抜け落ちていく何か

 落ちていく……

 闇の中を、さらに深い漆黒の中へと―――



 何も見えない。

 前も後ろも、右も左も分からない。



 立っているのか、横になっているのか。

 それすらも分からなくなりそうだ。



 まるで、今の自分のようだ。



 どうすればみんなが笑っていられるのか考えては、空回ってしまって。

 近づきたいと思うほど、どんどん距離が広がってしまって。

 飽きるほど色々と考えて、正しい方向を探すのに見つからなくて。



 ――― あれ?



 正しい方向って、一体なんのことなのだろう。

 自分は何を求めて、何を探していたのだろう。



 どうしよう……――― 分からない。



 だめだ。

 思い出さなきゃ……



 いつまでもこんな所にいちゃいけない。

 帰らなくちゃいけない。



 ――― でも、どうして?



 考えれば考えるほどに、何かが自分の中から抜け落ちていく。



 帰るってどこに?

 なんのために?

 思い出さなきゃいけないって、何を?



 だめだ、考えがまとまらない。





 俺は………だれ……だっけ―――?




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