やっぱり型破りな師匠
「お! みんな集まってますねー♪」
元ドラゴン殲滅部隊の人々も交えて談笑を楽しんでいると、底抜けに明るい声がホールに響いた。
「ディア兄ちゃん!!」
彼の姿を見たキリハがここ一番の明るさを見せて、ディアラントの元へとすっ飛んでいく。
やはり、師匠を慕う弟子心は今も健在のようだ。
「ディア兄ちゃんったら、制服のまま来たの?」
「いんやぁー、つい三十分前まで仕事から手が離せなくて。着替える暇もなかったのよー。」
「そっかぁ…。ターニャの体調は落ち着いた?」
「うん。歩いたり家事をしたりするには十分。でもすぐに政務に戻ろうとするから、止めるのが大変のなんの。」
そう語るディアラントは苦笑を浮かべる。
「今も、せめてキャメルが一歳になるまでは我慢してって、執政本部のみんなで説得中だよ。ターニャを不安がらせるわけにもいかないから、オレも普段は使わない頭を使って書類仕事の大嵐でなー。アルがこっそりと手伝ってくれて、マジで助かってる。」
「そっかぁ…。じゃあ、今回はターニャとキャメルは欠席かぁ。二人にも会いたかったなぁ。」
「いや、ターニャは来てるよ。ノア様が別室にかっさらっていっただけ。」
「ああ…」
ノアがターニャを強引に引きずっていく姿が目に浮かぶ。
おそらくは、出産から三ヶ月くらいしか経っていないターニャを少しでも休ませようという、ノアなりの配慮だとは思うけど。
「じゃあ、キャメルは?」
「今頃、じじバカトリオが
ディアラントがそう言うと、ミゲルを筆頭に宮殿関係者たちが大きく顔を歪めた。
「副大統領たちに息子を任せるとか、並大抵の神経じゃねぇよな。」
「いや! オレが押し付けたんじゃなくて、ランドルフさんたちが連れていっちゃうのよ!? 父親のオレが一番息子と遊べないって、どう思います!?」
「まあ実のところ、ランドルフさんはターニャ様を、戦友から託された愛娘だと思ってかなり可愛がってたらしいし。」
「ケンゼルさんやオークスさんが溺愛してるアルシード先輩は、子供どころか結婚すらしなさそうだし。」
「可愛がれる子供が、キャメルしかいないんだよなー。」
仕方ないから諦めろ。
満場一致の頷きがそう語っていた。
神官制度の撤廃が発表されてから一年後。
激しい選挙戦争を制し、初代大統領の座を掴み取ったのはターニャだった。
もちろん、これまでに打ち立ててきた功績と、いつでも国民に
しかしある意味
誰が裏で手を引いているのかなんて明らか。
中には濡れ衣だと抵抗する
この時のために、理不尽に左遷されたりした人々を証言者として裏で
ランドルフおよび、その手先だったジョーの恐ろしさには頭が下がる。
そんなこんなで新政権が発足した結果、ランドルフは副大統領に、ケンゼルとオークスは情報部と先進技術開発部の長官という立場に収まったわけだ。
ディアラントも大統領の護衛を統括しつつ、執政補佐官も務めるという二足のわらじ状態だ。
そうして選挙の波が過ぎ去った後、ディアラントとターニャは五年以上をかけて育んできた愛を、ようやく実らせることになる。
ただ……普通のやり方ではなかったが。
大統領が誕生して初めての所信表明演説。
そのラストで巨大な花束を持って登場したディアラントは、その場でターニャにプロポーズしたのである。
まさかの全国中継による公開プロポーズ。
それを見ていた人々の頭からは、演説の内容が見事にすっ飛んだという。
どうせ驚かれるのは一緒なんだし、とことん驚かせちゃえばよくない?
そう言うはディアラントのみ。
他は、パンクしそうな問い合わせをさばくのにてんやわんやとなった。
ドラゴン討伐の実働部隊を率いて任務を完遂し、最高勲章を受勲した国民的ヒーロー。
ドラゴン大戦を終結させてドラゴンと和平条約を締結した上に、竜使いというハンデを乗り越えて栄光を掴んだ初代大統領。
互いにビッグネームとなっているこの二人のゴールインは、その年一番の話題となった。
あまりにも国民の関心が高いものだから、二人の結婚式は全国中継のもと盛大に開かれることに。
その後ひっそりと行われた近親者のみの結婚式では、多くの人に説教を受けることになったディアラントであった。
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