と一樹を比べるまでもない。僕は一樹を引き立てるためにいるいわばモブだ。そんな僕がモテるわけがない。勘違いしないでよかった。
僕が自己完結したタイミングで電車が大宮駅のホームに入る。橘さんはというと、読んでた本をバッグに仕舞うなりドアが開くと一目散に走りだし人ごみに紛れその姿を捉えることは無かった。
(そんなに急いでどうしたんだろう? トイレかな)
一樹からポンと肩をたたかれる。
「ま、がんばれ。俺が彼女をつくために」
えっ!? 僕が橘さんを落とすことは決定事項なの。これ、なんていうムリゲ―!!!!!
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