エピローグ

助けて…?

 ―――最近、キリハの様子がおかしい。



 ディアラントが告げた違和感には、自分も同意だった。



 ひどく周囲に怯えていると言えばいいのか。

 誰かに声をかけられると、大袈裟なほどに震えたり、狼狽うろたえた様子を見せる。



 しかもフールと何かがあったのか、よく大声で喧嘩をしているのが見聞きされているようだ。



 しかし何があったのかと訊いても、大したことじゃないからと口をつぐんでしまう。

 フールも同じ状況らしい。



 それが影響しているのか、休みの日は宮殿にいないことが多くなった。

 誰にも何も告げず、車を走らせてどこかへと行ってしまう。



 ルカとジョーはキリハの行き先を知っているようだが、二人とも何も語らない。

 今のキリハは止めるだけ暴走してしまうから、好きにさせてやるのが最善というのが、あの二人の意見だ。



(とはいえ、キー坊は溜め込み癖があるから、心配なんだよな……)



 そんなことを思いながら、ミゲルは物げな表情で溜め息。

 明日の仕事の準備を進めつつ、度の軽い缶チューハイをあおる。



 そんな時、ふと携帯電話が震えた。

 画面を見ると、珍しい相手からのメッセージが。



 それを開いたミゲルは、怪訝けげんそうに眉をひそめた。





「……〝助けて〟?」





 歯車が、いびつきしむ―――





◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 【第7部】はこれで完結となります。

 ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。



 【第8部】あらすじ



 これは、裏切りの物語。

 時も場所も、立場も異なる裏切りが、られた糸のように一つの場所へと集結する―――



 たった一人でレクトの元へと乗り込み、彼への協力を申し出たルカ。



 歴史とは関係なく、自分が仕返しをしたいのは人間。

 そう語るルカが人間を崩すために狙ったターゲットは、ドラゴン殲滅部隊の知将であるジョーだった。



 裏から表に引きずり出されることなったジョーは、ルカと激しい火花を散らす。

 しかしこれまで不動だったはずの彼は、その時たまたま調子が悪く……



 そして闇と闇がぶつかり合う裏で、別の闇がとうとうキリハへと牙を剥く!



 突然姿を消したミゲル。

 それを追うように消息を絶ったキリハ。



 レクトの目を借りてキリハの危機を察知したルカは、ディアラントやジョーと共に犯人の元へと乗り込む。



 しかし、そこで待っていた光景は、あまりにも救いがなくて―――……



 ついに皆の知るところとなった、非道な事件。

 それはキリハ、ルカ、ジョーの三人を深い闇の底へと叩き落としていく。



 皆が苦悩する中で明らかになる、とんでもない秘密。



 それは今のキリハにとって唯一に等しい希望だったが、残酷な運命はそれすらも取り上げていこうとして―――



 希望へ絶望へと大きく傾ぐ、針の上に乗った盤面。

 その陰では、最後の事件が始まろうとしていた。



 折り重なった分厚い闇を、絆の炎は切り裂くことができるのか!?

 完結の第9部に向けて、多くの人々の強さが試される!!



 どうぞ、【第8部】もよろしくお願いいたします!


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