目覚めまで、もう少し―――

「さて…。表では、派手にやっているようだね。」



 一人洞窟に残ったユアンは、外の轟音を聴きながら呟いた。



 途中はキリハの体を奪ってしまったが、最後にはキリハとルカの絆に賭けてよかった。



 ルカがすでにシアノからレクトの企みを聞かされていたことは知っていたが、それで芽生えたレクトへの敵意が、どこまでレクトの能力に対抗できるかは分からなかった。



 だから……正直なところ、ここでルカを殺すことになるなら仕方ないと、そう思っていた自分がいた。



 自分は、よくも悪くも長く生きすぎた。

 故に、今だけを生きている人々よりも、命の切り分けを潔くできてしまう。



 エリクやシアノのこともそうだけど、ルカのことだって、レクトを止めるために必要な犠牲ならば、容赦なく切って捨てただろう。



 だけど、それは今を生きるキリハたちが望むことではない。

 だから最後は、キリハとルカを信じて送り出した。



 この過去を清算するのは自分の役目。

 しかし、これからの未来を選ぶのは今を生きる子孫たちだから。



 その結果は、今見たとおりだ。



「……リュード。あの時と今とでは、状況が違うようだ。シアノという……誰かの尊い犠牲がなくても、望む未来を掴めるだけの力と、それだけの想いが揃ったようだよ。」



 震える岩肌を優しくなでて、ユアンはまっすぐに頭上を見上げる。



 視線の先に広がっているはずの、澄みきった青空を。



「君も、安心して目覚めるといい。一番の悲しみと苦しみを乗り越えたその先には―――確かに、希望の光が満ちているよ。」



 愛しい子供たちよ。

 あと、もう少し。

 もう少しだけしのいでおくれ。





「―――これが、最後の戦いだ。」




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