もったいない

九十九語 矢一

第1話

僕は久しぶりの調理に胸が踊っていた。


今日は愛する人のための料理を作る。

とても新鮮な食材が手に入ったからには料理にしなければもったいない。

今日採れたての食材だ。


どんな料理にするか悩みどころだ。この食材はどんな料理にしてもうまい。

何度か調理したことがあるが焼いても煮ても、新鮮なものなら生でもうまい。


食材に刃を入れる。少し大きく骨も太いから気をつけなきゃいけない。

骨なんかはラーメンや味噌汁の出汁に使うとこれもまた美味しい。


今日は切り分けたら焼くことにした。

出来上がった料理を想像するだけでヨダレが止まらない。

愛を沢山込めて愛する人にも喜んでもらわなくちゃ。


油を引いたフライパンに食材を並べていく。

フライパンの上でパチパチと踊る食材はまるで僕の彼女への愛を応援しているようだ。


焼きあがったらご飯なんかと合わせたくなるが今回はダメだ。愛の籠ったものに他の食材は邪魔になる。愛の籠った食材だけで満たされて欲しい。


僕は完成した料理を口に運ぶ。

うまい。

愛が口の中に溢れていく。

快感、気持ちよくて仕方ない。


多すぎて僕だけでは食べきれないかもしれない。

でも僕の愛はそんな量になんて負けはしない。だって彼女を愛しているから。


次は足を揚げようかな。

もう一口料理を口に運ぶ。

この感覚が忘れられないから料理は辞められない。

これが一番愛を感じる。愛されている。愛情が欲しい。その欲望は抑えられない。もう一口、もう一口、箸が止まらない。


右腕がなくなって寝そべる彼女を見て思う。

「もったいない。」


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