まさか……

 点在する事実を組み合わせた、ジョーたちの推測。

 その話は、途中から耳に入っていなかった。



 別のドラゴン?

 そんな馬鹿な。



 その仮説が出た時は、そう思って真面目に考えなかった。

 しかし……





〝レティシアよりもドラゴミン濃度が高い血を持っているか……〟





 あの言葉が、世界をひっくり返した。

 ドラゴミンの濃度が、ドラゴンの格を表すのだとしたら―――



 そうだ。

 馬鹿げていたのは自分だ。





 ――― 一人だけ、いるじゃないか。





 リュドルフリアの血が及ぼす影響。

 自分たちが秘匿したこの事実に自ら辿り着いた、レティシアよりも格上のドラゴンが。



 キリハに血を受け入れる理由がなくとも、彼にはキリハに血を与える理由がある。

 そして彼なら、キリハが自主的に血を欲しがるように誘導することも容易だろう。



『キリハから、やけに濃い血のにおいがしたわよ。』



 それを裏づけるような、レティシアからの報告。

 そして一ヶ月半前といえば、キリハが突然朝帰りをしてきた時期と一致する。





 まさか……





「―――っ!!」



 居ても立ってもいられず、一心不乱に研究室を飛び出していた。


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