【第2部】冷たい溝

プロローグ

暗雲

 自分の意志で手にしたはずだった。



 守りたいと思うものを守れるように。

 目の前に立ち塞がる壁から、目を背けないために。



 だから、覚悟を決めた。



 その覚悟の上に掴んだ現実。

 今過ぎ去っていく現実は変えようがないし、事実として受け止めなくてはいけない。



 分かってはいるけど……



 手に入れた巨大な力。

 それは、己の身をも焼き尽くしてしまいそうな業火だ。



 なのに。

 どうして。





 どうしてこの炎をまとう自分の心は、こんなにも冷たいのだろう―――




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