密談

 そこには、不穏な空気が漂っていた。

 広い部屋で一つの机を取り囲み、彼らは険しい表情を浮かべている。



「くそ、今年も奴が最有力株か……」



 書類に並ぶ名前を眺め、彼らは歯噛みする。



「権力者間の賭けでも、奴の人気が圧倒的だ。どうするのだ! このままでは、我々の面目が丸潰れではないか。あと二年しかないのだぞ!?」



 一人がヒステリックに叫んで机を叩く。

 別に彼が大袈裟というわけではなく、他の人間の目にも多少なり焦りが見えていた。



「このままでは、あの小娘が調子に乗るばかりだ。あいつが出先で都合よく死んでくれないかと期待したが、侮ったな。想像以上にしぶとい奴だ。」



 これまでに雇った殺し屋の数を思い返し、彼らはそれぞれに深刻そうな表情をする。



 事実、彼らは追い詰められていた。



 三年前に始まったこの勝負。

 圧倒的に不利だったのは、向こうのはずだった。

 しかし今、苦境に立たされているのは変わらず向こうなのに、調子を狂わされているのはこちらの方。



 このままではまずい。

 さすがにここまでくると、笑って高みの見物をできるような状況ではなくなってくる。



「まあ、仕方あるまい。」



 彼らの内の一人がそう言い、にたりと不気味に唇を歪めた。





「金で釣れない以上、実力行使で奴の優勝を食い止めねばならないだろう。……殺してでもな。」




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