抗う声

 だめだ。

 このままじゃ、自分が自分でなくなってしまう。



 危機感が体を突き動かして、無駄だと知りつつも携帯電話にかじりつく。

 途端に激しい頭痛が襲いくるが、なけなしの理性でそれに逆らった。



 意識を失うのが怖い。

 睡魔に流されて眠るのも怖い。



 自分が送った記憶のないメッセージ。

 身に覚えのない発信履歴。



 それを見る度に、全身が凍りついたように寒くなる。



 自分が知らないところで、自分が知らない自分が勝手に動いている。

 彼の思い通りに動いてはいけないのに、日に日に自分を見失っていく。





 このままじゃ―――あの子が危ない。





 お願いだ。

 誰か助けてくれ。



 自分ではない自分が、破滅の花を咲かせてしまう前に。

 何もかもが崩れてしまう前に。





 誰か……

 誰か………




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る